みなさま、こんにちは!コメダワラと申します。
この頃一気に寒くなり、「もうすぐ動物たちも冬眠の準備を始める頃かなあ」と考えていたらとっておきの小説に出会いました!
今日は、様々な動物たちが紡ぐ9つの物語が収録された、このあたたかい一冊をご紹介させて頂きます。

はじめに
この作品は、自分にとっての正しさを考えさせられる『たいそう立派なリス』をはじめとする、アメンボと少女のお話を描いた『アメンボリース』や人間になったサルのお母さんを追って「ふもとのまち」にやってきた子ザルのお話『ショートカット』など、表題作の『クマのあたりまえ』を始めとする動物たちを主人公とした9つの物語が収録された作品集となっています。
その中でも特に、鯉のクロエちゃんが「色はみんな同じように見えているわけじゃない」と教えてくれた『そらの青は』というお話と、表題作の『クマのあたりまえ』が大好きで、どちらを紹介しようかなとウンウン唸ってしまったのですが、今回は表題作の『クマのあたりまえ』について詳しくご紹介致します。
あらすじ
お話は、子グマが森を歩いていると死んだオスグマに出会うところから始まります。
背中を丸め、横たわって、瞼はあいているのに暗い目をしているオスグマは、生前に見かけたときの様子とはだいぶ違っていました。とても長生きのクマだったそうです。
初めて”死”を目の当たりにした子グマは、兄ちゃんグマに「ぼくも死ぬの」と尋ねました。
でもぼく、死にたくない。
そんな子グマに兄ちゃんグマは当たり前のようにうなずいて、こう言うのです。
そりゃそうだ。だれでも死にたくない。だから生きているんだ。
翌朝も死んだオスグマのことが頭から離れない子グマは、死なないものを探しに広い森へ出かけました。
木や美しい花さえも、季節や年月によっていずれ死を迎えることに気が付く子グマですが、それでも”死なないもの”があることを信じて広い森の中を歩いて行くと、崖の上の草っぱらに子グマと同じ大きさくらいの石を見つけたのです。
そこでその石に「石になるための心得」を伝授する子グマは、はたして”死なないもの”になれたのでしょうか・・・?
死んでるみたいに生きるんだったら、意味がないと思ったんだ。
皆さんは、何かになりたいって思ったことありませんか?
この子グマにとって、それが”石”だったのです。でも石になるためには
- じっとしていること
- 歌わない
- 動かない
- 蚊に刺されてもかゆくない
- お腹を鳴らさない(石はお腹も空かないのだ)
- 寝ない
- 痛くない
- 呟かない・・・
まだまだ必要なことが山ほどありました。それでも石の言うことを守ってきた子グマでしたが、2つだけ、守れなかったものがありました。
それは「誰にも会いたくないこと」と「泣かないこと」。
星が見えはじめても帰ってこない子グマを心配した兄ちゃんグマが、子グマを探しにやってきたのです。
ぼく、足をかきたくて、歌いたくて、おなかがすいて、ねむくて、にいちゃんに会いたかったんだ!
そして子グマは、石にこう伝えました。
死ぬのは今でもこわいけど、死んでるみたいに生きるんだったら、意味がないと思ったんだ。
最後に
「当たり前だと思ってることは当たり前じゃない」という言葉、よく聞きますよね。確かにそうだと思います。
でも日々を過ごしていると、どうしても”あたりまえ”が自然と自分の生活に馴染んでいて、それが当たり前とか当たり前じゃないとか考える機会が来ないと、その大切さに気付くことがなかなか出来ずにいました。
だから私は「素敵なあの子になりたい」とも思うし「ぷかぷか浮かぶ雲になりたい」とも思うんですけど、このお話を読んでから、きっと自分であることが一番最高なんだな、という新たな発見を得ることができたのです。このお話で言えば、子グマにとっては子グマであることによって得られる”あたりまえ”が幸せであることと同じように。
ところで、この記事を書きながらまたまたウンウン唸っているんですけど、生きていると言える石って、どんな石だと思いますか?子グマの最後の一言は、石の”あたりまえ”を伝授していた石にとっても衝撃的であると同時に、ある意味で残酷な言葉でもあったのではないかと考えてしまいます。石のみぞ知る。