吹奏楽にかける青春の物語。額賀 澪 著『屋上のウインドノーツ』

額賀 澪 著屋上のウインドノーツ (文春文庫)を読んだ。

以前、図書館で借りて読んだ作品。文庫になったのを知り、購入。

わたしは、2年ほど前から、楽器教室でアルトサックスを習っている。
年2回発表会に出る機会もあり、楽しく習っているが、ずっとモチベーションを保てるわけではない。

そんなとき、わたしは音楽小説を読む
小説の題材によって、それが吹奏楽だったり、はたまたピアノのコンクールだったりと様々だが、登場人物が目標に向かって、一生懸命な姿を見ると、わたしも練習頑張らないと…!と思えるから。
本作もそうやって、わたしの力になってくれる作品である。

特設ページ http://books.bunshun.jp/articles/-/947

本作について

高校に入学し、自分の居場所を作れなかった志音(しおん)は、ある日、唯一の逃げ場だった屋上で、吹奏楽部部長の大志(たいし)と出会う。
そのとき志音は、エアドラムをしており、それを見た大志は、志音を吹奏楽部に勧誘する。

大志のホルンとの演奏を通し、合奏の楽しさを知った志音は入部を決意。
自分だけじゃなく、周りと合わせる大変さ楽器と向き合う楽しさ、難しさを知る。

「東日本大会」に向けて、日々練習に励む吹奏楽部。それらすべてが、青春そのものだと思った。

志音の成長

友達の後ろについてばかりだった中学時代

周りに上手く馴染めず、幼稚園時代から一緒の友達・瑠璃の後ろについてばかりだった志音。
瑠璃と一緒に私立の中学校に入学しても、やりたいことは見つからない。

「人生に何も期待していないように見える」と心配した母は、すでに離婚した相手である父と志音に、会う機会を持たせる。
父は、昔していたバンド活動を再開し、近々テレビにも出るんだ、と話す。
しかしそのあと、連絡が取れない状態になる。

あることがきっかけで、志音は父のドラムセットを引き取ることになる。
それを独学で練習していた矢先、高校の屋上で勧誘を受けることになった。

自分を変えたいという気持ち

志音は、入部するまでが1番悩んだと思うが、その中で大志とのセッションは、志音が前に踏み出すきっかけになったはずだ。

あの演奏は、間違いなくこの手から生まれたものだったはずだ。そう思ったら、体はちゃんと動いた。

入部後、パート練習ののち、全体練習になった際、うまく体が動かない志音。そんなときにフォローしてくれるのは、大志。
2人での演奏を思い出せば、前に進める。あのときの記憶は、志音の中で大きな力になっている。

「そうなりたいっていう願望が、その人の心の中にあるんだって。だから、練習してればいいって。楽器が助けてくれるから」

これは、志音の母の言葉。
練習していれば、楽器がその人の願望を、形にするのを手伝ってくれると聞き、わたしも練習に励まねば…!と改めて思う。

また、ある場面で、昔の同級生と会うシーンで、しっかりと受け答えしているのを見て、強くなったなぁと思う。

「今の給前志音は、数は少ないけれど友達はちゃんといるし。自分に胸を張れるものが、ちゃんとあると思います」

そして何より、志音の口からこの言葉が聞けたことが、とても嬉しい。

大志の成長

吹奏楽部部長として奔走する日々

中学時代の失敗を繰り返したくない、という思いで、部長として奔走する。
志音を勧誘したのは、パーカッションが弱いと考えたためだったが、それ以上に大志は一緒に演奏してみたいと思ったのだ。

もし部長の途中棄権が許されるなら、こそっと名乗り出たい。そう思っていたのに。今の自分は、何としてでもあの子を吹奏楽部に引き入れたくて、あの子と一緒に演奏してみたいとさえ思っている。

志音が入部したあとも、定期的に様子をうかがうような、フォローアップも欠かさない。気遣いができる部長である。

「楽器って、自分がどんな状態でも、息を吹き込んだり叩いたりすれば、絶対に音を出してくれる優しい奴らなんだから」

このことは忘れちゃいけないな、とわたし自身も思う。

過去との決別

大志の中で足かせとなっていた、中学時代の出来事。
それとも少しずつ決別していく。

「俺さ、今日、確かに、何かを踏み越えられたよ」
全部、大事だった。後悔も悲しみも、悔しさも。そしてこの気持ちに、何一つ、間違いなんてないんだ。

 

タイトルの「ウインドノーツ」は、風の音という意味。
これは、二人の出会いをも表した言葉。

青春ってイイ!吹奏楽って素敵、と思える爽やかな青春小説です!