こんにちは、みき(@_miki972)です!
最近職場の近くのパン屋さんで紅茶のメロンパンを買ってから出勤するのにはまっています。
パン屋さんって、おいしいパンが食べられるのはもちろん、お店の扉を開けた時にふんわり香るにおいとか、あとはもうその温かみのある外観とか、存在だけでほっとしますよね。
そんなこんなで今回は木皿泉さんの「昨夜のカレー、明日のパン」についてご紹介させていただこうと思います。

あらすじ
19歳で結婚し、21歳で夫を亡くした主人公、テツコ。
夫の父親でもある気象予報士のギフとの、のんびりとした生活。
大切な家族を亡くした二人が、周囲の人たちと関わり合いながら、それでも毎日暮らしていく物語。
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ
この本は終わりから始まりまで、普通の人たちが普通に生活をしていて、当たり前なんですけどその中に悲しいことがあったりとか、誰かに伝えるまででもないけどものすごくうちのめされてたりとか、そういう誰にでも経験があるようなことをとてもあたたかく描かれています。
テツコとギフが、テツコの夫である一樹のお見舞いに行った帰り道、パン屋さんに寄るシーンが、読んでいてじんわり胸が温かくなります。
職場と病院と家とを何回も往復したあの暗い道。
寒かったし、悲しかったし、二人とも疲れ切って口もきけなかった。その時、行く先にぽつんと明かりが見えた。近づくと、パン屋だった。
パンの焼ける匂いは、これ以上ないくらい幸せの匂いだった。
店員が包むパンの皮がぱりんぱりんと音をたてたのを聞いて、テツコとギフは思わず微笑んだ。
たった二斤のパンは、生きた猫を抱いた時のように温かく、二人はかわりばんこにパンを抱いて帰った。
悲しいのに幸せな気持ちにもなれるのだ、と言い切るテツコの清らかさがとても好きです。
二人を取り巻く人々
この本は基本的に、主人公テツコとギフと、その周囲の人々に降りかかるちょっとした出来事を短編集のような形で描かれています。
人間関係ってきっと誰しも悩んだことがあると思うのですが、私はこの本を読んでギフの
自分には、この人間関係しかないとか、この場所しかないとか、この仕事しかないとかそう思いこでしまったら、たとえひどい目にあわされても、そこから逃げるという発想を持てない。
呪いにかけられたようなものだな。
逃げられないようにする呪文があるのなら、それを解き放つ呪文も、この世にま同じ数だけあると思うんだけどねえ。
という台詞にかなり救われました。
毎日あんまりにも同じように、ほぼ決められたことをしていると、段々そこだけ切り取って考えてしまうと思うんですけど、実はちょっと道をそらせば全然違う場所に行きつくんですよね。
テツコとギフはお話のなかで、本当に穏やかに暮らしているんですけれど、そんな中で核心を突いたようなことをいうので、ドキッとさせられます。
のんびりとした一冊
私がこの本をなにより気に入っているところは、はじめから終わりまでとても穏やかだというところです。
テツコもギフも、お互い大切な家族を失いつつも、たまに落ち込みながら、それでもえいっと前をむいてただ日々を過ごしています。
そこになにかドラマのような劇的な出来事があるわけではなく、どころかくすっと笑ってしまうような日常の幸せが詰め込まれていて、読んでいるとふんわり心が温かくなります。
優しい気持ちになれる「昨夜のカレー、明日のパン」
皆様もぜひ読んでみてはいかがでしょうか。