【特集/人生に影響を与えた3冊】この本を読んだから私は私になった のい

こんにちは、のいです。少し秋らしくなってきましたね!秋はおいしい食べ物が多い季節なので楽しみです。

今日は特集に参加し、人生に影響を与えた本についての記事を書きます。他の皆さまの記事はこちら。 今まで何回も考えたことのあるこのテーマ、書評を書くようになる前から自分でリストまで作ってたんですが、いざ書き出してみるとムズカシイ・・・。

何しろ「人生」ですから。

書きながら「人生か・・・わたしの人生って何なんだろう・・・」と考え込んでドツボにハマりそうになりながら、なんとか書いてみました。

ごちゃごちゃした私のKindle

「人生に影響を与えた」の意味を再定義する

 

本の紹介に入る前にまずはここから始めようと思います。

当初、私は「最近の私」に影響を与えた本について書こうとして、二十代になってから読んだ本の中から、結構重めの作品を選択してました。だけどそこで大きな疑問が生じました

今の私、そんなにその本に影響されてるか・・・?

私、その本は好きです。それは間違い無いです。しかしそれはそれとして、(ここで書評を毎週書かせてもらっているのにあるまじき事態ではありますが)現在の私の生活や思考は周りの人や音楽など、別のものからの影響の方が強いのです。自分なりに頑張って毎日を生きていく中で、毎日練習している音楽は一番そばにあり、周りの人の言葉には即効性があります。

しかし本には、読んだその瞬間は一体その本が自分にとって何になるのかなかなかわからないものが多いのです。乱読で読書の記録などもほぼつけないため、読んだか、読んでないかすら忘れてしまい同じ本を何冊か買ってしまったりします。しかし、じゃあ無駄に本を読んでいるのかというとそれもまた違い、記憶というのは面白くて、どんな本でも読めばちゃんと脳の片隅に残っているようです。

私は時々、小学校の先生をやるのですが、初めて自分のクラスの子供達の前に立って緊張して頭の中が真っ白になった瞬間、頭の中に「二十四の瞳」という言葉が突然フラッシュバックしました。その小説を読んだことすら忘れていたのに、じっとこっちを見て私が何かいうのをちゃんと待っている子供達を見た瞬間に、主人公が子供達の出席をとる小説の出だしが思い出され、「そうだ、出席取らなきゃ」と慌てて名簿を出しました。

一回読めば、本はちゃんと頭の本棚に入り、必要な時には出てきてくれると思います。

たとえそれが無意識下でも。だから「本は人を作る」と言ったりするんだと思います。

というわけで今日は、私が日常でも非日常でもよく頭の本棚から引っぱり出す、自分に「必要な」本を三冊紹介したいと思います。どれも中学生の頃に読んだ作品です。あの頃が一番、頭やわらかかったのかな〜。

タフにならなくちゃ生きていけない 村上春樹 著 『海辺のカフカ』

今回、この作品だけは手元になく、再読が叶わないまま記憶を頼りに書評を書いてます。(電子書籍が発売されていないのです、売ってー!)再読しないまま書くってちょいと不誠実ですが、だからと言ってこの作品に触れないわけにいかん!と思って書くので、ちょっと怪しかったらごめんね。あとで直します。

村上春樹についてちょっとだけ

『海辺のカフカ』は私が一番最初に読んだ村上春樹作品です。そして村上春樹が好きになった作品でもあります。「海辺のカフカ」を始めファンタジー的なものから「アンダーグラウンド」のようなノンフィクションまで作品ジャンルが多岐に渡る作家ですが、どの作品でも彼のカラーが出るのはさすがだと思います。

あまりに話題に上がりやすい作家なので語るのが難しいですが、私は自分が10代で村上春樹の作品に出会えたことはとてもラッキーなことだったと思います。今これだけ話題になると、村上春樹の話をした時に皆それぞれに作品外のイメージを持っていることが多く、バイアスをかけずに話をすることが難しくなっているのを感じます。もし自分が今現在の状況で村上春樹の本を初めて読んだとしたら、素直にその作品を好きだと思えていたのかわかりません。

