存在しないはずの、禁断の黄色いアサガオを巡る謎。東野圭吾 著『夢幻花』

はじめに

数年前に一気読みした、東野圭吾 著『夢幻花 (PHP文芸文庫)』(むげんばな)を再読した。
2013年度の柴田錬三郎賞を受賞した本作。


「黄色いアサガオだけは追いかけるな」という帯が、パッと目を引く。

著者が何年もかけて書き上げた本作。
雑誌に連載していた当時とは、中身もガラッと変わったそう。
後半になるにつれ、重みを増していき、ラストは毎回しびれる。

是非多くの方に読んでいただきたく、書評を書き始める。

特設サイト https://www.php.co.jp/mugenbana/

 

本作のあらすじと魅力

あらすじ

本作の冒頭は、花を愛でて暮らしていた老人・秋山周治が殺害されたところから始まる。秋山が最後に咲かせた黄色の謎の花を巡り、物語は進んでいく。
第一発見者である孫娘・梨乃は謎の花の写真をネットにアップするが、蒲生要介という男から、その写真は消したほうがいいと忠告される。ひょんなことから梨乃は、要介の弟・蒼太と知り合いになり、2人で事件解明に乗り出す。また、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを持って事件に立ち向かっていた。
それぞれの立場から見る、殺人事件。

本作の魅力

複雑に絡み合った人間模様。
読み進めるときは、特設サイトの人物相関図を見ながらの方が良いかもしれない。
しかし、それも、それぞれが完結し、見事に伏線を回収していく。

毎回、さすが東野圭吾だと思うし、読んでいて清々しく、気持ちいい。
また、本作は、物語が突き進むペースが速く、読者は圧倒されるだろう。

本作の鍵となるもの

黄色いアサガオ

秋山の殺人事件の前に、梨乃の従兄・尚人の死もあり、いくつもの謎が絡み合う。
その鍵となるのが、「黄色いアサガオ」。これは自然界には存在しないものである。

それを突き止めるうちに、あるアサガオ愛好家が、梨乃と蒼太にこんなことを教えてくれた。

「どんな花を咲かせてもいいが、黄色いアサガオだけは追いかけるな。
あれは夢幻花だからだ。追い求めると身を滅ぼす」

また、冒頭の秋山の殺人事件で事情聴取を受けた梨乃は、

「たぶん、事件の真相を知っているのは花たちだと思います」

と、刑事に語る。
読み終え、まさにそうだったなぁと思った。

宿命を背負う者

黄色いアサガオを追いかけるうち、それが存在していた江戸時代からの変遷まで辿ることになる。そこで見えてきた真実。
最後に見えてくる、「負の遺産を背負う者」「才能を与えられた者」の宿命。

「それを放っておけば消えてなくなるものなら、そのままにしておけばいい。でも、そうならないのなら、誰かが引き受けなければならないでしょ?
(中略)逃げちゃいけないのよ」

負の遺産。それと向き合い、引き受ける覚悟に、心から拍手を送りたい。

「せっかく才能があるのに、それを無駄にしている。梨乃は水泳選手として生きていかなきゃいけない。才能を与えられた者の義務だ。それを重荷に思っているとしたら贅沢だ。
何の義務も与えられていないことがどれほど虚しいか」

才能を与えられた者は、それを続けることが義務。
才能に憧れ続けた従兄は、もがき苦しみ、この世から去った。

おわりに

どうしても、ぼかして書かなくてはならない部分が多かった。
予想もつかない展開が続く作品。

特設ページに書かれた、「東野ミステリの真骨頂」という言葉に偽りなし。
いつか、東京・入谷での朝顔市に出かけたいなぁ。