謎の言葉が招く結末とは。吉田秋生著「BANANA FISH」

初めに

 

私は死んだ。 死因は「BANANAFISH」だ。

 

 

ずっとずっと見るかどうかを迷っていたアニメ版に、ついに手を伸ばしてしまった…。

既知の物語でありながら、音と色彩が伴う事で、より鮮烈な心の痛みがある。

 

私は相変わらず大学に行き、3度の飯を楽しみ、布団に入れば秒で眠る。

しかし、心の中にはいつもBANANA FISH。

気づけばアッシュと英二の幸せについて考え、彼らに祈りを捧げている。

 

…正直言ってめちゃくちゃつらい。

 

書評を通して、この気持ちを共有させていただいてもよろしいでしょうか…。

 

今回は、私の心を未だとらえて離さない作品「BANANA FISH」について書評を書かせて頂きます。まつのです。よろしくお願い致します。

(読了当時、衝撃に任せて描いた私の絵日記。)

ストーリー

この物語の舞台は、自由の国アメリカ、1985年のニューヨーク。

ストリート・キッズを束ねる美しきギャングのボスアッシュが、廃人と化してしまった兄グリフのため、「バナナフィッシュ」の正体を探るところから始まる。

 

ここで語るべきはアッシュのカリスマ性だ。17歳にしてIQ200の知能に、正確無比な銃さばき。

おまけに金髪と、翡翠のようなグリーン・アイズ。

時にはフォーマルスーツを着こなし、ワインを一口、口に含んだだけで69年もののロマーニュ・コンティと当ててしまう。山猫のような凶暴性に備わったしなやかな魅力は、あらゆる人々の心を捉えて離さない。

そんなアッシュはひょんなことから、日本人の青年、英二とカメラマンの伊部に出会う。

 

この出会いが、全ての始まりだ。

 

ショーター、マックス、シン、そして最大の敵となる、ディノ・ゴルツィネ

死を招く、謎多きバナナフィッシュを巡り、アッシュと英二は多くの登場人物との「出会い」と「別れ」を繰り返すこととなる。そして物語は、合衆国をも揺るがす大騒動へと発展してゆくのだ。

英二とアッシュの関係性

英二は銃の持ち方も知らず、戦闘や危うい駆け引きとはまったく無関係で生きてきた。

対するアッシュはギャングのボス。汚れた世界を深く知り、必要とあらば何十人もの人を撃つ。

本来ならば決して交わるはずのない2人だが、置かれた立場も、性別も、国も超えて、2人は誰も入る余地のないほどの深い関係を持つ。友達、恋人、家族。決して名づけられるものではない。彼らの間には「愛」だけがどっしりと横たわっている。

「世界中がきみの敵にまわっても ぼくはきみの味方だってことさ」

「きみのそばにいる きみがもし迷惑じゃなければ-だけどね」

英二がアッシュを抱きしめ、温かい言葉を掛けることで、アッシュはその孤独や、ほの暗い過去を束の間忘れることが出来る。

 

大人達の欲望に人生を翻弄され続けるアッシュを癒すのは、肉体的な交わりではない。

優しすぎるほどに優しい英二の存在、ただそれだけだ。

 

彼らの魂はいつだって共にある。あまりにも汚れすぎたこの世界で、誰よりも美しくお互いを想い合う二人。

その清らかさに、私達読者は、彼らの永遠の幸せを願わずにはいられないのだ。

結末について

結末に関しては、これから読む人のためにも、決して説明しない。

だが、彼らが迎えるエンディングを知った瞬間、誰もが「BANANA FISH」を胸に生きることになるだろう。

(文庫版BANANA FISH第2巻の巻末エッセイは、結末のネタバレがあるのでご注意!)

 

本作は、吉田秋生氏により『別冊少女コミック』1985年5月号〜1994年4月号にて連載された作品であり、25年以上も前に完結している。それでも尚、未だに多くの人の心をとらえて離さないのは、この物語に生のきらめきと死の匂いが共存しているからだ。

儚く、残酷でありながらも美しい。BANANA FISHには生きることのすべてが詰まっている。

読了して激しいロスに襲われている人には特別編である「BANANA FISH ANOTHER STORY」をおすすめしたい。

ANOTHER STORYが描くのは、ショーターをはじめとした、アッシュと登場人物達との出会いや、伊部と英二の出会い、そしてアッシュと英二の「それから」だ。

わずかながらの救済だが、その光は美しい。貴方は、よりいっそうBANANA FISHを好きになるだろう。

 

どれだけ語りつくしても、この物語の良さを語りきれず悔しいが、今日はこの辺りで。

しばらく、私は「BANANA FISH…」とうわごとのように呟きながら生活する日々だ。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

まつの

どこにでもいるふつうのだいがくせい。日常とコーヒーをガソリンに文字を吐き出す日々。美術館・博物館を巡り、ひとりでふらふらいろいろなところに出かけるのが趣味です。 小説、マンガ、エッセイ、絵本、図鑑等、何でも大好き。夜行性で雨の日を好みます。