デートの呪いをぶちやぶれ!柚木麻子 著『デートクレンジング』

はじめに

気づけば25歳になっていた。わたしの周りでも、じわじわと結婚報告が聞こえてくる。
ウェディングドレスを着て幸せそうに微笑んでいる同級生の写真や、祝福されているコメントをSNSで見ることが、最近とても増えている。

まだ25歳、されど25歳。誰に何を言われるでもないが、少しずつ焦りに似た何かが浮かび上がる。
このままで良いの?30歳までに結婚できるの?そんな声が聞こえる、気がする。

柚木麻子 著『デートクレンジング』は、「結婚したいなら努力しないと」「時間を無駄にしちゃダメ」のような結婚に対する声や、わたしたちを焦らせる見えない時計に苦しんでいる女性に、とにかく勧めたい1冊。

デートクレンジング

デートの呪い

タイトルである「デートクレンジング」は、そのまま、主人公・佐知子の親友である実花が、マネージャーを務めていたアイドルグループの名前。

アメリカの造語で、「デートクレンズ」とは“女性はデートをしない時期を意識的に作ろう”いう意味だそう。
周りを見て焦り、好きでもない異性とデートに明け暮れるのではなく、デートとデートの間に一定期間を置き、きちんとクレンジングする。自分らしく生きたい女性への言葉
そんな彼女らが戦うのは、デートではなく、デートの呪い

従来の清純なイメージのアイドル業界に、一石を投じたいと奮闘していた実花。ある恋愛スキャンダルで、グループは解散となったが、メンバーは実花のおかげで、それぞれ自立し始めた。

女を焦らせる見えない時計

夫の実家である喫茶店「ミツ」で、義母の手伝いをする佐知子のもとにやってきた実花は、「婚活を始める」と宣言。

「結婚して、子どもを産んで、ちゃんとしたい。立派な社会の一員だって、認められたいの

読み始めて12ページ目に登場するこの言葉に、すべてが込められている気がして、痛くて苦しくなった。

アイドルグループのマネージャーをしていた頃の生き生きとした表情ではなく、不安や脆さから、何かに追われるように婚活を始めた実花。
応援する、と言った佐知子だが、佐知子自身が既婚者のため、うまく言葉が伝わらないこともしばしば起こる。

「ざっくり言うと、見えない差別に負けたくないってことだろ」

女同士のいざこざを相談したときの、佐知子の夫の回答が明瞭で納得。

結婚してようやっと認められるような、そんな世の中に対し、改めて疑問を持った。
世間から貼られたレッテルなんかに負けたくない。そんな呪縛からは解放されたい。自力でそれらを打ち破るしかない。

好きなことに打ち込むこと

本作を読み、自分が好きなものや譲れないものの存在を再認識し、それを大事にすることを、自分自身もこれからのテーマにしていきたいと思った。

感情に従って何かに心ゆくまでのめり込むことが、理不尽な世の中に対抗する唯一の手段なのだ。

なんだ。焦らなくていいんだ。もっと自分を大切にしていこう。

アイドルとは

実花と出会い、アイドルのライブに連れて行ってもらった佐知子の短大時代。
その頃の実花の、アイドルの定義が、心に残った。

応援したくなる魅力を持った人はみんなアイドルってことに、この国ではなってるよ」

「個人的には時間を止めることの出来る人は、アイドルだと思ってる」

アイドルって、そんな大層なものじゃないのかもしれない。
歌って踊ってるグループだけじゃなく、自分の憧れや応援したくなる周りの友達も、推しメンという認識もできる。
わたし自身も、応援したくなるような魅力を、もっと磨いていきたい。

余談ですが、先日、とある結婚相談所の入会案内を見る機会がありました。入会金や月額の費用の高さに驚きました…
婚活ってすごい世界だなと改めて感じました…

ABOUTこの記事をかいた人

1992年、愛媛県生まれ。愛知県在住。『わたしの本棚』ライター。 好きな本のジャンルはミステリー。読書歴は約10年。辻村深月、東野圭吾、森絵都、恩田陸、原田マハ、村山由佳作品をよく読みます。(敬称略) 辻村深月作品が特に好きで、情報収集や考察が日課。また、作品の舞台になった街へ赴く、聖地巡礼も楽しい。 今まで読んだ本で1番好きなのは、辻村深月 著『子どもたちは夜と遊ぶ』。何度も読み返してるのは、同じく辻村深月 著『スロウハイツの神様』。初めて読んだ高校時代から現在も、わたしに影響を与え続ける、大切な作品たち。 読書の他に、アルトサックス、お菓子作りも好き。