何の予備知識もない、十五歳で「海辺のカフカ」を読んで自然に「好きだな」と思えた事は私にとってはすごく幸せなことでした。

『海辺のカフカ』

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「君はこれから世界でいちばんタフな少年にならなくちゃいけないんだ。なにがあろうとさ。そうする以外に君がこの世界を生きのびていく道はないんだからね」

「海辺のカフカ」は、十五歳のカフカ少年が家出をし四国に一人で行く物語と、ナカタさんというおじいさんが旅をする物語が交差して成り立ちます。

私はこの物語の幻想的なパートと日常がしっかりと繋がっているところも、過去と現在が互いに影響しあっているところも大好きですが、何より一番影響を受けたのは、当時同い年だったカフカの独立心の強さです。物語の中ではカフカは必要に迫られてタフになっていくわけですが、一人で色々なことに立ち向かう姿にとてもインスパイアされました。

『海辺のカフカ』ビジュアル

「海辺のカフカ」舞台の画像https://www.cinra.net/news/gallery/68170

私は今でもしょっちゅうメソメソしそうになりますが、その度に「タフにならなくちゃ」と心の中でこの作品のことを思い出します。そうするたびに少しだけ強くなって踏ん張れる気がしています。ちなみに『海辺のカフカ』は蜷川幸雄演出、柳楽優弥主演で舞台化しており、当時観に行きました。大変素晴らしかったです。

なぜなら時間とは生きることそのものだからです ミヒャエル・エンデ 著 『モモ』

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二つ目の作品は、ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデの作品『モモ』にしました。エンデといえば『はてしない物語』もあり、こちらも映画化されたりとても人気がある素敵な作品ですね。(単行本版の装丁も超良い)

『モモ』もティーンの頃に読んだ作品ですが、とても大切な作品です。大人になればなるほど、その良さが心に沁みます。何故ならこの作品は「時間」についての小説であり、忙しくなればなるほど、メッセージが痛切に響くからです。

この物語は、円形劇場に住み着く不思議な孤児の女の子モモが、人々から「時間」を盗もうとする灰色の男たちに立ち向かう物語です。灰色の男たちは人々に「時間を節約することは時間を大切にすることだ」といい、どんどん時間を盗んで行きます。人々に残された時間は少なくなっていくのに、皆それに気づかず、効率化された人生を送ろうとします。

時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気がついていないようでした。

〜中略〜

けれど時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。

生きることの本質を考える

今回、ここに書くために小説をざっと読み直しましたが、あまりにもストレートに痛いところを突いてくるので「ウッ」となりました。灰色の男たちが言うことはいつもそれらしく、正義の言葉のようにすら聞こえます。本屋に売られる本にも、知り合いの言葉にも、ネットにも、そして自分の中にさえ私たちはいつも灰色の男たちの言葉を見つけます。「時間を節約し、お金を稼ぎ、成功すること。他のことは全部後からついてくるよ。」そう、わたしはまさにそんな風に思って日々を過ごしているのです。とにかく生活を成り立たせること。どうにかして一人前になること。でもそこに自分自身が意味を見出せず、周囲の人に思いやりを持てなかったらそれは意味がなくなってしまうのです。

忙しい時ほどこの小説のことを思い出したいです。わたしにとっての人生の本質をいつも教えてくれるように思います。「時間がない」と思う方にも是非。

日本発、壮大なファンタジーの第二作目 上橋菜穂子 著 『闇の守り人』

三冊目もやはり10代で読んだ、上橋菜穂子の「守り人」シリーズからの一冊にしました。NHKでドラマ化もされた作品です。作者の上橋菜穂子は文化人類学者でアボリジニの研究をしつつ、小説も書く作家です。2014年には国際的な賞、アンデルセン賞も受賞されました。彼女の作品は守り人シリーズだけではなく、「獣の奏者」「鹿の王」どれも大好きなんですが、今回は最初に触れた上橋作品にしました。

