大人になった私たち 鈴木るりか 著『14歳、明日の時間割』

2019年最後にすごい本に出会いました・・・。2019年最後の書評はこの本に決定!

今回ご紹介する1冊は現役の学生が書かれた14歳明日の時間割です。

著者は現役の学生!

中学生の頃に書いたデビュー作「さよなら、田中さん」が大ヒット!

今回はそんな今大注目の新人作家鈴木るりかさんの第2作目となる14歳明日の時間割をご紹介します。

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うるわしき学生時代

この作品はチャプターごとに時間割に見立て、各教科毎にストーリーが進行していきます。

例えば1時間目の国語

その電話を受けたのは母で、私はまだ学校から帰っていなかった。「午後6時ごろ秀文社の片瀬さんから電話があってね、『明日香ちゃんいいですね。脂が乗ってるって感じです』って言ってたよ」夕食の時、母が教えてくれた。数ヶ月前、私は出版社が主催する小説賞で、特別賞を受賞していた。史上最年少だそうで、小さな田舎町ではちょっとした騒ぎになった。

と言う出だしで物語が始まっていきます

この1分を読んだときに私は「ははーん、自分を題材とした小説を書いているんだな」と思いましたが、それはまったくの勘違い。

最初の国語こそ著者の鈴木さんをモデルとしているのかもしれませんが、それ以降の時間割では様々なキャラクターが登場しそれぞれの視点から学生生活を綴っています。

 

中学生と言えば子供と大人のちょうど境目にあたる時期。

まだまだ自分のことで精一杯だけどちょっと背伸びをしてみたくもなる時期であって、また同時に人からどう見られているか、なりたい自分と人から見られている自分がどう乖離しているか敏感に気にする時期だと思います。

このような多感な時期に感じる心の振れ幅は、やはり現役の学生である鈴木るりかさん。表現するのが上手だなと思いました。

「大人の言う事なんて」と、大人を遠ざけつつ、大人の事情で自分の進路を妨げられてしまったりと思うように行かなかいこともしばしば。

そういう憤りやわだかまりをクラスメイトとのやりとりで癒してもらったり、ときには大きな何かに気づいたり。学生時代とは正に小さな社会であり、社会の中でどう生きていくかと言うのを体で学んでいるのだなと感じました。

学校では時間割ごとにいろいろな教科を学んでいきますが、それに準じて多様な生き方を学ぶ場でもある、というのが大人になった私が「学校って何のためにあるの?」と聞かれた時の答えになるかな?とこの本を読んで思いました。

さっちー
もう一度学生時代、やり直したいな・・・

まだ学生?侮ることなかれ

私がこの本の中で一番心にグッときたのが5・6時間目の体育です。

運動神経が全くない主人公が、学校行事のマラソン大会に向けてこっそりと練習を行うストーリー。

この主人公の家には80歳を超える祖父が居て、その祖父とのやりとりに号泣しました。

 

祖父は自らのもう長くないであろう命に対して、その運命にあらがうことなく真正面から死に対して向き合っていました。

年寄りが死ぬのは当たり前だ。自然の摂理ってやつだ。でも生きているのは当たり前のことじゃないぞ。忘れがちだけど、今日生きてるのは当たり前のことじゃないんだ。

 

歳をとるとだんだん醜くなって、若い人には見向きもされない姿形になっていく、というのは実によくできたシステムなんだ。(中略)体が衰えて、去年できたことがだんだんできなくなる。頭の回転も遅くなる。そうやって少しずつあきらめをつけていく。頭も体も若い時と変わらなかったら、人生が楽しくて死ぬのが嫌になる、怖くなるだろう。でも少しずつ無理がきかなくなって、思うようにいかないことが増え、諦めがつくようになる。そうやって最後を受け入れる姿勢、心構えを、知らず知らずのうちに準備している、させられているんだな」

 

おじいちゃんがいなくなっても、そう悲しむ事はない。忘れてもいい。忘れているくらいでいい。死者を思い出すなんてのは、ろくな時じゃないものさ。困った時とか落ち込んでいる時とかな。

 

私が中学生の頃を思い出してみると、誰かが死ぬと言う経験したことがなく、「死ぬ」と言うのはどういうことなのか、どういう気持ちで死ぬのか。というのを考えた事はありませんでした。

ただ漠然と怖いことというイメージだけが先行し、死=終わり、生=普通のこと、として捉えていたように思います。

作者の鈴木ルリカさんはどこでこのような死に対しての考え方と接してきたのか、すごく気になりました。

他にも

「私、お母さんに愛されていないんだよね。愛とか言うと重たくなっちゃうけど、そうなの。はっきり言うと嫌われてんの」

 

それだけを目標に、人生の中心にして努力に努力を重ねてきたのに、そこがなくなっちゃった人間てどうなると思う?抜け殻になるんだよ。元選手じゃない。ただの抜け殻。

このような、ドキッとする文章が至るところにありました。

大人は大人でいろいろ手一杯だけれども、そのしわ寄せは必ず子どもにいく、そう思いました。

年代にとらわれない表現の自由

この1冊を通して読むと笑いどころあり、涙がにじんだりと読み応え時は十分でした。

「まだ学生なのにすごい・・・」とコメントする読者さんが多いのも頷けます。

しかし、若いからといって何も感じない訳ではないですし、大人に響くことを書いてはいけないというルールがある訳ではありません。

知らず知らずのうちに私たち大人が無意識に「10代の子どもなんて所詮こんなものだろう」「ここまで深く物事を考えていないだろう」「人生観は人生経験・年齢に比例する」と思っていることが露呈してしまった結果、こういうコメントが並ぶのではないかと私は思います。

10代の子も5才の子も、生まれたばかりの赤ちゃんも、周りの状況を瞬時に汲み取り、いろんな思いを感じているのでしょう。

それを表現するかしないか、どう表すか、だけのような気がします。

先ほども述べたように、中学生〜高校生は大人と子どもの間で揺れる時期です。

この時期にしか感じられない、何色にも染まっていない刹那の思いをるりかさんにはぜひ等身大のまま表現して欲しいと思います。

これからるりかさんが成長するに従って、どんな風景を切り取ってくれるのか非常に楽しみです^^

楽しく読める1冊なのでぜひこのホリデーシーズンに読んでみてくださいね!

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わたほん編集者。子どもの頃から本が好き。日々の忙しさに負けて本から離れた時期もあったけれど、結局本に癒され、本に励まされ、本からたくさんのことを学び、立ち上がってきました。私である意味を、存在する意義を与えて教えてくれるのは本。軽めの本やビジネス本を好んで読みます。
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