みなさまこんにちは!コメダワラ(@pantokome_)です。
突然ですがみなさん、マラカスを演奏したことはありますか?
私は、大学の音楽の授業でときどき演奏室を使ったりするのですが、休み時間中、演奏室にある楽器をあちこちから勝手に引っ張り出してきてはみんなで即興演奏するときなんかによくマラカスを使ってました。
今日は、そんなマラカスをテーマにした、とてもシュールで愉快な絵本『クネクネさんのいちにちシリーズ きょうはマラカスのひ』についてご紹介いたします。

あらすじ

本作の表紙を飾る、犬のようなオオカミのような、なんとも言えない姿をしているのがクネクネさんです。そんなクネクネさんはマラカスが大好き。
今日はお家で、おともだちのパーマ頭の”パーマさん”と顔の周りにふわふわの毛が生えている”フワフワ”さんの三人で、マラカスの発表会を開きます。クネクネさんは、この発表会でとっても難しいリズムを演奏するので、日々練習を積み重ねてきました。
発表会は、まず三人でリズムを合わせながら踊るところから始まり、パーマさんの迫力いっぱいの演奏と、優しく奏でるようなフワフワさんの発表を終えたところで、三人はお昼休憩を挟むことにしたのです。
そしてそのあとは、ついにクネクネさんの発表。だけど、あれれ?フワフワさんもパーマさんも、お腹がポッコリ出てしまうくらいいっぱい食べたので、いつの間にか眠ってしまいました。そしてクネクネさんはと言えば、ドシーン!とすっころんでしまったのです。あんなにいっぱい練習したのに大失敗してしまうし、転んだときにぶつけたお尻が痛いことに加えて、パーマさんとフワフワさんが寝てしまったことがショックで、部屋に戻り泣いてしまいました。
さて、演奏会はどうなってしまうのでしょうか・・・?
「そう上手くはいかない」というリアルさ
絵本に限らず、アニメでも小説でも漫画でも、その先の物語を予想しながら見ている方って結構多いのではないかなと思います。
私も、三人がマラカスの発表会をする日がきてお昼休憩をはさむまで、「起承転結の”転”の部分は、きっと三人にハプニングがあるんだろうなあ」と予想しながら読んでいました。それがどうだ。
誰よりも張り切って練習をし、誰よりも緊張を感じていながらもこの日を楽しみにしていたであろうクネクネさんが、本番は盛大にすっころび、さらに観客の二人が寝てしまうなんて。もし自分だったら絶対立ち直れないと思います。気持ちの切り替えなんてできそうにもありません。
この作品を読了後、何より衝撃だったのは「努力をしても上手くいかないこともある」ことと「人との関わりの中で誰にでもありうる」ことがこの短いページ数の中に描かれていて、この作品に”絵本”という可愛らしい分類は似つかわしくないような気さえしているほど、この一冊に”現実(リアル)”がぎゅっと詰め込まれていることでした。
いっぱいいっぱい練習したから上手くできたね、ハッピーエンド!の世界ではなくて、クネクネさんはたくさん練習したけど、失敗してしまったという世界。さらに、友人たちはそもそも自分の演奏すら見ていなかった、というなんとも惨い追い打ち・・・
うまい言葉がまだ自分の中に存在していないが故にこのような言葉しか出てこないのですが、簡単に言えば、友人からの「悪意のない悪意」みたいなものって、誰もが大体は経験していることなんじゃないかなと思います。このシュールなイラストと相まって、そういう現実的要素が余計際立っている印象を受けました。
絵本だけど、一冊のショートストーリーを読んでいるような、とても味わい深いシーンです。
チャッ ウー チャチャ ウー
そしてこの本で最も印象的なのが独特なリズムの音!
パーマさん、フワフワさん、クネクネさんそれぞれの演奏が、言葉や文字の大きさなどで表現されていることによって個性を感じることができて、すごく愛しくなっちゃいます。
何より、クネクネさんの演奏がとっても面白くて、思わず読むたびにくすくす笑ってしまうほど。
ワン ツー スリー!
チャッ ウー チャチャ ウー、チャッ ウー チャチャ ウー、チャッ ウー チャチャ ウー、チャッ!
カンカンカンカンカンカンカン!(×3)
パー!
不思議なこのリズムがずっと頭にこびりついて離れてくれません。
こんなふうに音を言葉にして、自分だけのリズム音を作ってみるのもすごく楽しそうです。
さいごに
このなんとも言葉に表せない絵の雰囲気はもちろん、それに引けを取らないくらいインパクトのある言葉たちがぎゅっと詰って大爆発している一冊となっています。
実際に子どもにも読み聞かせをしてみたのですが、最初にこの絵本を見せたときの子どもたちの顔が、なんとも言い難いような顔をしていて「未知の世界に出会った子どもってこんな表情をするのか」ととても面白かったです。三人がそれぞれマスカラを演奏しているシーンはすごくウケていました。
私はこの絵本がすごく大好きで、その理由の大きな1つは、表紙を開くたびに、初めて目にしたときの衝撃を思い出しては当時のように未だにドキドキさせてくれるからです。
何度も何度も読んでいるのに、まるで初めて見たかのように読むたびにドキドキするんです。メルヘンな物語でも、かといって大きな波乱がある物語でもないけれど、一度見たら虜になってしまう不思議な魅力のあるこの絵本。
みなさまにとって、新しい出会いの一冊になりますように。