世界で一番美しく、さみしい魚。マーカス・フィスター 著『にじいろのさかな』

みなさま、こんにちは。コメダワラと申します。

本日は、世界的にも有名なマーカス・フィスター 作・谷川俊太郎 訳『』をご紹介致します。

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あらすじ

深く蒼い海に、ある一匹の魚がいました。それも並大抵の魚じゃない。虹のように様々な色合いの鱗をもった、”にじいろのさかな”だったのです。

他の魚たちから”にじうお”と呼ばれるその魚は、ある日、小さな魚に呼び止められ、こんなお願いをされました。

「きみのそのきらきら鱗を一枚おくれよ」

しかし、その特別な鱗を誰にもあげる気はなかったにじうおは、小さな魚を追い払ってしまったのです。それ以降、海では誰にも見向きもされなくなってしまった、ひとりぼっちの寂しいにじうおは、ある日出会ったタコに、こんなアドバイスを受けるのです。

きらきらうろこを 1まいずつ、ほかのさかなにくれてやるのじゃ。それでおまえは、いちばんきれいな さかなではなくなるが、どうすれば しあわせになれるかが わかるだろう。

その助言を受けたにじうおは、あの日傷つけてしまった小さな魚に1枚、躊躇いながらもその自慢の鱗を差し出します。

それからというもの、きらきら鱗を輝かせる小さな魚を見た、他の魚たちもにじうおを取り囲み、鱗を欲しがりました。

そうして次第に、にじうおの身体にあったきらきらの鱗はたった1枚になってしまうのですが、一番のたからものをみんなにあげてしまったにじうおは、とても幸せそうに、仲間とともに泳いでいきました。

生まれ持った”鱗”という才能

誰もが一度は耳にしたことがあるだろうこの作品。私も名前は聞いたことがあったのですが、どういうお話かを知ったのは、実はつい最近のことでした。

子どもの頃に出会っていたとしたら、きっと”にじうお”に対するイメージは「意地悪だけど心を入れ替えたやさしい魚」だったことでしょう。しかし、一般的に大人と呼ばれる今、この作品を読んでみると「めでたしめでたし」で終われないような、もやっとした気持ちが残ってしまって仕方ありません。

だって、にじうおは意地悪やずるい手段を使って色とりどりのきらきらの鱗を手に入れたわけでもなんでもなく、生まれ持った特徴だったわけじゃないですか。それってきっと、誰にもどうすることもできない、きらきらの鱗 という生まれ持った才能の1つだと思うのです。

それを羨み欲しがる仲間たち。確かに、にじうおもにじうおで感じが悪かったかもしれませんが、自分のたった一つの宝物であり自慢の鱗を分け与えなければ、一人ぼっちになってしまう。そんなのってなんだかあんまりだよなあ、と思ってしまいました。

鱗がなくて、どうやって幸せになれるっていうんだ?

タコからアドバイスをもらったにじうおは、まずこう考えました。

ぼくのうろこを くれてやる?この きらきらする きれいなうろこを?とんでもない。うろこがなくて、どうやって しあわせになれるっていうんだ?

この一文から、仲間はずれにはされてしまって寂しい思いもあるけれど、にじうおはこのきらきらの鱗によって幸せを感じていたということが伝わってきます。

そんな鱗を分け与えるのって、きっと、ものすごい勇気が必要だったのではないでしょうか。だけども、躊躇う気持ちはありながらも「1枚だけならいいか」と自分を納得させてしまえるにじうおの強さ。きらきらの鱗以上にまぶしく感じました。

確かに、きらきらの鱗は生まれもったものだけど、にじうおにとっての幸せを分け与えることによって海が一層きらきらと光り、みんなの幸せな姿も相まって、結果として新しい幸せに気付けたのかもしれません。

ハッピーエンドだとは分かっているけれど、私は未だに、にじうおにとって分け与えたことが本当に良かったのか、それでも自分だけの鱗にしておくべきだったのか、何が本当に良い選択だったのだろうかと考えてしまいます。

ここで一つお聞きしたいのですが、みなさんがもしにじうおだったとしたら。鱗を分けますか?

さいごに

今まで読んだことのある絵本もそうでない絵本も、改めて読み返してみると、考えさせられる言葉やそれぞれの思いがところどころに溢れていて、たった数ページにこんな深い意味が込められていたのかと驚くことが多々あります。この作品もその中の1つです。

そして何より、この『にじいろのさかな』は鱗が本当にキラキラしていて、みんなが羨む気持ちもわかるほど美しいです。少し影を作るとキラキラが隣のページに反射したり、感触もツルツルしていたりと、視覚的にも感触的にも楽しめるのが大きな特徴の1つとなっています。

この『にじいろのさかな』はシリーズ化もしており、他にも『ゆっくりおやすみ』『しましまをたすける!』など現在全8作あるそうです。

この広い広い世界、にじうおたちはもしかしたら、今もどこかの海で、魚たちと鱗をキラキラと輝かせながら楽しく遊んでいるのかもしれませんね。

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神奈川県在住、21歳。 大学で保育のお勉強をしています。 小説はもちろん絵本も大好きなので、大人も楽しめるいろんな絵本を紹介していけたらいいなあと思っています。 好きな作品:『プリズン・トリック(遠藤武文さん)』『リップスティック(野島伸司さん)』『塩の街(有川浩さん)』 カフェ巡りや絵を描いたり、空を眺めたりしている時間と、パンとオムライスが大好きです。