【5月企画/名言特集】普通の恋の短編集。石田衣良著『1ポンドの悲しみ』

5月企画の名言特集も、2回目の更新。もるさんから引き継ぎ、すーちゃんが書きます。
今回ピックアップしたのは、石田衣良 著『1ポンドの悲しみ (集英社文庫)』。

集英社文庫から3冊ほど出されている、恋愛短編小説の第2作目。
本作は、好きな人ができたときに読む本と決めている。

「わたしは誰かの幸せのために働くには、自分の幸せは犠牲にしなくちゃいけないのかなって、このまえの誕生日の夜、半分あきらめかけていた。そんなときに、こうやってチャンスがくるなんて」

【誰かのウエディング】という短編では、ウェディングプランナーが登場する。他人の幸せのために働き、自分自身はなかなか幸せになれない…
この短編を読んで、自分の幸せもやっぱり大事にしたいなと思う。

「これからまたつぎの4週間忘れないように、あなたの身体をひとつひとつ確かめて、記憶しているの」

表題作【1ポンドの悲しみ】は、遠距離恋愛カップルの逢瀬の物語。夜の情事のシーンでのこの言葉。
すぐに会いに行ける距離ではなく、次に会えるのは1ヶ月先。そんなことも思いながら、身体を記憶させているのは、読んでて泣きそうになる。
石田衣良氏の性描写は柔らかく、女性的なところに好感が持てる。

「この世界は、ぼくたちの悲しみが動かしているんだ。世界中の恋人たちの、強烈な悲しみや喜びや快楽が、ほんとうは世界をまわしているんじゃないか。(中略)今ここから見えるものが、すべて悲しいもの」

その遠距離恋愛カップルの、駅での別れのシーン。
どれだけ別れが悲しくても、目の前の新幹線は止められない。別れの切なさもグッと感じられる。

「そんなプレゼントを買うくらいで、おれがやる気をだして働く気になるなら、安いもんじゃないか。(中略)プレゼントは贈る側の楽しみだ」

【秋の終わりの二週間】という短編は、16歳差の夫婦が15歳差になる、その2週間の物語。
わたしも、プレゼント選びが好きなので、この短編の旦那さんの言葉はセンスあるなぁ。
プレゼントは贈る側の楽しみ、まさに。年齢差関係なく、素敵な旦那さんだなと、この短編を読むたびに思う。

曲がり角のむこうから突然やってくる、今という時代に身も心も縛られて、立ち尽くしてしまうのだ。でも、気づいたときから、また始めればいい。新しい年と新しい人は、きっとやってくるだろう。チャンスはいくらでもある。

【スターティング・オーバー】という短編に、相手が切れず、別れても次の相手がすぐ見つかる女性が登場する。その女性の1年間の男断ちの話なのだが、30歳にしてやっと自分を大切にし、恋愛というサイクルから逃れられた。
今までいくら転んでも、またやり直せる。人生って長いな、と勇気づけられた。

やさしいタッチで描かれる、それぞれの恋。一筋縄ではいかないところも、恋の良さ。
恋愛にそっと色を添えてくれるような1冊。
あなたのお気に入りの短編が見つかりますように。

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ABOUTこの記事をかいた人

1992年、愛媛県生まれ。愛知県在住。『わたしの本棚』ライター。 好きな本のジャンルはミステリー。読書歴は約10年。辻村深月、東野圭吾、森絵都、恩田陸、原田マハ、村山由佳作品をよく読みます。(敬称略) 辻村深月作品が特に好きで、情報収集や考察が日課。また、作品の舞台になった街へ赴く、聖地巡礼も楽しい。 今まで読んだ本で1番好きなのは、辻村深月 著『子どもたちは夜と遊ぶ』。何度も読み返してるのは、同じく辻村深月 著『スロウハイツの神様』。初めて読んだ高校時代から現在も、わたしに影響を与え続ける、大切な作品たち。 読書の他に、アルトサックス、お菓子作りも好き。