世界の見方を変えるフェミニズム批評の力:北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』

わたほん読者のみなさま、こんばんは。
今日からライターに仲間入りしました、せらまよ(@seramayo)です。

ここのところ、男女格差やジェンダー問題が取り沙汰されることが増えていますね。それに伴って目にする頻度が増えているのが、「フェミニズム」というワードです。
でもフェミニズムって、具体的にどういう思想なのでしょうか?
抽象的な定義では理解できるけれども、なんだかスケールがすごく大きい気がして、自分の生活とはあまり関連づけられない……そう感じる人も多いのでは。

そんな方に(男女問わず)おすすめしたいのが、北村紗衣(著)『お砂糖とスパイスと爆発的な何か:不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』です。

誰が書いたどんな本?

著者:北村紗衣

著者の北村紗衣氏は、シェイクスピアとフェミニスト批評、舞台芸術史を専門とする研究者。東京大学の表象文化論にて学士号・修士号を取得後、2013年にキングズ・カレッジ・ロンドンにて博士号を取得、現在は武蔵大学人文学部英語英米文化学科准教授。

Twitterアカウントは @Cristoforou で、積極的な発信を行っておられます。

この本の内容

Amazonに掲載の内容紹介が素晴らしかったので、そのまま引用させていただきます。

フェミニストの視点で作品を深く読み解けば、
映画もドラマも演劇もこんなにおもしろい。
自由に批評するために、自らの檻をぶち壊そう!
映画と演劇を年に200本観るシェイクスピア研究者による
フェミニスト批評絶好の入門書

本書には以下の5つのテーマが設けられ、それぞれ5つずつ、計25の「フェミニスト批評」が納められています。

  1. 自分の欲望を知ろう
  2. 男らしさについて考えてみよう
  3. ヒロインたちと出会おう
  4. わたしたちの歴史を知ろう
  5. ユートピアとディストピアについて考えよう

こんな人におすすめ

「フェミニズム」の考え方に触れてみたい人

この記事の冒頭で述べたように、「フェミニズム」というのがどんな思想なのか、具体的に知りたい人に本書はとてもおすすめです。

こんなワードに引っかかる人

  • 「ブス」
  • 「キモくて金のないおっさん」
  • 「ツンデレ」
  • 「女だけの街」
  • 「読書会」

これらのワードが気になる人は、ぜひ本書を手に取ってみてください。本書には、上記のようなワードをはじめとして、さまざまな「身近なキーワード」をテーマとした批評が収録されています。

こんな作品や作者が好き・嫌いな人

  • 『アナと雪の女王』
  • 『サロメ』
  • 『ファイト・クラブ』
  • 『二十日鼠と人間』

上記のような作品や、

  • ウィリアム・シェイクスピア
  • ヴァージニア・ウルフ
  • カズオ・イシグロ

これらの作家について、

「好き」あるいは「嫌い」な方は、本書に収録された批評を読むことで、作品や作者への理解がさらに深まることでしょう。

なんと言っても「まえがき」がすごい!

たくさんのフェミニスト批評が納められている本書。もちろんこれらの批評はどれも抜群に面白いのですが、この本の中でわたしが最も感動した文章、それは「まえがき」でした。

したがってこの記事では、「まえがき」に書かれていることを中心に、特に大切だとわたしが感じたことを紹介します。

批評は「楽しむための手段」である

まえがきでは、「批評」というものが著者にとって、映画や舞台などの対象を楽しむ方法の一つであると述べられています。

それも、作品を鑑賞してただ「面白かった!」というだけでは物足りなくなってきて、もう一歩、深く楽しんだり、調べたり、理解したいな……と思うときに必要となるものだとか。

そして「一番大事な批評の仕事」として、
「批評を読んだ人が、読む前よりも対象とする作品や作者をもっと興味深いと思ってくれること」
が挙げられています。

あれ? 「批評」ってなんだか、自分にもできそうな気がしてきませんか。

批評はこうやる!

では、その「批評」は、どうやって行えばよいのでしょうか?
本書のまえがきには、著者が考える「一番わかりやすそうな批評のやり方」が説明されています。

1) テクストを丹念に読む

  • 読み物だけでなく、映画や舞台やゲームやスポーツなど、まとまったコンテンツならなんでもテクストとして読める
  • 一語一語、細部の描写に注意を払い、一貫性のある形で読みを提供できるように見ていく

2) 切り口を見つけて作品を描写する

  • 作品全体をあるキーワードで解釈できるような切り口を見つける
  • その切り口に沿って作品を分析してみる

3) そのキーワードが入ったカッコいいタイトルをつける

  • ここまで来たら、なんだか前よりも作品を楽しめたような気がしてくる!

注意) 解釈に正解はないが、間違いはある

  • 文芸に唯一の正解はない
  • けれども、事実として提示されていることを正確に押さえる必要はある

批評は「檻を破る道具」でもある

批評は「楽しむための方法」であると同時に、「自分が入っている檻を破る道具」でもあると著者は述べます。なぜなら、独創的な批評をするためには、自分の持っている固定観念を自覚した上で、それをぶち壊さなければならないからです。

例えば本書で取り上げられている「フェミニスト批評」は、わたしたちが知らず知らずに身につけている「男性中心的なものの見方」にわたしたち自身が気付き、その固定観念=檻を破るのを手伝ってくれます。

批評とは、わたしたちを目覚めさせ、なんらかのくびきから解き放ってくれるものなのですね。

さっき観た映画を語り合うような読書体験

このように丁寧なまえがきからも読み取れますが、本書の全体が、「もしよかったら読者も一緒に批評してみようよ」という優しいスタンスに貫かれていると感じました。

どの部分も漏れなく学術的な知識に基づいているのに、常に著者が隣にいて、普段のおしゃべりで使うような言葉で話してくれているような気がします。
そう、まるで「友達とカフェで、さっき観た映画を語り合っているかのような感覚」で読める本なのです。

「ポップでシャープでフレッシュ!」というライムスター宇多丸氏の帯文は、本書のこのような雰囲気をとてもよく捉えていて、素敵だと思いました。

あなたなら、どこから読みますか?

この本は、好きなところから読んでも良いと述べられています。

一番自分がコミットできそうなところから取り掛かってみる、それがフェミニズムの大事なところです。

なるほど、この本の形式自体が、フェミニズムの思想に貫かれているのですね。

あなたならどこから読みますか? わたしは、「自分の欲望を知ろう」から読みました。

この本は「作品をどう観るか/どう読むか」について書かれているのですが、この本自体が、「この本をどう読んだか」を語り合いたくなる本だと感じます。

今回の書評を読んで本書を読んでくださった方がいらしたら、ぜひ、あなたなりの読み方について教えてください。そうすることで、また新たな世界の見方を獲得していけたら、それはとても楽しいだろうなと思います。

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    せらまよ

    関西の地で、文章を書いて暮らしています。 小説は文体で選び、聴くように読みます。 人生に疲れた時には哲学関係の本をよく読みます。 読書のほかには、クラシック音楽、珈琲とお酒が大好き。 いつかどこかで「本当に長居ができるお店」をひらくことが夢です。 執筆などのご相談は TwitterのDMまでお気軽にどうぞ。