優しい食事と言葉があふれる夜食カフェの物語。古内一絵『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』

生きている限り、人は悩み傷つく。

傷が深ければ深いほど、先が見えなくて、とても苦しい。

自分のことがどうでもよくなってきて、身体や心はボロボロ。

そんな悩み傷ついた人たちが行き着くのが、秘密のカフェ「マカン・マラン」

高貴なドラァグクイーン、シャールが営む、人に合わせた体に優しい料理を出してくれるお店なのです。

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マカン・マランとは?

マカン・マランとはインドネシア語で夜食という意味。

そう、深夜に不定期で営業している夜食カフェで、営業日はシャールの都合で決まるお店です。

昼間はドラァグクイーンのお針子さんが作るダンスファッション専門店のため、一見カフェだと分かりません。

というのも、マカン・マランはお針子さんたちの賄を出したことから始まったお店だからです。

目印になるのは、中庭のハナミズキですが、メディアには一切出ないため、お店にいるお客さんは皆常連客なのです。

二十三時以降に食べても胃にもたれない身体に優しい料理と、リラックスできるお茶を出してくれます。

本編では、ノンカフェインのジンジャーティー、春野菜のキャセロール、お米パン、もちあわと南瓜のスフレなど、レシピ本が欲しいくらいの身体にやさしそうなメニューが登場します。

このような、手間をかけた優しい食事を口にしたとき、身体と心がボロボロになった人は本心が出てきます。

その本心に、シャールは優しい言葉を投げています。例えば

「サラダはメインになれないなんて言うけど、あたしはそうは思わないわ。最初からなにもかもそろっている人生なんて、面白くないじゃない。あたしはどう足掻いたって、本当の女性にはなれないけど、だからって、自分の人生を降りたいとは思わないわ。」

傷ついた人たちは、シャールの言葉にも勇気をもらうのです。

シャールとは?

ドラァグクイーン、シャール。本名は御厨清純(みくりや きよずみ)。

元は証券会社に勤めていたエリートサラリーマンでした。

しかし、病気を発祥したことでこれまでの人生を見つめなおし、会社を辞め、ドラァグクイーンとなったのです。

そんなシャールのことを、シャールを慕うジャダと中学の同級生柳田は、彼?(彼女?)のことをこう評します。

自分たちトランスジェンダーと、家族の関係は難しい。

ましてやシャールは、元々生粋のエリートだったらしい。病気を契機にカミングアウトし、たくさんのものを失ったと聞いている。

それだけ多くの傷を負っているから、シャールは止まり木を作った。

そこでたくさんの人たちを休ませながら、自らをも守っているのだろうと、ジャダは思う。

 

シャールには、人を引きつける不思議な力がある。いつだって、そこにいるだけで、誰もが自然と彼の話に耳を傾ける。

昔はそれを、彼がハンサムで人当たりのいい優等生だからだと思っていた。

だがおかまになった今も、それはちっとも変っていない。

シャールがお客さんに優しい言葉を言えるのは、シャール自身、傷ついた人間だからなのでしょう。

まとめ

『マカン・マラン』シリーズは4冊出ておりますが、どれも優しいお話になっています。

シャールは時に厳しいことをストレートに言いますが、彼?(彼女?)の人生経験からか、納得できる言葉なのです。

社会からはみ出し者と言われ、蔑まれるドラァグクイーンであるからこそ、優しいのです。

傷ついた人や、前に進みたいのに進めない人の背中をそっと押してくれる、そんな優しいカフェの物語は、何度読んでも心が温かくなります。

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ABOUTこの記事をかいた人

神奈川県出身、OL。 好きなジャンルはファンタジー、ミステリー、ビジネス書、スポーツ選手・監督の著者 好きな作家は上橋菜穂子/荻原規子/宮部みゆき/東野圭吾/原田マハetcと書ききれません。 今は読書が大好きですが、かつて学生時代は読書が苦手でした。読書課題の本はすぐに飽きて、漫画ばかり読んでいました。 ですが、宮部みゆきさんの『火車』に出会い、文字の世界に引き込まれたのと同時に、自分が経験できないことは、本を読んだ時のイマジネーションが補ってくれると実感したのです。 読書離れが叫ばれて久しいですが、人生経験を妄想でもいいから、多くこなせるよう、私が書く書評記事でお手伝いしたいです。

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