こんにちは。すーちゃん(@suexxsf)です。
今日から12月ですね。2018年も今月で終わり。
信じられないくらい最近は、1日のスピードが速く、付いていけていないわたしです…(笑)
目次
「音楽小説」を読む
先週、かれこれ3年弱 通っている楽器教室主催の、発表会に出ました。
初のソロでの参加だったのですが、とても良い経験になりました。これはぜひ、次回もソロで出たい。
いつも発表会が終わったら脱力モードなのですが、そうこうしてもいられない。
以前も書評の中で書いた気がしますが、楽器の練習意欲を高めるためには、音楽小説を読むことにしています。
わたしの中で、本と自分の繋がりが深いので、行動に働きかけたいときは、この方法が良い気がしています。
洋菓子屋さんの小説を読めば、お菓子作りの意欲が高まりますし、美術小説を読めば、美術館を巡り始める。
単純です、そんな感じです。
大人気シリーズ「岬洋介シリーズ」第一作
音楽小説、と自分の中で認識したのは、今回ご紹介する、中山七里 著『さよならドビュッシー』が初めてでした。
久しぶりに読み返しました。
隣にあるのは、懐かしき教則本・ハノンにそっくりなノート。
第8回“このミステリーがすごい!”大賞受賞作で、映画化・ドラマ化ともにされた大人気作品。
そしてシリーズ化されていて、「岬洋介シリーズ」として知られています。
映画版予告
著者・中山七里さん
まず著者の中山さんは岐阜県出身だそうで、隣県の愛知県在住のわたしは親近感です。
そしてこの作品の舞台は名古屋市なので、今回、わたし自身が名古屋市に引っ越してきてから読むと、舞台がより一層近いものに感じられて嬉しかったです。
特に遥の家は、わたしの家から結構近いみたいですし…!
また中山さんご本人は音楽に関しては素人で、楽器も演奏できないそうです。(Wikipediaより)
しかしここまで、作中の演奏の描写や岬先生のレッスン内容から察するに、相当考えられたのだと思います。
エレクトーン教師の奥様のお力でしょうか…?
何はともあれ、この作品は、音楽小説としても、ミステリー小説としても秀逸ということが、一番の推しポイントなのです。
音楽小説として
あらすじ
ピアニスト志望で、特待生として音楽科への推薦入学が決まっている遥は、従姉妹のルシアと一緒にピアノの練習に明け暮れる毎日。
そんな折、家族が外出し、家に遥とルシア、そして資産家である祖父の3人だけが残った日の夜。
祖父の部屋から出火。離れは全焼してしまう。
ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。
それでもピアニストへの道を目指し、偶然知り合った岬洋介という若きピアニストが、先生役を買って出てくれることに。
先生と二人三脚で目指すは、中部地区最大のピアノコンクール。
それと同時に、資産家の祖父が亡くなったことで、遺産相続争いに巻き込まれる。
巨額の遺産が絡み始め、周りで不穏な空気も漂い始める…というお話。
ピアニストを目指して
全身大火傷の状態だった少女が、すぐにピアノの練習を再開できるわけがない。
最初はリハビリ、とてつもなくキツい日々を乗り越え、ようやっと同級生から遅れて高校に入学できても、心ない言葉に苦しめられます。
大怪我のあと、再びピアニストへの道を目指すとき、岬先生は、こう語ります。
「ピアニストになるということは、ただピアノを弾いていて楽しいなんてことじゃない。(中略)ピアノ弾きは譜面通りにただ鍵盤を叩くだけ。しかしピアニストは作曲家の精神を受け継ぎ、演奏に自らの生命を吹き込む」
「辛くても苦しくても身体が痛くても、一旦ステージに上がればそれを理由に演奏を中断することは許されない。それでも君はまだピアニストを目指すのかい?」
コンクールに向けて
そして、コンクールに挑戦するか迷っているときの、岬先生の言葉も好きです。
「(前略)自分の実力を確かめるだけの目的でコンクールに出ようと思った時点でもう敗退している。明確な目標を設定することは励みではなく自分を追い込むことだ。それにコンクールというのは度胸試しの場所じゃない。れっきとした戦場だ」
そのあとの、コンクールまでの2人のレッスンの熱量がすごい。気迫に満ちた描写が続きます。
地の文で、
情熱というよりは執念。執念というよりは狂気。
と書かれていましたが、読者としても同じような感想を抱きました。
音楽という武器で闘うということ
趣味で楽器を習っているだけのわたしには、2人のような感覚はわかりません。
しかし、通っている楽器教室の先生方や、わたほんライターの のいさんのような方々は、こういった闘いを経て、今があるんだろうな…と勝手に想像しました。
地の文で書かれていた、
表現方法というのは、その人の闘い方だ。
という部分も好きです。
「音楽」という武器で闘う、音楽家の方々の覚悟を、ひしひしと感じました。
ミステリー小説として
あらすじの部分にも登場したように、巨額な遺産争いから、命を狙われ始めます。
さらには殺人事件も発生し始める…
誰が自分を狙っているのか、家族の中に犯人はいるのか。
疑心暗鬼になりそうなところを助けてくれるのは、岬先生。
音楽小説の部分に惹き込まれていたら、いつの間にかミステリーの部分に騙されていた…
やられた、と思うような小説です!
さいごに
先日の発表会で、ソロでサックスを吹いたとき、めちゃくちゃ緊張しました。
反省点ありまくりだし、ミスもいっぱいでした。
それでも、観客が自分だけを見てくれていて、最後の拍手を独り占めできるのは快感かもしれない…と冷静になって思いました。
わかっているのは、今日のように全力を出しきって一曲弾き終えた時の達成感、そして聴衆から拍手を浴びた時の恍惚感だ。一度覚えたら病みつきになる感覚。それはきっと聴衆の数に比例する。
上記の引用部分も、本作の地の文で登場します。
この部分については、レベルは違うにせよ、楽器を手にして音楽に触れる者として同じ感覚かもしれない、となんだか嬉しくなりました。
このあとは、『おやすみラフマニノフ』を読みます。
そして、これからはクラシック音楽にも少しずつ触れてみたいな、と思いました。