「正しい女の姿」ってなに?千早 茜 著『正しい女たち』

はじめに

千早 茜さんの『正しい女たち』を読みました。

唐突ですが、「正しさ」って何だと思いますか?

これ、と決めたものが浮かぶ人もいるでしょう。
常識とか社会規範とか、漠然としたものを何となく思い浮かべた人もいるはずです。

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本作の帯にもあるように、本作では、セックスや結婚、プライド、老い、そして離婚…といった、他人から聞きたいけど聞けない関心事が詰まっています。

「ねぇ、あなたも気になっていたでしょう?」と問いかけられているような、そんな短編集。

千早作品との出会い

千早 茜さんの作品で最初に手に取ったのは、昨年3月に文庫化された『男ともだち』という作品でした。

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手に取ったきっかけは、解説が村山由佳さんだったこともあるのですが、それ以上に、作品にのめり込みました。
『男ともだち』はとにかく大好きなので、いつか書評も書きたいと思っています。

『男ともだち』をきっかけに、当時住んでいた家の近所にあった図書館で、千早作品を片っ端から読み始めました。
いつの間にか新刊を追いかけ始め、今は好きな作家さんのひとりです。

「正しい女」の姿

本作はタイトルに「女」と付くだけあって、これは女性特有の価値観かもしれない、と思うものもあります。
(特有というと語弊がありそうですが、男性同士の友情ではこういう関係にはならなさそう、という勝手なイメージです)

温室の友情

これは最初の短編です。

高校時代、いつも一緒にいた4人組。
高校の近くに古びた温室を見つけ、そこでおしゃべりするのが好きだった。
主人公・遼子は高校、大学を卒業し就職しても、4人でいたときの親友・恵奈とはずっと連絡を取っていた。
そんな中、久しぶりに4人で集まろうとしたとき、嫉妬が見え隠れする…

遼子と恵奈は、お互いのことをとてもよく知っていた。

ずっとずっと一緒だから、恵奈の仕草も喋り方もよく知っている。服もメイクも、ぜんぶ。わたしは簡単に恵奈になれる。恵奈の気持ちだって誰より知っている。だって、親友なのだから。

ある意味、傲慢に思えるような気持ちがあったから、そのあとの出来事に繋がってしまったのかな…とさえ思いました。

その後の、

女の友情はもろいから、ちょっとした環境の違いでひびが入るから、こうやって同じように進んでいくのが一番正しい道。そうしなきゃ、一人ぼっちになってしまうから。

この部分がすべてを物語っているような気がしました。
そして、短編のタイトルに使われた「温室」という言葉が、まさにこの友情そのものを表しています。

のめり込みすぎてしまう「友情」の形

ここまでのめり込んでしまう「友情」の形は、今までに経験はないですが、やりかねないと思ったことはあります。
わたしも、「この人なら」と思った人には、男女問わず尽くす傾向にあります。
自分なら救える、なんて、「こっちに進んでほしい」という自分のエゴのような気がします…

「温室の友情」の中のラストシーン、遼子は恵奈のためにこれが正しい、と思う行動に出ます。
そのあと、自分を客観視したときの描写が秀逸です。

他の短編

他にも5つの短編が掲載されています。
母親が営むスナックにやってきた“先生”から、娘が勉強を教わる「海辺の先生」と、離婚間近の夫婦の日常を描いた「幸福な離婚」が、とても好みでした。

わたしには経験はないですが、女性の年齢や若さについて、上から目線で物を言う男性っていますよね。
「若いのなんて今のうちだから」なんて言ってくるような男性に出会ったら、「描かれた若さ」を読ませてやりたいです。

他人の「正しい姿」を垣間見ることができる、ある意味誘惑されるような作品でした。

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ABOUTこの記事をかいた人

1992年、愛媛県西条市生まれ/新居浜市育ち。愛知県名古屋市在住。 『わたしの本棚』ライター。 好きな本のジャンルはミステリー。読書歴は約10年。 辻村深月、東野圭吾、森絵都、恩田陸、原田マハ、村山由佳作品をよく読みます。(敬称略) 辻村深月作品が特に好きで、情報収集や考察が日課。また、作品の舞台になった街へ赴く、聖地巡礼も楽しい。 読書の他に、旅行、アルトサックス、お菓子作りも好き。