働くって、たいへんだ。北川恵美 著 『ちょっと今から仕事やめてくる』

こんにちは、みき(@_miki972)です!

私はこの春から働きはじめた、いわゆる新社会人というやつなんですけれど、働くって本当に大変ですよね。

職場が東京にあるので、毎朝スーツ姿の大人の背中を見ながら、みんな本当に立派だなあ…と常々思います。

今回は、そんな働く大人をテーマにした一冊、北川恵海さん著の「ちょっと今から仕事やめてくる」をご紹介させて頂きます。

あらすじ

 

ブラック企業に勤める隆は、疲弊した意識の中、線路に飛び込もうとしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられる。

同級生を自称するヤマモトに対し、食事をしたり買い物をしたりと心を開き、何かと助けられる隆だが、本物の同級生は海外滞在中だということがわかる。

怪訝に思った隆は彼のことを調べ上げるが、でてきたのは三年前に激務で自殺した男のニュースだった…。

ぐるぐる回る毎日

 

六時に起床。同、四十六分発の電車に乗る。
八時三十五分、会社に到着。席に座ると同時にパソコンの電源を入れる。

十二時から一時間の昼休憩。
席を立ちあがったところで上司に声をかけられ、解放されたのは十二時十五分。
歩いて三分の安いラーメン屋には長蛇の列。
並ぶこと十五分。ようやく飯にありつける。

(中略)
十九時五十八分、やっと、上司が退勤。
もっと早く帰ってくれ。

二十一時十五分、ようやく退勤。
二十二時五十三分、帰宅。
二十五時零分、就寝。

以下、繰り返し×六日間。

辛い!!!!!!

修行ですか?

文章だけで伝わってくる主人公隆の憂鬱さや、抜け出せない繰り返しの日々の気怠さ。

鉛のような体と心。小説の最初のうちは隆の抱えるそういった心労が多く描かれているので、読んでいるうちに辛くなってきます。

北川先生の描写が妙にリアルで、それが逆に辛いです…。

新人のうちって、小さなミスでもびくびくしたり、わからないことがあったら逐一先輩に聞かなければいけないので、心身的に疲れやすいですよね。

主人公隆はただでさえ疲れやすい新人という立場に加え、かなり当たりのきつい上司に毎日怒鳴られ、疲弊した日々を送っています。

そんな時、終電近くの電車のホームで、隆はこう考えます。

このまま、この心穏やかなままで気を失ったら、ホームに落ちるんだろうか。

そうしたら明日、会社へ行かなくて済むかな――。

不思議な男、ヤマモト

 

線路に飛び込もうとした隆の腕を強く引き、ホームへと引っ張り上げた男は、満面の笑みでこう言います。

「久しぶりやな、俺や、ヤマモトや!」
「今から帰るんか?めっちゃええタイミングやん。よし、飲みに行こうぜ」
「よーし、行こ行こ!俺、いい店知ってるから!刺身食える?」

まさに今死のうとしていたのに、急に刺身、食える?なんて言われたら、みなさんならどうしますか?

私なら、く、食えます……。って答えちゃうと思います笑

隆はヤマモトを名乗る男の勢いに流されるように、彼に腕を惹かれて歩き出します。

次第に二人は仲良くなり、休みの日も遊びに出かけるようになります。

ヤマモトと出会う前は休みの間も、

今はただ、来週の日曜はトラブルが起こらないでほしいと願うのみだ。
いくら予定がないとはいえ、一日くらいなにも考えずにダラダラしていたいんだよ。
贅沢は言わない。ただそれだけだから、どうかそれくらいの願いは叶えてください。

頼むよ、神様。

なんて辛すぎることを言っていた隆ですが、

「休みの日こそ、気合をいれてお洒落をしろ」
「例え、デートの相手が男であっても」

というヤマモトの言葉に乗せられ、早起きして身なりを整え外に出ると、憂鬱な気持ちを抱えるだけだった休日も、明るい気持ちで過ごせるようになります。

ヤマモトは隆の生活を少しずつ、確実に明るい方へ変えてゆきます。

友達や家族と話してみる

 

職場の先輩の怒鳴り声や、取引先とのやり取りでもうどうしようもならなくなって、息詰まる隆ですが、ヤマモトと出会う前と出会ったあとでは変わった点が一つあります。

それは、誰かに悩みを打ち明けられる、ということです。

悩む隆にヤマモトはこう言います。

「あのさ、隆。お前の人生は誰のためにあると思う?」
俺はかなり考えて答えた。
「……社会のため?」
「ぜんっぜん違う」
「じゃあ、自分のため」
「それも半分あるな」
「半分?」
「そう。お前の人生は、半分はお前のためと、あと半分は、誰のためにある?」
考える俺に、ヤマモトはゆっくり言った。

「あとの半分は、お前を大切に思ってくれてる人のためにある」

この言葉に、私自身もはっとさせられました。

半分は自分のため、半分は自分を思ってくれている家族や、友達のため。

力強くて優しい言葉だなあと思います。隆もこの言葉にはっとして、家族と話してみたり、自分なりの解決策を見つけていきます。

ちょっと今から仕事やめてくる

 

隆が悩み、苦しみ、考え抜いて、そして表題の台詞をやっと口にする時の気持ちよさったら…!

隆が自分の人生を歩むきっかけをくれたヤマモトの正体、皆さんにもぜひお手にとってほしいので、ここではあえて書きません。

私はこの本が本当に好きなんですけれど、特に気に入っているところが「働くということを悪いことみたいに書いていない」ところです。

働く人は誰しも本当に偉いです。この記事を読んでくださっている方が、社会人でも、アルバイトを頑張る学生さんでも、本当に本当に立派だと思います!

そういうことを大前提にして、そのうえで大切なこととは何か、を問いかけてくれているところ。そんな優しさが、この本の最大の魅力なんじゃないかな、と思います。

みなさんもぜひ、お手にとってみてはいかがでしょうか。

*2017年に映画化もされています。

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ABOUTこの記事をかいた人

本好きの21歳です。 神奈川県に住んでいますが、東京で働いています。 よく読むジャンル:純文学 好きな作品:みずうみ(よしもとばなな)、落下する夕方(江國香織)、銀河鉄道の夜(宮沢賢治)、赤毛のアン(モンゴメリ) 色んな作品に触れ、感じたことを発信できればと思っています。