傷ついてしまったあなたの本、修復します。村山早紀 著『ルリユール』

はじめに

突然ですが、質問です。
古くなった本をぼろぼろにしてしまったとき、綴じられているところから外れてしまったとき、あなたならどうしますか?セロハンテープで止めますか?

…答えはNO!それが図書館の本なら、そのままお戻しください。
セロハンテープで止めると、のちのち糊だけ残して、汚れが付いてしまうそうです。本の修復方法は、司書さんが知っているとのこと。

世界中の司書たちのあいだで共有され蓄積されてきた、修理の知恵と技術があるのだ。だから傷ついた本はそのまま返してくれればいい。

わたしも図書館で借りた本が、読んでいる途中に外れてしまったことがあります。
そのときは「セロハンテープで止めないで!」という、ヤフー知恵袋の回答の通りにしました。テープで止めず、抜けたページから外れないように輪ゴムで締めて、夜間ポストへ投函。

あのとき、教えてくれる方がいて、良かったと思います。

ルリユール (ポプラ文庫ピュアフル)

あらすじ

主人公・瑠璃はある夏、おばあちゃんが住む風早の街で過ごすことになった。その街で瑠璃は、ルリユール職人のクラウディアと出会う。
ルリユールとは、傷ついた本を修復し、よみがえらせる技のこと。そんな魔法のような技を持ったクラウディアに憧れ、弟子入りする瑠璃。
傷ついた本を修復することで、持ち主の心の傷も癒えていく、そんな物語。

ルリユールの技術

「どんな本を誰のために作るのか」

「まずは、どんな本を、誰のために作るのか、それを考えてね。それが本作りの第一歩、スタート地点なんだから」

「世界中の本は、すべからく誰かのために生まれてくるものです」

弟子入りした瑠璃に、まずクラウディアさんはこう伝えます。読み手がいてこその本だと、改めて実感しました。
クラウディアさんの工房・ルリユール黒猫工房にやってくるお客様の依頼を、一緒に受け、手伝うことで、瑠璃はものを作るひとの気持ちに気づきます。
それを魔法と表現する彼女は、素敵だなぁと思います。

ひとは生きている本

ある窮地に立ったときにクラウディアさんが言った「ひとは生きている本」という言葉が印象的でした。世界に1つしかない、1冊しかないという意味では、人間も本も一緒なのだと知りました。

「ひとの一生は物語のようなもの、アルバムはその生涯をまとめた絵本のようなものですからね。わたしにとっては本と同じです」

また、この部分もしっくり来ました。この言葉は、ある依頼人がアルバム制作をお願いしに、黒猫工房に来ていたときの一言。
自分の一生も物語のようなものなら、未来の自分が胸張れる生き方をしたいと、改めて思いました。

本の救世主

本作を読みながら、クラウディアさんを始めとするルリユール職人は、「本の救世主」なのでは、と考えました。

「ルリユールの技は、儚い命しか持たないはずの本を、読み手と共に生きていけるように作り直すための技術。そこに待つかも知れない、新しい読み手のもとまで届けるための技術なの」

クラウディアさんのこの言葉が、わたしはとても好きです。
本作の短編の中でも、ある図鑑を作り直す箇所があります。

確かに、本の寿命はとても短いです。すぐに日焼けしてしまうし、水に濡れるとすぐカピカピになります。破れたところにテープを貼れば、汚れてしまいます。
ある意味、長期保存には向いていないのかもしれません。
だからこそ、傷ついた本を修復し、新しく装幀し直すルリユールという仕事は、本の救世主のように思います。

ヨーロッパで生まれたというこの技術。
未来に価値ある本を残していくために、この先も廃れることなく伝承していってほしいです。

「大丈夫ですよ。このわたしクラウディアは、この世のすべての本を愛するひとと、愛されている本の味方です」

本好きのわたしが言いたいことはひとつ。
本を愛するすべてのひとに読んでいただきたい1冊です!