今日のこころは、何色ですか?おーなり由子 著『きれいな色とことば』

みなさま、こんにちは!コメダワラと申します。

突然ですが、みなさんはどんな色が好きですか?パステルカラー?原色系?それとも、きりっとした格好いい色?

今日は色とりどりの言葉たちがじんわりと心に染みてくるような優しい一冊である、おーなり由子さん著『きれいな色とことば』をご紹介させて頂きます。

”すきな色になっていいよ”

ある日、知る。

こころに色があることを。ことばに色があることを。音楽に色があることを。時間に色があることを。

わたしに色があることを───

この本では、おーなりさんの幼少期から現在に至るまでの色にまつわる短いエピソードたちが、色ごとに分かれて書かれています。

でもそれは、目に見える色だけではありません。お風呂の湯気、夏の紅茶教室、やみつきになったお豆たち・・・冒頭の言葉のように、心で感じた色たちが綴られているのです。

わたしの色、あなたの色

またまた質問なのですが、みなさんは「赤」と聞くと、どんな赤を思い浮かべますか?

赤・・・

私は濃くて強い色をした赤を連想したけれど、もしかしたらあなたは少し違う赤を思い浮かべたかもしれない。

夢の色』というエピソードに登場する大学の友人がこう言います。

「子供の頃、自分の見ている色と他人の見ている色が同じなのか不安で仕方なかった。」

「言葉では、同じ『赤』と呼んでいるとしても証明なんてできないし、その人とからだごと入れ替わってみて、その人の目になって同じものを見て、うん同じだよ、というようなことでもない限り無理と思う。」

そしておーなりさんは、こう考えるのです。

色はきっと、目だけで見ているのではないと思う。色は、同じ色でも、見る人やタイミングによって、様々に変化してうつる不思議なもの。

日常の中に空気のように当たり前にあって、見えるけど説明ができない、ゆたかなもの。心をゆさぶる音楽のような───

人は、自分の色を見て生きていく。自分の思うとおりに。

大好きな人と自分が見ている世界を共有できないことってすごく切ないし、寂しいような気もするけれど、だからこそ自分の世界を伝えたくなる。教えたくなる。そして知りたくなる。

思い出、あのときの感情、纏う空気・・・生まれたての真っ白だった世界に自分だけの色を重ねに重ねて今の自分になっているのだと思うと、なんだか一気に色とりどりの鮮やかな人になれたような気がします。

色とりどりの毎日が、いとしく思える日に

私はとくに 青いたからもの という章に収録されている『夕焼け青焼け』というエピソードがとっても大好きです。

17歳のとき、どしゃぶりの夕立のあと自転車で学校から家に帰ろうとしていたときのこと。

あたりがあんまりに明るくて空を見上げてみると、空全体がブルーのカラーインクをこぼしたような、信じられないような透明な青で光っていた。ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、サファイアブルー・・・ブルーの大展覧会のような、ひれ伏したくなるようなアオが広がるまぶしい空。そんな空を、友人は「夕焼けの青版で、青焼けというのだ」と教えてくれた、というお話です。

おーなり由子さんのすごいところは、表現力と感性、それに、柔らかな言葉の豊かさだと思っています。

「ブルーの大展覧会」なんて、きっとこの本に出会わなければ一生耳にしないんじゃないかっていうくらい、なかなか出てこない表現ですよね。この世にはいろんなブルーがあるのに、どの色の名前にも当てはまらないくらいのブルーだったということが想像できて、このお話を通して空がもっともっと大好きになりました。

文字の良さのひとつに、漢字とひらがなで受ける印象が異なるという点が上げられると思うですが、塩梅を間違えれば堅苦しくなったり、反対に読みづらくなってしまいます。また、おーなりさんが積み重ねてきた日々や色が、記憶が、一つ一つ丁寧にそのまま文字になり、ぎゅっとこの一冊に詰まっていることが、読了後の胸に広がるあたたかさからも分かります。

何気ない毎日でも、すこし意識を向ければあらゆるところに色はあふれている。このことに気が付いたとき、一瞬にして、世界がまぶしいもののように見えた気がしたのです。

おわりに

私はこの一冊を読むまで、とにかく自分が何よりも汚いもののように思えて仕方ありませんでした。

10代の頃、あんなになりたくないと思っていた”大人”になってしまったことへの絶望や、年を重ねるにつれ顔を見せ始めた自分の狡さ・・・そういうどす黒さたちが、ずっと心の中に渦巻いていました。

泥水のような、あるいは濁った水のような、なんとも言えないような色に染まってしまった自分が本当に嫌でたまらなくて、綺麗なものを見つけては、まだ「綺麗だ」と思える自分にホッとする・・・。そんな日々に加えて、こんな風に”色”を心で感じている人も周りにはなかなかいなかった為、この不安を誰にも伝えられないもどかしさですごく悩んでいたのです。

そんなとき、おーなりさんのこの言葉にとても救われました。

赤くなったりきいろくなったりくすんだりしながら、誰かとまざる。知ってても知らなくても、心はいろんな色にのびたり、ちぢんだり、毎日毎日うまれかわる。

だから、今日、すきな色になってるといいな、と思う。

心はいつも同じ色じゃない。その日その日の色があって、いろんな色になったり、新しい色にであったり、そんな風に毎日を繰り返しながら自分を作っていくんだ。

私にとって、あなたにとって、大切な人にとっての毎日が色鮮やかになりますように。

ABOUTこの記事をかいた人

神奈川県在住、21歳。 大学で保育のお勉強をしています。 小説はもちろん絵本も大好きなので、大人も楽しめるいろんな絵本を紹介していけたらいいなあと思っています。 好きな作品:『プリズン・トリック(遠藤武文さん)』『リップスティック(野島伸司さん)』『塩の街(有川浩さん)』 カフェ巡りや絵を描いたり、空を眺めたりしている時間と、パンとオムライスが大好きです。
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