ホラーに見せかけた純ミステリー!道尾秀介 著『向日葵の咲かない夏』

常々おもっていたのは、
道尾秀介はホラー作家ではなくミステリー作家だよな、ということ。

こんにちは、ゆうゆう(@yuu_uu_)です。

デビュー作『背の眼』からこっち、
ホラー色のつよい作品を次々に打ち出しては有名になってきた彼なので、
どうしてもホラー作家としてのイメージが強いのではないか、とおもいます。

今回ご紹介したいのは、代表作のひとつ『向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)』。

こちらも、ホラーに見せかけた純ミステリーです。

叙情的な描写が光る、異色の1冊

道尾作品がだいすきで、デビュー作から読み込んでいるのですが、
この『向日葵の咲かない夏』はとびっきり異色だなあと、個人的にはおもっています。

最初から最後まで、はたしてホラーなのか、
はたまたミステリーなのか、いやいやファンタジーか……? と、
読者をあっちへこっちへ混乱させるような不思議な描写が続くんです。

首吊り自殺と見せかけて、実は他殺ではないか、と疑われていた被害者Sくんが、
クモの姿となって生まれ変わり、主人公のもとへやってくるところから始まるストーリー。

特にわたしがすきなのは、
とあることがきっかけで仲たがいしかけていた主人公とSくんが、
縁側でひっそりと線香花火をして関係の修復を図るシーン。

この小さな雷は、たくさんの細い枝のように、じっと固まって、
そしてその固まった光の枝を、掌で押したら、きっと飴のようにぱりぱりと崩れて、
どんなに素敵な眺めだろうと想像した

気まずい空気が流れるなかで、
現状からすこしトリップして目の前の線香花火に思いをはせる。

この物語の主軸となるのは、ただひたすらに、
主人公を取り巻く『事件』と『狂った人物たち』であったはずなのに、
実はそうではないのかもしれない、と違和感を投げかけてくる一節。

この小説には、一読しただけで虜になってしまう描写が詰まっています。

はじめて道尾作品を読むなら、これ!

まだ道尾作品を読んだことがない方に、どれか1冊をおすすめするとしたら、
間違いなくこの『向日葵は咲かない夏』を推します。

これからの季節、うっとうしい夏の暑さがわずらわしく感じられたら、
ぜひ手に取ってみてください。

いままでに感じたことのない、異色の涼しさを体感できるはずです!