石田衣良著、『娼年』『逝年』『爽年』の、シリーズ3作品を読んだ。
目次
本作を手に取ったきっかけ
石田衣良作品は、特に恋愛短編小説が好きで数冊読んでいるが、この『娼年』シリーズは、なかなか手を伸ばせなかった。
多分、テーマが大胆で、自分に合うのか、タイミングを見計らっていたのだと思う。
そんな中での、『娼年』映画化。予告編を見たら、読まなくちゃと思った。
数分のこの予告で、主演の松坂桃李氏の演技力に驚いた。
正直、彼とベッドシーンがうまく結びつかないが、まず読んでみようと思い立ち、仕事帰りに書店で『娼年』を手に取った。
無気力な青年の成長とその魅力
人生にも恋にも無気力な20歳のリョウ。
彼のバイト先であるバーに来た、ボーイズクラブのオーナー・御堂静香に見初められ、“娼夫”になる。
顧客である女性と肌を合わせることで初めて知る、女性の欲望。
その欲望の正体を知りたい、と仕事にのめり込み、クラブのトップへと成長する…というあらすじ。
性描写のやわらかさ
わたしは官能小説も抵抗なく読むので、どんな描写が来てもひるまないと思っていた。
しかし本作の場合、性描写ももちろんあるが、メインは心の触れ合い。
誤解を恐れずに書くならば、とても女性的な描写。
ベッドシーンすら繊細かつ、瑞々しく感じられる。
わたしは、石田衣良作品の、こういうところが好き。
リョウの優しさと、その魅力
本作を読み、わたし自身も、リョウの虜になった。
聞き上手、友達想い。一途、勉強家。
そして何より、年上女性の良さに気づけるところに、好感が持てる。
女性にとってはコンプレックスになるような、ボディラインの崩れや、胸やお尻が下がっていることについても、「やさしい感覚」「なにかを許してくれそうな肌」と思えるところがとても良い。
例えるならば、愛しいに近いような気持ちは、会話や愛撫を通じて、相手にも伝わっているはず。
セックスを通して見えた、女性の欲望
そして、リョウは欲望を受け入れてくれる、ということが1番の魅力だと思う。
『娼年』を読むと、様々な欲望を抱く女性が現れる。
その女性と対話し、ゆっくりと受け入れる。読めば読むだけ、彼の優しさに気づく。
人の数ほど欲望はある。
この一言に、わたしはとても救われた。
肌に触れ、身体に触れ、心に触れ、相手の欲求に気づく。
そんな深い心のつながりの大切さを、本作を通して知ることができた。
『逝年』のラストでの静香さんの、
「生きているって、自分の身体をとおして誰かを感じて、なにかを分けあうってことなんだね」
という言葉が、この『娼年』シリーズの本質だと感じた。
『娼年』『逝年』、そしてその後の『爽年』
このシリーズは、先日4月5日に単行本で発売された『爽年』を持って、終幕となる。『
娼年』から7年、多くの女性を見届けてきたリョウも、自分自身の未来について考え始める。
「セックスってものすごく重大で、一生を左右するほど危険だから、そのご褒美に神さまが素晴らしい快感を贈ってくれたんです」
『娼年』から読んできたわたしは、『爽年』で見るリョウの成長ぶりに感動した。
彼を見つけて、スカウトしてくれた静香さんに勝手に感謝。
わたしの中で、『娼年』から続くこの3作品は、この先も大事に読みたいシリーズになりました。
早く映画も観に行かねば、と思っております!
この作品の読者は女性が多いと思うけど、男女問わず多くの方々に読んでほしいシリーズです!