不遇の画家・ゴッホの、葛藤の日々。原田マハ 著『たゆたえども沈まず』

こんにちは!すーちゃん(@suexxsf)です。

本日は、2018年の本屋大賞の第4位の作品、原田マハ 著『たゆたえども沈まず』を推したいと思います。
※ 長いです。

美術館巡り、という趣味

先週、名古屋市美術館で開催されていた、ビュールレ・コレクションに駆けこんできました。

スイスの実業家・ビュールレ氏は生涯を通じて、絵画収集に情熱を注いだコレクターだそうです。
特に、印象派の作品は傑作が揃っていて、世界中から注目されていたとのこと。

美術館を巡るきっかけ

わたしがこうやって美術館に通うようになったのは、以前書評を書いた『楽園のカンヴァス』がきっかけです。(→書評)

『楽園のカンヴァス』を通じて、画家の生涯や、画家自身の人間性を、小説という形でも触れることで、少しずつ興味を持ち始めました。
そのあとで、小説に登場した絵画を見たときの感動といったら、言葉になりませんでした。

ゴッホの人気

ビュールレ・コレクションを見て、改めて印象派の良さに気づいたのですが、その中でもゴッホが1番好きです。

日本人にとって、ゴッホは人気ですよね。
有名なのは、やはり「ひまわり」でしょうか。

最近、美術館の売店でポストカードを集めることがマイブーム。
たまに友人に送ることもあります。

この『たゆたえども沈まず』は、フィンセント・ファン・ゴッホとその弟・テオドルス(通称・テオ)、そして日本人画商・林 忠正と加納重吉(通称・シゲ)との交流の物語です。

この作品を読んでから、ゴッホにドはまりしたという話は、『ゴッホのあしあと』の講演会のレポートにも書きました。笑

【イベント特集】6/22 原田マハさん特別講座レポ IN東京

重複する部分はありますが、久しぶりに読み返した本作の書評を書いていきたいと思います。

『たゆたえども沈まず』について

本作もマハさんの得意技である美術小説で、史実とフィクションを掛け合わせた物語です。
淡々と、しかし、じっくり丁寧に描かれている印象です。

日本人画商とゴッホ兄弟の出会い

作品の中で、日本人画商2人との出会いが、フィンセントとテオ兄弟に大きな影響を与えています。
しかし、これもフィクションで、どの文献にも彼らが出会った形跡はない。

林が寄稿した雑誌『パリ・イリュストレ』の表紙となった「雲龍打掛の花魁」の絵を、フィンセントがその向きで模写していた(本物は左右逆だが、当時の印刷技術では左右反転してしまうらしい)ことから、少なくともフィンセント側は、林のことを知っていたのではないか、というのがマハさんの見解です。

ゴッホの模写。「花魁」

不遇の画家・ゴッホ

フィンセントの絵は、生前1枚しか売れなかったと言います。
当時少しずつ認められ始めた印象派として括られますが、ほとんど独学の彼の絵は、人々に認められるには、早すぎたのだと思います。

フィンセントの描く絵は、激しい感情に彩られている。絵の具が叫び、涙し、歌っている。あんなふうに絵の具そのものに情緒が込められている絵が、いままでにあっただろうか。
画布の上でのたうち回る絵の具は、フィンセントがまったく新しい表現を勝ち得た芸術家であるという明らかな証拠なのだ。
フィンセント・ファン・ゴッホ。――ぞっとするほど、すごい画家だ。

兄の絵は、どうすれば世に認められるのか。テオは苦悩します。
そんなときに、林は伝えた言葉が、黄色い帯に書かれた言葉です。

「フィンセントは、あなたよりもはるかに強い。だから、あなたはもっと強くならなければ、兄さんを支えることなど到底できはしない。ほんとうに、あなたが兄さんを世界に認めさせたいのなら――強くなってください

この作品を読みたびに思うことは、ピークへの持っていき方が上手いということです。

表紙にも使われている「星月夜」。
いつかMoMAで実物を見たいです。

久しぶりに読み返しても、表紙にもある「星月夜」完成シーンは、やはり涙が止まりませんでした。

浮世絵がもたらしたもの

明治維新後、開国した日本の浮世絵がパリで人気を博しました。
そのときに一躍を買ったのが、林だったそうです。

その浮世絵が、印象派の画家たちに影響を与えたこと。
日本人として、光栄に思います。

「日本の美術は、新しい芸術家たちに……フィンセント・ファン・ゴッホに、光明を投げかけたのだから。――私は、そのことを誇りに思います」

日本人のゴッホ好きは、ここから繋がっているのかもしれませんね。

おわりに

昨年は秋に、映画「ゴッホ~最期の手紙~」を観に行き、冬にはゴッホ展にも行きました。

彼の死後から約130年経った今、彼が憧れ続けた日本の地で、それ以上に世界中で、彼の絵画が愛されているということ。

それが本当に嬉しく、胸がいっぱいになりました。

「芸術」を小説で表現することの可能性

最近、音楽小説を読むことが多く、音楽を小説で表すことに大きな可能性を感じています。
それと同じで、絵画を小説で表現することも、新たな可能性に満ちていると思えました。

最後に、ゴッホと一時期 共同生活を送っていた、ゴーギャンをモデルにした『月と六ペンス』の書評(byのい)も掲載しておきます。

「ゴーギャンの椅子」

才能って結局何なのか? サマセット・モーム 著『月と六ペンス』

ゴッホ愛が重い書評にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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ABOUTこの記事をかいた人

1992年、愛媛県西条市生まれ/新居浜市育ち。愛知県名古屋市在住。 『わたしの本棚』ライター。 好きな本のジャンルはミステリー。読書歴は約10年。 辻村深月、東野圭吾、森絵都、恩田陸、原田マハ、村山由佳作品をよく読みます。(敬称略) 辻村深月作品が特に好きで、情報収集や考察が日課。また、作品の舞台になった街へ赴く、聖地巡礼も楽しい。 読書の他に、旅行、アルトサックス、お菓子作りも好き。