女性の性と愛を描いた衝撃作。村山由佳 著『ミルク・アンド・ハニー』

こんにちは、ノンノです。

今回の書評に選んだ作品は…村山由佳さんのミルク・アンド・ハニー。

本作の書評をすーちゃんが6月に書き、その書評は未だに「週刊書評ランキング」にランクインし続けています。

すーちゃんの書評があまりにも人気であるが故に、本作の書評を書くことを躊躇していたのです…が、どうしても自分の言葉で残したいという気持ちの方が強くなり、今回書評を書くことにしました。

この書評を書くにあたって、かなりのエネルギーを使いました。
苦しい、でも吐き出したい。でも苦しい。そんな気持ちになりながら書評を記しています。

女性が持つ性愛への欲求、強い性欲を持っているが故の葛藤、大人の女性が恋愛をする目的…
さまざまな事を再度、考えるきっかけになった本書をご紹介します。

衝撃作「ダブル・ファンタジー」の続編

本作は、2008年に週刊文春で連載が始まった衝撃作「ダブル・ファンタジー」の続編。

女性の性愛にとことん向き合った前作に対し、賛否両論の意見が寄せられており、村山由佳氏は文春オンラインのインタビューにて

女性のモラルという意味合いにおいて、本当にいろんな言われ方をしました。

本当に旧態依然としたモラル観で後ろ指さす人もいましたし、自分の身の回りのことをこんなに、周囲の人間には反論の機会がないのに書いてしまうのはどうなのよって言う人もいました。

引用元 http://bunshun.jp/articles/-/8109

と語っています。

約10年前ということもあり、現在よりもさらに風当たりが厳しかったようです。

わたしが前作を読んだのは確か20代の時。大きな衝撃を受けたことを覚えています。

そして30代になり、さまざまな恋愛を経験し、来週には入籍をします。

そんな今、「ミルク・アンド・ハニー」を読んでみると、年齢を重ねたからなのか、恋愛経験を積んだからなのか、前作を読んだ時とはまた違った意味での衝撃を受けました。

女性の性と愛

ともに暮らすひとの健やかな寝息を聞くたび底知れない寂しさに襲われる毎日と、いったいどう折り合いをつければいいのだろうー
夜ごと、自分もまた寝返りを打って彼に背を向けながら、音のないため息をつく毎日と。

冒頭からこの言葉で一気に作品に引き込まれました。

これは、まさにわたし自身が数年前に抱えていた悩みそのもので、どうして同じことを主人公の奈津が言っているのだろう…と、一瞬眩暈がしたほど。

好きな人と抱き合えない苦しみ

わたしが以前、一緒に暮らしていた人とはある時を境にセックスレスになってしまいました。

彼に性欲がなかったわけではなく、自己処理をした形跡を見つけては、どうしてわたしを相手にしてくれないんだろう…とモヤモヤ悩む日が続きました。

あまりにも、辛くて悲しくて、泣きながら「抱いてほしい」と頼んだこともあるけれど、「そんなことを言われると、余計にやる気なくす」と言われ、絶望的な気持ちになったことを今でも覚えています。

そして、やがて満たされない身体と心を満たしてくれる人たちと関係をもつようになりました。

1週間のうち、5日に渡って違う人と寝たときは、わたしは一体何をやってるんだろう…と落ち込んだことを覚えています。

「わたしの中に奈津がいる」

これは、すーちゃんの書評の中にある言葉です。

本作を読んで、わたしも全く同じことを感じました。

※以下、ネタバレの要素も含みます。

 

 

一緒に暮らしていて、お互い想い合っているはずなのに、抱き合うことのない苦しみ。

その不満を解消すべく、他の男と寝るしかないという選択。

もう気持ちは冷めたはずなのに、別れたあとに止まらない涙。

他人に見守られながら、セックスをしたいという欲求。

不倫関係が盛り上がっていくときの激しさと、あまりにもあっけなく終わる時の虚しさ。

これらの全てを経験し、やがてたどり着く相手。

 

ミルク・アンド・ハニーで描かれている奈津と男たちとの関係は、まさにこれまでのわたし自身が経験してきたこと。

あまりにも、奈津の気持ちや状況が分かり過ぎて、辛くて苦しくて、泣きながら読む結果となりました。

自分や関係をもった相手を肯定する奈津の気持ちも痛いほど分かるし、出てくる男たちがあまりにもダメすぎて、読みながらイライラしっぱなしだったのは、過去の自分と重なり過ぎるから。

前作を経て、本作にたどり着いた奈津とわたし自身に、

「お互い、色々あったけど落ち着いてよかったね。人生捨てたもんじゃないよね。」

と、読了後静かに呼びかけていました。

女性が自分に正直に、自分の力で生きていくこと

奈津は脚本家として、自分と「ヒモ」の夫を養うだけの稼ぎがあり、それ故にダメな男たちにひっかかってしまうのだけど、一緒に生きていく相手が誰であれ、自分ひとりで生きられる力を持っているのは素晴らしいと感じました。

だからこそ、自分の想いに自由に生きられる。

すべての人がそう生きるのは難しいけれど、そして、それが必ずしも良いこととは限らないけれど、奈津の弱さと共に強さが伝わってくる作品でもありました。

性に対してオープンであったり、自立してひとりで生きていける部分だったり、非常に現代的な女性の生き方を書き綴っている作品だと感じます。

おわりに

村山ワールドに、溺れる覚悟があるならぜひ読んでみてください。

賛否両論あるだろうけれど、大人の恋愛関係の本質は本書にすべて含まれているとわたしは思います。

心して、読むべし。

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ちなみに…結構荒れた恋愛をしてきたわたしですが、今ではすべての相性がぴったりな男性と出会えて幸せに過ごしていますので、ご安心くださいね。

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

東京在住、35歳フリーのライター。 20歳の頃からうつ病・睡眠障害に悩まされる。 一度、寛解したものの30代で再発。 現在は会社を退職、フリーライターとして活躍中。 自らの経験をもとに【精神疾患・生きづらさ】を抱える人へ、少しでも生きやすくなる情報を発信している。 お問い合わせ・執筆依頼はTwitterのDMよりお願いします。