”乙女のカリスマ”が綴る究極の恋愛小説。嶽本野ばら 著『ミシン』

はじめまして。
8月からわたしの本棚で書評を書かせて頂くのんのと申します。
最初の書評、どの本について書こうか悩み、わたしの人生に大きく影響を与えた作品をご紹介させて頂くことにしました。

わたしがこの作品と出会ったのは、高校生の時。
学校の図書館の本棚で、美しい背表紙を見つけ思わず手に取りました。

余りにも美しく、破滅的な世界観に魅了され、本を購入。引っ越しをする度に、この作品だけは必ず持っていき時々読みふけっています。

”乙女のカリスマ”嶽本野ばら氏

”乙女のカリスマ”として多くの少女たちの支持を受けている嶽本野ばらさんをご存知でしょうか?
2004年に映画化された”下妻物語”の原作を書いた方で、ロリータ文化に精通しており、自身もロリータファッションを身に纏う、その世界ではとても有名な作家さんです。

今回ご紹介する作品は、嶽本野ばらさんのデビュー小説である『ミシン』です。

『ミシン』には表題作の『ミシン』と『世界の終わりという名の雑貨店』の2作が収録されていますが、今回は『ミシン』をご紹介します。

created by Rinker
¥473 (2019/09/17 19:40:49時点 Amazon調べ-詳細)

”乙女”として生きる主人公とミシン

乙女とは何ぞや、乙女心とは如何なるものかなんて野暮なことはお訊き下さいなさいましね。私自身にもよく、解らないのです。只、それは今の時流に合わぬものであることだけは確かです。マイノリティ、異端の存在と美意識であることだけは間違いありません。

”チビでデブでブス”な主人公は”乙女”として生きる少女で、男性に対して嫌悪感を抱いており、”エス(いわゆるレズビアン)”の関係を結ぶことに憧れています。憧れてはいるものの”チビでデブでブス”なので、素敵な人に出会えてもそういう関係を結ぶことは難しいであろうと諦めていました。

しかし、高校生になりテレビに出ているパンクバンド死怒靡瀉酢(シドヴィシャス)の女性ボーカルであるミシンの姿を見て恋に落ちます。

ミシンは清楚で整った顔立ちなのにも関わらず、髪を立ち上げ、黒いリップを塗り、はすっぱなイメージを作り上げているパンクな女の子です。そのギャップがウケてテレビでも取り上げられる程人気があります。

人気者のミシンに恋した主人公は、どうしたら”エス”の関係になれるか考え抜いた結果、強く強くミシンのことを思い、更には毎日神社に参拝をして『私とミシンが一日も早く強く強く結ばれますように。エスの関係になれますように』と唱え続ける日々を重ねます。

MILKのお洋服の描写が素晴らしい

「貴方、私と全部、お揃いね。素敵!」

日々の強い思いと、ご利益があったのか、ある日主人公とミシンは遂に出会います。

そのきっかけになったのは、ミシンが身にまとうファッションブランドMILKのお洋服。主人公もMILKのお洋服に魅了され、おこずかいを握りしめては原宿のMILKへ通います。
ある日、死怒靡瀉酢のライブ後に出待ちをしていたところ、主人公がミシンの目にとまり声をかけられるのです。

強く思い続けて、毎日参拝をしているとミシンと近づけると思った主人公は、その後も参拝の回数を増やし思い続け、ミシンとの距離は近づいていきます。

嶽本野ばらさんの作品では、お洋服の描写がとても細かく描かれていることが多いです。

白いシャツの上に、衿が白いレースで作られたダークグレイのジャケットを羽織り、そのジャケットと併せられるように作られたミニ丈の、やはり裾にレースがあしらわれているスカートを纏い、黒いロゴ入りのハイソックスに黒と白のコンビになったクラシックな形のサンダルを履きました。勿論、全部、MILKです。

この様に、細かに描かれているだけでなく、ブランドやデザイナーに対する敬意も感じます。
これは、著者自身がファッションに強いこだわりをもっているからなのですが、こういった描写が人気の理由のひとつでもあります。

高校時代に、この本を読んだわたしもMILKってどんなブランドなのだろうと調べました。そして横浜の大学に進学した時、原宿のMILKへ行き主人公同様、興奮のあまりパンクしそうになったのを今も覚えています。笑

MILK(ミルク)公式サイト

(とっても可愛いブランドなので気になる方はMILKのサイト覗いてみてくださいね♡)

少女たちによる美しい恋物語

「今の時代って、本当に嫌ね、ヒステリックで刹那的で。」

主人公とミシンの恋物語、美しい文体とMILKのお洋服の描写、そして少女たちの狂気。
短い作品なのですが、とても濃厚で美しく、胸がしめつけられます。

決して現代的でもなければ、リアルでもない。きっと生きづらいであろう少女たちの物語。
好きなものを好きだと言う勇気、好きなものに対して真摯に向き合っていれば他人の罵声なんて気にならないという強さ。

わたしは”チビでデブでブス”な主人公が誰よりも素敵な最高の乙女だと感じています。

強く、したたかに、美しく生きるために。
良かったらこの本を手に取ってみてください。一緒に収録されている『世界の終わりという名の雑貨店』も同じく素晴らしい作品です。

created by Rinker
¥473 (2019/09/17 19:40:49時点 Amazon調べ-詳細)

ABOUTこの記事をかいた人

東京在住、33歳フリーのライター。 20歳の頃からうつ病・睡眠障害に悩まされる。 一度、寛解したものの30代で再発。 現在は会社を退職、フリーライターとして活躍中。 自らの経験をもとに【精神疾患・生きづらさ】を抱える人へ、少しでも生きやすくなる情報を発信している。 お問い合わせ・執筆依頼はTwitterのDMよりお願いします。
合わせて読みたいおすすめの1冊

1 個のコメント