世界史の5つのパワー 齋藤孝 著 『ざっくり! 世界史』

こんにちは。ミズエ(@osoranokanatahe)です。

今週も、先週に引き続き、齋藤孝氏の「ざっくり!」シリーズの中から『ざっくり!世界史』をご紹介します。

5つのパワー

世界史に興味はあるけれど、

・覚えなければいけないことが膨大にありそう
・範囲が広いから途中で挫折しそう
・何から手を付ければよいかわからない

そう感じる人は多いのではないでしょうか。

この本は、そういったよくある教科書的な本とは異なる世界史の本なのでご安心を。

齋藤氏は、大人に必要な世界史は、細々とした知識ではないと主張しています。

必要なのは、歴史を突き動かす「5つのパワー」を押さえること。

その「5つのパワー」は、人間の感情によって生み出されます。

齋藤氏は、「5つのパワー」を下記のように分類しています。

・モダニズム(Modernism)
・帝国主義(Imperialism)
・欲望(Desire)
・モンスター(Monsters)
・宗教(Religions)

よく書店で目にする世界史の本は、古代史から緻密に構成されているものが多いですが、この本では、上記の5つのパワーとは何かを中心に歴史を考察していきます。

今回は、この中から、齋藤氏の着眼点の一つ、モダニズムについてご紹介します。

近代化というプレッシャー

私たちは日々暮らしている中で、いろいろな形で圧力というものを感じています。

とりわけ、アメリカやヨーロッパの圧力はうっとうしいほどです。

私たちは日本国内に暮らしているはずなのに、毎日のニュースはアメリカがどうした、EUがどうした、そして国内の政治や経済がその影響をうけた…というようなことばかりです。

 

第1章の冒頭で、齋藤氏はこう述べています。

齋藤氏が述べる「圧力」。わからないでもないですね。

特にアメリカは安全保障上でも日本にとって重要な存在です。

齋藤氏は、この圧力を感じるのがなぜかを考えるときのキーワードとして、

「モダニズム」すなわち「西洋的な近代化」を挙げています。

ここで言う近代化とは、資本主義化、産業化などのイメージです。

その圧力とは何に由来するのか。

それは近代化の歴史が物語っています。

近代化の源泉 古代ギリシャ・ローマ

 

世界各地に大きな影響を与えた「近代化」という荒波、その源流は古代ローマで生まれ、中世で長い休みを取った後、ルネサンス、宗教改革を経て、怒涛となって世界を襲っていきます。

 

近代化はヨーロッパで生まれました。

その源泉は古代ギリシャ・ローマ。地中海文明がヨーロッパの原点となります。

齋藤氏曰く、地中海文明の特長は「加速せずにはいられない」というものです。

例として、古代ローマ帝国の繁栄と拡大を挙げています。

古代ローマ帝国は、地中海全域を支配し、最盛期はイギリスにまでその力は及んでいました。

まさに、加速的に拡大したと言えるでしょう。

ローマ帝国の最大領土

出典 世界史の窓

 

中世、ルネッサンス、そして宗教改革

 

5世紀後半の西ローマ帝国の滅亡から15世紀までの約1000年間。

その期間を中世と呼びます。

キリスト教、カトリック教会が支配する時代です。

一旦近代化のエネルギーは影をひそめます。
齋藤氏曰く、近代化が「仮死状態」となります。

その後、転換期となる文化運動がお起こります。それがルネサンスです。

「人間は美しい。人間って素晴らしい」こうした意識が再び目を覚まし、神に対して人間が勝っていく時代、聖俗の間にあった不等号が逆転していく転換点がルネサンスです。

 

下はボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』(1486年頃)という絵画です。

明るく豊かな色彩、躍動感もあります。いかにもルネサンス期の絵画です。

出典 ウィキペディア ルネサンス期のイタリア絵画

宗教改革とプロテスタント

 

なぜ、近代化はルネッサンス以降、急激に広まったのか。

その謎を解くカギは「宗教改革」にあるといいます。

歴史の教科書にマルティン・ルターという人の名前が出てきましたね。

当時、カトリック教会は贖宥状(しょくゆうじょう)という免罪符を販売することで、つまり人々を献金させることで、罪がゆるされるとし、その販売は濫用ともいえる状況になっていました。要するに、免罪符の販売で教会が儲けていたわけです。

それを批判したのがルターです。

ルターはカトリック教会から破門されても、批判を貫き、キリスト教の新教(プロテスタント)を成立させます。

そのプロテスタントの中でも、特にカルヴァン派と言われる流派は、カトリック以上に禁欲を貫きました。

プロテスタントと資本主義の関係

 

特に、オランダ、イギリス、アメリカなど、カルヴァン派のプロテスタントの影響が強い国で、資本主義が発達しました。

なぜなら、プロテスタントはその厳格さゆえ、世俗の職業は神が各人に与えたミッション(使命)であり、労働することが「神の栄光が増す」ことにつながると考えたからです。

仕事は「ベルーフ(Beruf / 天職)」と呼ばれ、一生懸命に働くことが神への奉仕になるとされていました。

しかも、プロテスタントは禁欲を旨として、消費にお金を使うことを嫌います。

貯めても消費に使えないお金の使い道はただ一つ。

仕事の拡大のために貯まったお金を使います。

現代で言う「投資」です

これが資本主義誕生の母体となりました。

プロテスタントと資本主義は相性が良かったと言えると思います。

齋藤氏は、「良くも悪くも、今の世界は資本主義がリードしている」と指摘します。

それがわかっていても、いまだに資本主義が加速させた近代化を受け入れることができない国がたくさんあります。

彼らが受け入れられないのは、資本主義のシステムというよりも、資本主義を支えてきた真面目で勤勉で、合理主義的な(モダン)マインドです。

 

確かに、プロテスタント流の仕事の仕方は、ゆるさの対局にあります。

日本人の仕事の仕方とは共通点があると思いますが、プロテスタントのそれと国民性や文化の違う国が、プロテスタント流の仕事の仕方をしないと資本主義の波に乗れないと感じる場合、それはなかなかの圧力になるに違いないと思います。

おわりに

冒頭で引用した齋藤氏の感じる圧力は、おおまかにいうと、古代ギリシャローマ時代におけるローマ帝国の加速的な拡大、そして、宗教改革を経て登場したプロテスタントの禁欲的な仕事姿勢などに由来するものだと思います。

本書では、今回の記事よりも、詳しくより豊富な例を使って説明されています。

個人的に非常に楽しんで読むことができました。

歴史入門者の第一歩として、最適な本です。

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北海道在住。2児の母。濫読、雑食の活字中毒。よく読むジャンル:小説、ビジネス、エッセイ、歴史、新書。好きな小説家:平野啓一郎、村上春樹、宮部みゆき作品(敬称略)読者の皆様の本との一期一会のお力になれますように。
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