ぶつかり合うから、音楽は輝く。感動の吹奏楽小説!額賀 澪 著『風に恋う』

以前、額賀 澪さんの『屋上のウインドノーツ』の書評でも書きましたが、ここ2年半ほど、アルトサックスを習っています。すーちゃん(@suexxsf)です。

楽器を習う前は、小学生の頃にピアノを習った程度で、吹奏楽には全く縁がありませんでした。
しかし楽器を始めてからの自分への影響がさまざまあり、純粋に楽しんでいる今日この頃。
いくつになっても夢中になれる趣味があるって、幸せだと感じます。

今回、同じく額賀 澪さんの新作、『風に恋う』を読みました。久しぶりに、大好きな吹奏楽小説に出会いました。

まず、表紙の男の子が、アルトサックスを吹いているじゃないですか!
期待大…!とわくわくしながら、読み始めました。

特設サイト http://nukaga-mio.work/windgazer

 

『風に恋う』について

あらすじ

数年前に全日本吹奏楽コンクールで出場した、千間学院高校に進学した基(もとき)。
その頃の部長に憧れて吹奏楽を始めた基だったが、中学のコンクールで燃え尽き、高校では続けないと心に決めていた。

しかし、低迷してしまった千間学院高校に、全盛期の部長だった瑛太郎がやってくる。
吹奏楽を、サックスを始めるきっかけになった人に後押しされ、結局高校でも吹奏楽を続けることになった基。

1年生の基が部長に指名されたことから始まる軋轢。部内の嫉妬。
受験勉強と部活の両立。そしてブラック部活問題…

全日本という夢の舞台を目指し、切磋琢磨する、高校生の物語。

青春なんて、簡単な言葉で片付けたくない物語

読みながら、中盤ですでに泣いていました。
大人は簡単に「青春だなぁ」なんて言うかもしれないけれど、そんな言葉では勿体ない。

こんなに高校生って一生懸命なのか。
こんなに真摯にいろんなものを考え、守っているのかと思うと、目頭が熱くなりました。

サックスへの想い

基も瑛太郎もサックス奏者なので、彼らが地の文で語るサックスへの想いに、嬉しくなりました。
最初に惹かれたのは、この部分。

サックスの姿は、植物のようだ。神様が精密に丁寧に、愛を込めて作ってくれた。折れ曲がった円すい管も、蔦のようにそれに絡みつく音を操るためのキーやレバーも、朝顔の花のように広がるベルも。すべてが完璧で、完成されていて、美しい。

サックスという楽器は、本当に美しいです。

(わたしの相棒。買った日に、ぬいぐるみに持たせてみました)

習い始めたときは、あのフォルムと音色に憧れていました。
今は、ケースから楽器を取り出すたび、楽器そのものに「今日もかっこいいね」と語りかけてしまうくらいです。惚れ込んでます。
本作を読み、改めて、サックスって格好いい楽器だと、心底思いました。

そういえば、アルトサックスを吹く人は、目立ちたがり屋なんですって。
こんなにかっこいい音が出る楽器、ソロが響く楽器。
目立ちたがって、何がいけないの?って感じです(笑)

 

名言:「コンクールは12分間の演奏会。(中略)コンクールだろうと、ステージに立つってことは演奏会を開いてるのと同じなんだ。ポイント稼ぎとか減点を避けるとかじゃなくて、審査員を含めた観客をどれだけ楽しませるかだ」

この名言、とても好きです。
これから、自分自身もこのことを忘れず、観客を楽しませられる音楽を追求したいと思いました。

本作を読みながら、登場する曲はYouTubeで検索して聴くという楽しみ方ができました。
「風を見つめる者」も聴いてみたいですね。

 

さいごに

この書評を公開する前の土曜日、久しぶりにサックスのレッスンに行ってきました。
11月の発表会の合奏曲が決定。なんと「宝島」!吹いてみたかった曲です。

本作の冒頭は、「宝島」の合奏の話から始まったので、勝手に親近感を感じました。
発表会の練習はこれからですが、本作のことを思い出しながら頑張ります!

「人生の最後に、今日のことを思い出したい」

そう思えるような演奏が、いつかできるようになりたい。

 

ABOUTこの記事をかいた人

1992年、愛媛県生まれ。愛知県在住。『わたしの本棚』ライター。 好きな本のジャンルはミステリー。読書歴は約10年。辻村深月、東野圭吾、森絵都、恩田陸、原田マハ、村山由佳作品をよく読みます。(敬称略) 辻村深月作品が特に好きで、情報収集や考察が日課。また、作品の舞台になった街へ赴く、聖地巡礼も楽しい。 今まで読んだ本で1番好きなのは、辻村深月 著『子どもたちは夜と遊ぶ』。何度も読み返してるのは、同じく辻村深月 著『スロウハイツの神様』。初めて読んだ高校時代から現在も、わたしに影響を与え続ける、大切な作品たち。 読書の他に、アルトサックス、お菓子作りも好き。