こんにちは、花です。
私は普段、雑貨&本屋さんで働いているのですが、この時期は絵本やぬいぐるみをプレゼントに買っていくサンタさんが多く来店し、接客している私もワクワクしています。
さて、今月は冬に関連する本だけを紹介していますが、今日は12月25日ということでクリスマスに読みたい一冊です。
小学生のとき、公民館の文庫で見つけ、とても気に入り10回以上借りていた本です。
1989年に出版された本で今は絶版になっているためAmazonでは古本として販売されています。
絶版本を紹介するの? と突っ込まれそうですが、とても好きな本なので紹介させてください。
絵は伊東寛さん。可愛くてどこか少し面白いペンギンのイラストは思わず口角がゆるんでしまいます。
文は「ルドルフとイッパイアッテナ」の作家として有名な斉藤洋さんです。独特の言い回しがクセになります。
あらすじ
港町の海岸通りに、ペンギンハウスという小さなレストランがあります。
毎年12月になるとペンギンハウスのカウンター席にはペンギンの置物が置かれます。
ただでさえ小さい店にペンギンの置物が置かれてしまうので12月はお客さんが5人しか入れません。
しかし、お店の主人がそのペンギンの置物をとても大事にしていることを誰もが知っていたので文句を言う人はいません。さて、主人がペンギンの置物をおくようになったのはもうずいぶん昔のことです。
ある冬の晩、不思議なおじいさんがお店に訪れペンギンの置物を置いていったことがきっかけでした……。
「そういうことはゆるされていないし、そういうきまりもない。」
ネタバレになってしまいましたが、このペンギンの置物は動きます。
普段は動かないで置物のフリをしていますが生きていて夜にお皿を洗ったり主人の手伝いをするのです。
物語の中でお店の主人がペンギンにした質問「なにをたべているの?」という問いへの答えが印象的だった言葉があったので紹介します。
「――――きみはなにもたべないね。どうしてたべないの?」
「そういうことは、ゆるされていない、っていうわけじゃないけど、ふつうのたべものはたべないんだ。」
その答えに対して店主が質問を重ねます。
「それじゃあ、なにをたべるのさ。」
「やさしい心。」
「えっ、やさしい心?」
「そうだ。ぼくは、きみがやさしくしてくれると、それだけで、おなかがいぱいになっちゃうのさ。」
「でも、まさか、やさしい心をたべちゃうと、やさしさが、どんどんへっていくなんてことはないだろうね。」
「そういうことは、ゆるされてないし、そういうきまりもない。それどころか、やさしい心は、だれかにたべられればたべられるほど、どんどんふえていくんだ。しらなかったのか。」そういわれれば、そんなものかもしれないと、思えてきます。
やさしさは分け合えば増える。とストレートに言われると、ひねくれ者の私は(説教くさいな…)とかんじてしまうのですが、この物語は自然と腑に落ちます。
「そういわれれば、そんなものかもしれないと、思えてきます」という文章が強要されているわけではないユルさを出していて心地よいのかもしれません。
クリスマスにぴったりの物語
12月は1年の終わりということもあり忙しく、私もバタバタとした毎日をおくっています。
そんな中にいると忘れそうになるけど、他人に優しくして、優しさの連鎖をつくることの大切さを、自分も周りも朗らかに過ごすためのコツを、この絵本に改めて教えてもらいました。
今日はシュトーレンと紅茶を飲みながら、いつもよりゆったり書評を書きました。
栗や洋酒がしみ込んだフルーツがとても美味しいです。
それでは、みなさまも良いクリスマスを。