わたほんライターのYurika(@bookshelf_yt07)です。
久々の投稿になってしまいましたが、今回紹介したい本は青木裕子さんの『これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~』です。
多部未華子さん主演でドラマ化され、話題にもなりましたね。
会社の経費精算から見える人間模様を描いているお話を少し紹介します。
あらすじ
森若沙名子は、石鹸と入浴剤を製造販売するメーカー・天天コーポレーションに勤める27才、独身。
入社以来、経理部一筋である。
過剰なものも、足りないものもない、現在の完璧な生活に満足しているが、最近同期に彼氏ができたり、営業部のエースからつきまとわれたりして、完璧な生活が少しずつ乱れてきて、、、
好きな言葉はイーブン:森若沙奈子という女性
入社以来経理一筋で、後輩だけでなく、部からも頼りにされている沙名子。
さぞかし、真面目な社員の鑑かと思いきや、意外とドライな生活をしている。
会社にも、他人にも。与えた以上のものは求めず、求められた以上のものは与えない。
沙名子は、イーブンという言葉が好きである。フェアという言葉よりもわかりやすい。
入ってくるものと出ていくものが同じであること。差し引きゼロ。すべてにおいてどちらの負担にもならないこ。
今はその状態だ。これで満足。
入ってくるものと出ていくものが同じ。
まるで貸借対照表のようですね。
そんな貸借対照表のような性格なので、沙名子は会社の人間と必要以上にかかわろうとせず、愛社精神も向上心もありません。
お給料が入って、自分の好きな生活ができる状況に満足していますが、沙名子の周辺がこの満足する生活を崩していくのです。
周囲の変化が自分の変化へ
自分が変わらなくても、周りが変化したことで、とまどいや焦りを感じることはありませんか。
突然友人に彼氏・彼女ができたり、結婚話が出たりすると、焦る人も多いと思います。(主観ですが)
沙名子の場合、同期の鏡美月に彼氏ができたことは、何とも言えないモヤモヤと抱えるきっかけになります。
美月は恋愛に興味なさそうな態度だったにもかかわらず、社内に彼氏ができて、彼氏どころか付き合ったこともない沙名子は、どこかとまどいを覚えているのです。
一方で、沙名子は営業部のエース・山田太陽(ドラマではジャニーズWESTの重岡大毅さんが演じていました)に、つきまとわれます。
最初はうっとおしがって太陽を避けていた沙名子ですが、徐々に自分の満足した生活を曲げて、彼に会うようになります。
この心境や行動の変化が、沙名子を鉄仮面のようなスキのない女性から、柔らかさを感じるようになります。
特にシリーズを読み進めると、より沙名子の態度が変わったことが分かります。
経費精算から見える社内の人間模様
山田太陽に付きまとわれ、どんどん態度を軟化していく沙名子ですが、彼を気になり始めたきっかけは、恋愛感情!ではなく、彼が持ってくる領収書でした。
営業部のエースである太陽は、天天コーポレーションの新事業、温泉とカフェを融合したパラカフェに携わっていました。
彼は内装デザインを手掛ける曽根崎メリーに振り回され、休日出勤も行っていましたが、沙名子に渡してくる領収書には疑問符がつくものばかりでした。
たこ焼き代やテーマパークのチケット、社有車の休日利用など、一見プライベートと疑いかねない領収書ばかり!
本来なら面倒ごとに突っ込みたくない沙名子ですが、頭の中で映画『パシフィック・リム』のセリフ、「ウサギを追いかけるな」がリフレインしながらも、経理屋として動き出します。
沙名子の行動を見ていると不正を暴いて正しくするように感じますが、このシリーズはどちらかというと、沙名子が経費精算での疑問点を相手に指摘することで、その後の相手の様子をうかがうという感じです。
勧善懲悪というよりも、会社で起きる問題を白黒合わせ飲み込んでいく話というのが、しっくりと思います。
まとめ
経費精算は、お金の流れだけでなく、裏にある人間模様まで見えてくるのが分かります。
このシリーズは、経費精算から見える人間模様も魅力でありますが、人間関係にドライな沙名子が、太陽を始めとする会社の人間との関りで変化していく姿もみどころです。
NHKのドラマと合わせて、原作も読んでほしいと思います。
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