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主人公は女用心棒のバルサ。子供の頃に故郷カンバルを追われ、用心棒として身を立ててきたものの、この作品でバルサはカンバルに戻ります。しかしそこでは様々な思惑を含んだ陰謀が企てられており、彼女はそこに巻き込まれて行きます。

なぜか第二作目をはじめに読んだ私ですが、特に違和感は感じませんでした。作りこまれた世界観と魅力的なキャラクターに夢中になってあっという間に読んでしまったのをよく覚えています。よく言われる「日本ではファンタジーは受けない」という定説をひっくり返した作品なのではないかと思います。私は「指輪物語」も大好きなんですが、優れたファンタジー小説というのは異世界のことを語っているようでありながら、現実世界の真実を語っているように思います。

地に足がついていること

上橋作品の魅力の一つとして、完全な異世界とキャラクターを描いているのにどこか身近に感じられる、というのがあると思います。大人になってから気づいたのですが、それはきっと上橋さんがフィールドワークを実際に行い、様々な場所に足を運んでいる研究者としての視点を持っているからではないかと思います。

守り人シリーズには「かつて先住民がいた国に、侵略者がやってくる。しかし現在は先住民と侵略者が緩やかな交流を続け共生している」という歴史を持った国が登場します。子供の頃、私はこれがとても不思議でした。「なぜ、こんな複雑な歴史を持った国を描くのだろうか。それよりは先住民と侵略者が敵対し、戦いを描いた本の方がずっと単純化されていて面白いんじゃないだろうか」とずっと思っていました。

謎が解けたのはずっと後に大人になってからのことです。上橋さんは、ご自分がオーストラリアで経験した、アボリジニと白人移民の関係を本の中で書いたのでした。ステレオタイプとは違うかもしれないけれど、経験に基づいた現実を描くことでファンタジーでありながら、地に足がついた世界観が書けるんだろうなと思いました。そして、思い込みにおもねない上橋さんの書き方はとても誠実だとも思い、憧れました。

『闇の守り人』

守り人シリーズはどの作品もそれぞれ素晴らしく大好きなのですが、この『闇の守り人』はシリーズの中でも最もエモーショナルなものではないかと思います。腕が立つ女用心棒のバルサが久々に故郷に戻り、そこで自分の過去と向き合っていくのですが、リアリストでありながら心優しいバルサと、彼女の育ての親であるジグロが対峙するシーンは、守り人シリーズの中でも屈指の名シーンだと思います。

私は上橋菜穂子の作品を「ファンタジー」と一言でまとめることにはなんとなく抵抗を感じてしまいます。異世界を舞台にした作品でも、誠実な視点を元に描かれている物語は異質なものではないからです。

終わりに

やれやれ、この記事を書くのにものすごいエネルギーを使いました。大好きな作品について書くのは体力がいりますね。でも書けてよかったです。ちなみに、候補作を三つに絞るのは本当に大変で、遠藤周作の「沈黙」は最後までどうにか入れられないか考えていました。これも私の生き方に大きく影響した作品だと思うので、いつか書きたいです。

書評を書きながら、自分が10代のころ読んだ作品なのによく内容を覚えていることにびっくりしました。最近読んだものはあっという間に忘れちゃうのに。やっぱりあの頃の吸収力ってすごかったんだなと思います。というわけで、今10代の方がいたら、もう、ジャンル問わずにひたすら目に入ったものをどんどん読んでほしいと思います。きっとそうやって読んだ本がいつか財産になるから。

そして今はもう10代でない私も、もっと本を読んでいこうと改めて思いました。いつかその本が自分の一部になる日がくるのを信じてたくさん読みたいです。

ABOUTこの記事をかいた人

埼玉県出身、東京- NYを経て、今はミシガン州立大学で音楽学部の博士課程に在籍中。 専攻はピアノ。 よく読むジャンル→ミステリー、ファンタジー、エッセイ、恋愛もの、歴史物、伝記、ノンフィクション、児童書 アメリカ中西部でピアノを弾いたり音楽について学んだり書いたり教えたりしています。 本を読んで現実逃避して寒さに耐えています。