夜空を照らす、唯一無二の星。青山七恵 文/刀根里衣 絵『わたし、お月さま』

みなさま、こんにちは!コメダワラと申します。

あんなに暑かった夏もいつの間にか過ぎ去り、秋も深まってきましたね。冷たい空気と気が付けば星たちが顔を出している空を見上げれば、冬がすぐそこに来ていることを実感します。

今日は、寝る前に布団で身体をあたためながら、あるいは温かいコーヒーをお供に星を眺めながら読むのにぴったりな絵本をご紹介させて頂きたいと思います。

”わたし、お月さま”

この絵本は『わたし、お月さま』という表題のように、まんまる満月が自慢のお月さま目線で語られていきます。

ところでみなさんは、三日月や半月、上弦の月や下弦の月など・・・月の形によって名前が異なることは知っていますか?

また、十五夜にはお月見団子を食べながら月を眺めたり、日本では月にはウサギがいてお餅をついてる、なんてお話もありますよね。これも国によって月の模様も見え方が違っていて、いろんな種類があるそうです。

こんな風にお月さまってずっとずうっと昔から変わらずそこにあって、様々な国に住む多くの人たちから親しまれているけれど、お月さまからこの世界はどんな風に見えているのでしょうか。

こんな疑問に、お月さまはこのように答えてくれていました。

でもときどき、ちょっとさびしい。「地球ってきれいね」ってわたしが言っても、「うん、きれいだね」って、だあれも答えてくれないから。

そんなひとりぼっちの寂しさを抱えたお月さまがこんなときに考えるのは、ずっと前に訪ねに来てくれた一人の宇宙飛行士さんでした。

宇宙飛行士さんと、チョコレートドーナッツ

宇宙飛行士さんはお月さまに綺麗な旗をたてて、面白い地球のお話をたくさん聞かせてくれました。お月さまがなにより一番嬉しかったのは、チョコレートがたっぷりかかったつやつやのドーナッツをお土産に持ってきてくれたこと!

チョコレートがたっぷりかかったドーナッツは、どこか真新しい、たった今生まれたばかりの惑星のようにも見えます。もしかしたら宇宙飛行士さんもドーナッツが惑星に見えていたからお土産に選んだのかもしれませんね。お月さまと宇宙飛行士さんは、広くて壮大な宇宙の中に佇む大きくて青い地球を眺めて、こう言い合うのです。

「きれいね」

「きれいだね」

私たちが住む地球をぐるぐるぐるぐる何度まわっても忘れられないあの出会い。ときどき見える、銀色のロケットが宇宙に向かって飛んでいく姿を見て、お月さまはいいことを思いつきました。

あのロケットみたいに、私たちが住む地球を旅してみようって。あの宇宙飛行士さんに、ドーナッツのお礼を言いにいこう、って。お月さまは小さく小さくなって、地球に飛んでいきました。

忘れられた輝き

お月さまが地球にやってきたということは、夜空には唯一無二の月という大きな存在が無くなってしまったということです。

お月さまは、まんまるの黄色いボールになったり、ゆりかごを照らす陽の光になったりと、地球に存在する様々なものに七変化しながら冒険をしていました。しかし長い長い時間が経つにつれて、人々は夜空にあったお月さまという光を忘れてしまったのです。

そしてある日、夜の遊園地で電球の光としてベンチを照らしていたときのこと。ぽろぽろ涙をこぼす女の子と、その隣に座るおじいさんの会話が聞こえてきました。

「ねえおじいさん、お月さまはどこへ行ってしまったの?お月さま、わたしたちのこと忘れちゃったのかしら?」

おじいさんはそんな女の子に、持っていた袋の中からドーナッツを差し出します。そう、あの、チョコレートドーナッツ。そして、待ち望んだ宇宙飛行士さんとの再会でした。

月の明かりを望む女の子とおじいさんとのこの出会いは、お月さまにとって大きなものとなりました。

お月さまがお空にもどってくるのを、おじいさんは、いつまでも、ずっとずっと、まっているよ。

・・・果たして、お月さまは無事に元の場所へと帰ることはできたのでしょうか?

さいごに

ふと見上げればそこにある。雲に隠れていてもほんのり見える月明かりに、なんだか安心したり、励まされたりもする。でももし、そんな月が二度と見られなくなってしまったら・・・?

みなさんは想像したことがあるでしょうか。今あるビルや建物の明かりを全部消すと、星空がきれいにはっきりと見えるそうです。それなら、お月さまの光がなくなってしまったら、どうなってしまうのでしょう?そんなことあるはずないって分かってはいるけれど、なんだかあり得そうなお話に、時々ふと考えてしまうんです。

そんな私のとっておきは、ぷかぷか浮かぶドーナッツと宇宙飛行士さんがお月さまの上に寝転んで、ふたりで地球を眺めているシーン。壮大で、言葉ではなかなか表現できない、このワンシーンの息を呑むような美しさをどうかみなさんにも見て頂きたい気持ちでいっぱいです。このお気に入りの一場面をはじめとする、きらきらとしていながらも心が落ち着くような絵のタッチに、優しくて穏やかな言葉たちがまるで月明かりのように心をそっと照らしてくれるようで、思わずぽろりと涙を溢してしまいました。

”初めて月面着陸を達成したあの宇宙飛行士も、何かお月さまと会話したのかな?”

”あの黄色い風船はお月さまはもしかしたら冒険にやってきたお月さまかな?”

夜空を眺めながら、お月さまや星々に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

神奈川県在住、21歳。 大学で保育のお勉強をしています。 小説はもちろん絵本も大好きなので、大人も楽しめるいろんな絵本を紹介していけたらいいなあと思っています。 好きな作品:『プリズン・トリック(遠藤武文さん)』『リップスティック(野島伸司さん)』『塩の街(有川浩さん)』 カフェ巡りや絵を描いたり、空を眺めたりしている時間と、パンとオムライスが大好きです。