もし、あなたの大切な人が脳死になったとしたら。東野圭吾 著『人魚の眠る家』

3連休も終わりですね。
相変わらず、本ばかり読んでいました。すーちゃん(@suexxsf)です。

いつか書きたいと思い続けていた書評を、本日はお届けします。
4年越しの書評。東野圭吾 著『人魚の眠る家』です。


この作品は、脳死と臓器提供が大きなテーマだと思っています。
正直ヘビーだし、なかなか考える機会もないような事柄でしょう。

 

東野作品の社会派小説

中学時代から東野作品を読み始めましたが、まだ著作の半分も読めていないことに、たびたび絶望します。
バラエティーに富んだ彼の作品群の中で、わたしが数年前から興味を持っているのは社会派小説です。

特に『虚ろな十字架』や本作は、とにかく衝撃的でした。
ある意味、問題作を世間に突き付けてくるのです。
それがたとえフィクションの形をしていても、「他人事じゃない。自分ならどうするのか?」を考えさせられます。

『人魚の眠る家』映画化

皆さんご存知のとおり、東野作品は映像化されることが非常に多いです。
あと2か月後には本作も映画化されるそうで、こんな重いテーマをどう表現するのか、今からとても楽しみです。→特設サイト

 

本作への思いと、卒業論文

特に本作への思い入れが強い理由は、わたし自身、同じテーマを、大学の卒業論文で取り上げたからです。

(恥ずかしながら、卒論タイトルです)

臓器移植に興味を持ったきっかけ

卒業論文で臓器移植法(現在の改正臓器移植法)を取り上げたきっかけは、本当に些細なことでした。

大学3年の終わりに車の免許を取り、保険証のほかに身分証明書が増えたわたしは、免許証の裏にある「臓器提供意思表示欄」が気になりました。

保護シールもあるし、わたしはその場で書きましたが(既往歴として手術経験があるので、心臓だけは×しています。迷惑かけそうだし)、これを書いていない方が非常に多いと、あとで知りました。

卒業論文自体は、先行研究をまとめただけの拙い論文でしたが、それなりに文献・論文も読みました。
だからこそ、2015年秋、本作を読んだときは驚くあまり、運命じゃないかとさえ思いました…
それと同時に、1年前に読みたかった…!

論文と物語

今回、久しぶりに読み返し、4年前の記憶を辿っていました。
あぁ、こういう捉え方や考え方もあったのか、と思うのと同時に、やはり東野圭吾はすごいと思わざるを得ませんでした。

小学校に入学前の娘・瑞穂が、プールで溺れてしまう。病院に駆けつけたときには間に合わず、医師は「おそらく脳死」だという。
一度は脳死を受け入れたものの、彼女の温もりを感じ、このまま瑞穂と暮らすことを決意する。
脳死状態の娘に最新の科学技術を取り入れ、生かしていく。
これは親のエゴなのか、愛なのか。狂気なのか…

という作品なのですが、物語になると人々の気持ちも、ひしひし伝わってきます。
やはり論文を読んでいた頃とは違う、現実として受け入れることができるか?など、様々なことを考えます。

臓器移植法の問題点

しかし、卒業論文で問題点として挙げたところは、物語の中でも疑問に思うことがありました。

  • そもそも、「おそらく脳死」と考えられる時点ではまだ脳死とは確定しておらず、それが確定するのは臓器提供に承諾したあとの脳死判定のみ。
    逆に臓器提供に承諾しない場合は、心臓死をもって死とする。
    という非常にわかりづらいルールとなっている。
  • 今回、本作では、脳死状態となった瑞穂は、まだ6歳。
    2009年に改正された臓器移植法では、本人の意思が不明の場合は家族の承諾があればよい、と変更された。
    これにより、小さな子供からの臓器提供も可能となったわけだが、子供が脳死状態で悲しみに暮れている親は、まともな判断ができるとは思えない。

論文を書いていた頃の危惧は、まさしく当たっていました。
本当に、難しい問題だと思います。

「うちの家にいる娘は、患者でしょうか。それとも死体なのでしょうか」

娘は患者なのか、死体なのか。苦悩する親たちを見ているのはつらいです。
それでも娘を守るために狂い、戦える母親ってすごい。

「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供のために狂えるのは母親だけなの」

ラストまで、しっかりと見届けてほしいです。

おわりに

卒論の続きみたいに語ってしまいました。

別にわたしは、臓器提供に積極的にOK出していこうと言いたいわけではありません。
ただ、いつか来るかもしれないときに備えて、自分の意思は示しておくほうがいいのでは?と思っています。

その意思が「臓器提供しません」でも、それで良いと思います。
播磨夫妻のように残された家族に判断仰ぐのは、さすがに酷だと思っているので…
書けるときに書いておくのが1番じゃないかな。

大切な人がいる、すべての人に読んでほしい一冊です。

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ABOUTこの記事をかいた人

1992年、愛媛県生まれ。愛知県在住。『わたしの本棚』ライター。 好きな本のジャンルはミステリー。読書歴は約10年。辻村深月、東野圭吾、森絵都、恩田陸、原田マハ、村山由佳作品をよく読みます。(敬称略) 辻村深月作品が特に好きで、情報収集や考察が日課。また、作品の舞台になった街へ赴く、聖地巡礼も楽しい。 今まで読んだ本で1番好きなのは、辻村深月 著『子どもたちは夜と遊ぶ』。何度も読み返してるのは、同じく辻村深月 著『スロウハイツの神様』。初めて読んだ高校時代から現在も、わたしに影響を与え続ける、大切な作品たち。 読書の他に、アルトサックス、お菓子作りも好き。