こんにちは、みき(@_miki972)です!
家族って一括りにまとめても、いろんな形がありますよね。
お父さんがいてお母さんがいて、お兄さんやお姉さん、弟や妹がいて、おじいちゃんやおばあちゃんもいて、なんて賑やかな家庭もあれば、自分と猫だけでのんびり暮らしています、なんて人も中にはいるでしょう。
今回は、ちょっと変わったある家族の物語、江國香織さんの「流しのしたの骨」についてご紹介したいと思います。

あらすじ
夜の散歩が習慣の19歳の女の子、こと子は、おっとりしていて頑固な長女そよちゃん、妙ちきりんで優しい次女しま子ちゃん、笑顔が健やかで一番大らかな弟律の四人姉弟と、その両親の六人家族。
ひとつの家庭に起きる様々ななんとでもないような、もしくはちょっと異常な事件を描く物語。
穏やかな主人公、こと子
「少し歩きましょう。少し歩いて、くたびれたら家に帰りましょう」
主人公こと子はのんびり屋で、学生というわけでもなく、まして働いたりアルバイトをしているわけでもなく、ただ夜の散歩を楽しむ気ままな19歳の女の子です。
だからといって何か抱えているとか、達観しているとかそういうわけでもなく、本当にただ心が穏やかで、余裕のある人特有の、周囲の人までほっとさせるようなことを言います。
上記の台詞は恋人とデートの際に言う台詞です。こと子の穏やかな台詞の一つ一つが、私はとても好きです。
「そろそろ肉体関係を持ちましょう」
「つまり、嫌じゃなければってことだけれど」
恋人に対する接し方もあくまでまっさらで誠実で、読んでいくうちにこと子のことをどんどん好きになっていくのがこの小説の魅力的なところの一つだと思います。
小さな事件の積み重ね
たぶん、どの家庭にもぞれなりに事件とかもめ事は起こると思います。
この小説に出てくる宮坂家ももちろんそうで、長女のそよちゃんが旦那さんと別れたり、しま子ちゃんが破天荒だったり、弟の律が原因で母親が学校に呼び出されたり……
本当にありそうな出来事の一つ一つが、宮坂家では本当に起きて、そのたびに騒いだり、バラバラになったりするのではなく、大盛りのご飯をみんなで作ったりしながらただ生活していく。
この本を読んでいると、家族の在り方ってこういうことなのかもしれないな、と妙にほっとします。
特別なことをせずに、ただ生活していく。主人公こと子の目線でのんびりと描かれた日常は、とても平凡ですが、平凡な日常っていいなあ、と思わせる不思議な魅力があるように感じます。
日常の中の非日常
雨の日は眠くなる。こころが、すーん、とする。
上記の台詞は私の好きなこと子の台詞です。
はじめて読んだときは、すーん、ってなんだよ、と少し笑ってしまいましたが、雨が降るたびこのセリフを思い出して、なんだかわかる気がするなあ、と思います。
流しのしたの骨は、こと子の目にうつる世界の美しさとか、逆につまらなさとか、そういうことがとてもきれいに描かれています。
疲れた心をほっと和ませるような、不思議な魅力のある物語。
みなさんもぜひ、読んでみてはいかがでしょうか。