短編でも、エッセイでもない。 村上春樹 糸井重里 著『夢であいましょう』

分からないことを分からないままでいるのは、いけないことでしょうか−−。

はじめに

8月からわたしの本棚のメンバーとなった花です。普段は人に本棚を見られると恥ずかしい気持ちになります。

今回紹介する本は教訓や夢がかかれていませんし、読んで勇気をもらえたわけでもありません。
爆笑するほど面白いわけでもないけどおもしろい。そんなフシギで大好きな本です。

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短編集でもないし、エッセイ集でもないし、かと言って雑多な原稿の寄せ集めでもない。まあ要するにフシギな本です。

村上春樹と糸井重里の共著『夢で会いましょう』の前書きにはそう書いてありました。

そして結果としては、かなり面白いと思うのですが、どうでしょうか?

小説家とコピーライター

カタカナ文字の外来語(「アルバイト」「コーヒー」「モラル」etc、、、)をテーマにショートショートの競作。

村上春樹は言わずと知れた世界的な小説家、糸井重里も「君に、クラクラ。」(カネボウ化粧品)「おとなもこどもも、おねーさんも」(任天堂ゲーム『MOTHER2 ギーグの逆襲』)「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」(スタジオジブリ映画『魔女の宅急便』)など代表作数知れずの名コピーライター。

そんな二人が一緒に物語を書いた、というだけでもうワクワクしてしまいます。

どうしてカタカナ語をテーマに書いているのかは分からないのですが、もしかしたら著者も分かっていないかもしれません。自分で「フシギな本」と言ってしまうくらいですし。でも、その開き直り具合も何だか心地良い。

文章の最後にはm(村上)かi(糸井)と記載されていて、どちらが書いた文なのかわかります。読んでいるうちに名前をみなくても「この言いまわしは村上さんだな」とか「オチのつけかたが糸井さんだ」なんてわかるようになるはず。

パラパラとめくって好きなページから読むのもおすすめです。どこからどう読んでも面白いので。

一行で終わる話

物語はたった一行の短い話もあれば、三ページにわたる話もあります。
私が気になったのは村上春樹が書いた「ジャンルグル・ブック」という話。

「愛なんかで腹がいっぱいになるものかい」とクモザルは言った。

この一行で終わりです。短い。これじゃあ何のことだかさっぱり分かりません。

クモザルってなにもの? どういう関係? なにがあったの?

色々な疑問が生まれます。

でも、なにひとつ説明がないことにこそ、私はこの本の価値を見出しました。
分からないということ、それはつまり想像する余地があるということではないでしょうか。

「ジャングル・ブック」を例えであげましたが、この本に書いてあるほとんどの物語に説明はありません。
だから自分で想像するしかないのです。なぜクモザルがいきなり愛について語り出すのか、どこにも書いてないから自分で考える自由があります。

最後に

全てを説明しないと感動できない人が増えたこの時代には、この本が必要だと私は思いました。
分からないことを分からないまま受け入れたり、それでも分かろうと想像し続けることができたなら、世界はそれで十分に面白いのだと気づかせてくれる一冊です。

 

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