僕たちの世界を旅してください。東田直樹 著『自閉症の僕が跳びはねる理由』

みなさま、こんにちは。コメダワラです。

そして!あけましておめでとうございます!

早いものでもう2019年を迎え、平成の終わりが刻一刻と迫っていて、平成生まれとしては寂しさを感じつつも新しい時代に胸を躍らせています。2019年が皆様にとって、暖かく、優しく、笑顔溢れる1年になりますように。

しばらく書評をお休みさせて頂いておりましたが、今日からまた少しずつ書いていこうと思います。

そんな2019年最初の書評は、東田直樹さん 著『自閉症の僕が跳びはねる理由』です。

 

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はじめに

まず、書評に入る前に、簡単ではありますが著者である東田さんのご紹介をさせて下さい。

東田さんは会話のできない重度の自閉症でありながらも、パソコンや文字盤ポインティングによってコミュニケーションが可能となり、13歳のときに本書を執筆されました。本書の他に、『自閉症の僕が跳びはねる理由2』や『あるがままに自閉症です』『跳びはねる思考』など多数の作品があります。

本書『自閉症の僕が跳びはねる理由』の冒頭には、なぜ東田さんは自分が「障害者」だと気付いたのかが綴られています。

自分が障害を持っていることを、僕は小さい頃は分かりませんでした。

どうして、自分が障害者だと気付いたのでしょう。

それは、僕たちは普通と違う所があってそれが困る、とみんなが言ったからです。

しかし、普通の人になることは、僕にはとても難しいことでした。

 

”僕たちの世界を旅してください”

自閉症は、知的障害や身体障害など大きく分類された中の1つ、発達障害(アスペルガー症候群や学習障害、注意欠陥多動性障害など)の中の1つとされています。

その特徴として、本書から抜き出すとすれば

  • いつも同じことを尋ねるのはなぜですか?
  • 表情が乏しいはどうしてですか?
  • 自閉症の人はどうしてすぐに耳をふさぐのですか?
  • なぜ繰り返し同じことをやるのですか?
  • どうしてパニックになるのですか?

・・・など、自閉症に対する様々な疑問や質問が挙げられています。しかし、これが必ずしも自閉症とされるすべての方に当てはまるわけではありません。

なんだか話が少しずつ逸れていってしまいそうなので、ここら辺で本書のお話に入っていきたいと思います。

バスや電車に乗っているときや町を歩いているとき。突然大きな声で笑い出したり、同じ言葉を何度も繰り返し発している方を見かけると、頭では分かっていてもつい、ドキッ…としてしまう。そして、車内に緊張が走って、それぞれ目を合わせないようにしたり、避けたりして…そんな場面に出くわす度に「なんでこんなふうに、ドキドキしてしまうんだろう。」「こんなふうに腫れ物のようにされて、良い気分はしないよなあ」と、自己嫌悪に陥ってしまう自分がいました。

同じ人間で、何かされたわけでもないのに、どうして怖いと思ってしまうのだろう、と。

そんなとき、東田さんのこの言葉に、とても強い感銘を受けたのです。

この本を読んで下されば、今よりきっと自閉症の人のことを、あなたの身近な友達のひとりだと思っていただけると思います。中略)自閉の世界は、みんなから見れば謎だらけです。

少しだけ、僕の言葉に耳を傾けてくださいませんか。そして、僕たちの世界を旅してください。

この書評を通じて、理解をするのではなく東田さんの仰る”世界”を共に旅できたら、幸いです。

僕たちを、あきらめないで下さい

先程も書かせて頂いたのですが、「どうしてパニックになるのですか?」という1つの小項目に対して東田さんが答えていく質疑応答のような形で書かれており、

  1. 「言葉について」
  2. 「対人関係について」
  3. 「感覚の違いについて」
  4. 「興味関心について」
  5. 「活動について」

の第5章までと、最後には短編小説「側にいるから」が掲載されています。

自分の心の中に残しておきたい言葉や文章がたくさんあって、どれをピックアップしようか現在進行形で悩んでいるのですが、その中でも特に東田さんが伝えたい部分であろうという箇所があります。

ずっと、僕たちを見ていて欲しいのです。見ていてというのは、教えることをあきらめないで下さいということです。(中略)僕たちは見た目では、言っていることを理解しているのかいないのかも分からないし、何度同じことを教えてもできません。

そんな僕たちですが、頑張りたい気持ちはみんなと同じなのです。だめだとあきらめられると、とても悲しいです。

僕たちは、自分ひとりでは、どうやればみんなのようにできるのか全く分かりません。

どうか、僕たちが努力するのを最後まで手伝ってください。

 

まだ見ぬ”普通”の正体

東田さんは、「普通の人になりたいですか?」という項目に、このように答えています。

僕たちは、自閉症でいることが普通なので、普通がどんなものか本当は分かっていません。

自分を好きになれるのなら、普通でも自閉症でもどちらでもいいのです。

私はこの本を読了後、本書の冒頭にもあるように、みんなが言った「普通と違う所があってそれが困る」という言葉にある「普通」って、なんだろう。と、ずっと自分自身に問い掛けています。

外に出るときはお洋服を着るとか、人を殴らないとか、いわゆる生きていく上での”常識”は必要ですよね。でも、常識=普通っていうことではなく、だからこそ普通の定義が各々の中にあって、誰もが同じ基準ではないからこそ、その”普通”は時に誰かに対して凶器にもなり得るのだよなあと、感じました。

普通の正体は誰にも分からない。何にでも七変化してしまうカメレオンみたいですね。

おわりに

私は、障害児保育の授業で、先生が本書を紹介していたことがきっかけで購入したのですが、今まで想像しかできなかった自閉症の方が見ている世界に、10歩も20歩も近付くことが出来たのと同時に、正直に言うと自閉症について書かれているどの教科書よりも分かりやすく、もっと早くこの本に出会っていたらと悔やんでしまいました。

今までは第三者の立場からしか語られてこなかった自閉症の方の内面を、言葉にして本という形で具現化しているこの作品は、障害者に対する様々な差別がまだ根強く残るこの世の中に大きな意味を持つ一冊だと思います。

そして、この書評を書くにあたって普段よりも一層、言葉に対して神経質になってしまったのですが、もうこの時点でどこか障害を特別視してしまっているような気がして、なんか違うよなあ、と自分自身に違和感を覚えています。

障害の有無にかかわらず、友達でも家族でも、誰かのことを完璧に理解するなんて到底無理だと思っています。でも、知ることは出来るし、心を寄り添うことも、見守ることもできる。

あなたにとって、この世界の旅が心のはじっこに残りますように。

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ABOUTこの記事をかいた人

神奈川県在住、21歳。 大学で保育のお勉強をしています。 小説はもちろん絵本も大好きなので、大人も楽しめるいろんな絵本を紹介していけたらいいなあと思っています。 好きな作品:『プリズン・トリック(遠藤武文さん)』『リップスティック(野島伸司さん)』『塩の街(有川浩さん)』 カフェ巡りや絵を描いたり、空を眺めたりしている時間と、パンとオムライスが大好きです。
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