皆様、はじめまして!
コメダワラ(@pantokome_)と申します。
本日よりわたほんさんで書評を書かせて頂くことになりました。どうぞよろしくお願い致します!
突然ですが皆さん、絵本は好きですか?
私は今まで絵本と聞くと”子どものための本”というイメージがあって、年を重ねるにつれて手に取る機会がなくなり、そして読むこと自体がなんだか恥ずかしいような気さえしていたのです。
しかし職業柄、絵本に親しむ機会が増えて、絵本は時に大人へのメッセージが含まれていたり、今だからこそ気付かされたりすることがいっぱいあることに気付き、絵本を読むことが大好きになりました。小説はもちろん、素敵な絵本たちも私なりに紹介していけたらいいなと思っています。
記念すべき最初の記事は、絵本の中でも一番お気に入りで大好きな作品である宮野聡子さんの『いちばんしあわせなおくりもの』をご紹介させていただきます。

あらすじ
”こりす”は、のんびり屋さんな”くまくん”のことが大好き。くまくんも、元気いっぱいのこりすのことがとっても大好きで、ふたりは陽が昇ってから沈むまで、いつも一緒にいました。
そんなある日、こりすは大好きなくまくんに何か「おくりもの」をしようと考えます。だけどなかなか上手くいかなくて・・・
くまくんが本当に喜ぶ「おくりもの」は、何だったのでしょうか。
まっすぐで純粋なふたりの言葉たち
絵のタッチから言葉ひとつひとつまで全てがあたたかく、そして優しいこのふたりの世界。本当にお互いがお互いのことを大好きで、大切で、何よりもかけがえのない存在だと思っていることが言葉の節々からひしひしと伝わってきます。
お散歩中に言ったこりすの「ねえ、だいすきなくまくんに、なにか おくりものをしたいな。くまくんがほしいものって、なあに?」という言葉をきっかけにふたりのおくりもの探しが始まります。
素敵な自転車や、おひさま色の毛糸で編んだあたたかいセーター、色とりどりの遊園地・・・いろんな「おくりもの」を考えるこりすですが、どれもくまくんが一番喜ぶ「おくりもの」にはなりません。そしてくまくんもまた、何も欲しがらないのです。そんな中、ふたりは野原に咲くお花畑に寝転び、こりすは聞きました。
ねえ、このはな ぜーんぶ あつめて、はなたばを おくりものにしたら、くまくんは うれしい?
この問いかけに、くまくんは優しく微笑みながら、答えます。
うん。うれしいよ。でも みて。ぼくたち、まるで いっしょに はなたばの なかに いるみたいだよ。
私はこの場面を読んだとき、こりすのまっすぐな思いに加えてくまくんのこの一言と、花を集めて花束にするこりすを見つめるくまくんのあまりにも優しい眼差しに、思わず大号泣してしまいました。花束をもらうことも嬉しいけれど、ふたりで共有しているこの景色が嬉しいのだという思いが、この一言にぎゅっと詰まっているのです。
なにをしたら、しあわせなの?
くまくんに喜んでもらえそうな「おくりもの」がもう何も思い浮かばないこりすはすっかり落ち込み、思わず叫びました。
ねぇ、くまくんに しあわせな きもちに なってもらいたいんだ!どうすれば、きみは うれしくなるの?なにを したら、しあわせなの?
くまくんを思うが故のこりすの悲痛な問い掛けに、胸がぎゅっと締め付けられます。
例えば、自転車にしてもおひさま色の毛糸で編んだセーターにしても、こりすがくまくんに「プレゼントだよ」と渡せば、くまくんは喜んで受け取るでしょう。サプライズ性だって無くなってしまうにも関わらず、なぜこりすは、一つひとつくまくんに「おくりもの」が嬉しいかどうか聞いたのでしょうか?
もし「くまくんは喜ぶだろう」という思いで渡してしまったとしたら、それはこりすが目指す”くまくんが一番幸せになる「おくりもの」”ではなく、こりすにとって自己満足の「おくりもの」になってしまうからなのではないかな、と私は考えました。
何より、「なにをしたら、しあわせなの?」という一文は私自身にとっても、なにが私にとっての幸せなのかを問いかけるきっかけになりました。
何かを頂いたり、どこかに出掛けたり、あるいはふと見上げた空の眩しさだったり、幸せだと思う瞬間っていっぱいあるけれど、きっとそのこと自体よりも、誰かの中に自分が存在していて大切に思われていることだったり、場所や思い出、いろんな気持ちを共有することが、私にとっての幸せなのではないかと、ハッとさせられたのです。そして、こんなふうに思いや言葉をストレートにぶつけられるこりすに対して、羨ましさもちょっぴり感じてしまいました。
疲れた心を溶かす一冊
絵本の良いところって、絵が描かれているので読みやすく自分の中に入ってきやすいという点と、幼かった頃の自分に返ったような気持ちにさせてくれるという点だと思っています。
この作品は、そんな絵本の特徴を思う存分に発揮し、あたたかくて優しい色合いで描かれたイラストと言葉たちが相まって、もみくちゃにされた心をじんわりと溶かしてくれます。
さらに身体の大きさも性格も正反対なふたりが寄り添いあいながら、お互いが大切で大好きなんだという気持ちをまっすぐにそのままぶつけている姿に、思わず涙してしまうほど胸を打たれました。こんなふうに、絵本一冊からいろんなことを感じ取ったり、学んだり、気が付かされたりするのって、年を重ねていろんなことを経験した今だからこその楽しみ方なのではないでしょうか。
さて、くまくんにとって一番幸せな「おくりもの」は何だったのか。最後まで包み込むようなくまくんの言葉を、ぜひ、皆様にも読んで頂きたいです。