障害のある妹に密着した30日。坂川裕野 著『亜由未が教えてくれたこと』

こんにちは!ゆーかです。
2018年も残りわずかです。
振り返るとどんな1年だったでしょうか?

どんな1年でも終わり良ければすべて良し!
という事で、私は「今年中にわたほんで書評デビューする」という目標を叶えて2018年を終えたいと思います。

自分とは圧倒的に違う生き方をしている人と出会った時、私たちはどうやってその違いを受け入れていくのでしょうか。
この本は、身内への初めての介護というテーマを通して、他人を受け入れ信頼関係を結ぶ過程が丁寧に描かれています。

あらすじ

母は亜由未を「お神輿」のような存在にしたいと言った。「お荷物」ではなく。重たいけれど、交代しながら大勢の人が担いでいく。肩も痛いし、足も踏まれるけれど、みんな楽しくて担ぎ手を名乗り上げる。

亜由未ちゃんは、25歳の女の子。重度の障害があり、自宅で家族の介護を受けながら生活しています。

亜由未ちゃんの兄である筆者はNHKのディレクターです。
ある日、自分がこれまで全く関わってこなかった妹の介護を1ヶ月体験し、それを密着番組として放送することにします。

そのきっかけは2016年神奈川県相の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起こった事件。元施設職員だった男が侵入し、入居者など46人が次々と刃物で刺され、19人が亡くなりました。

逮捕された犯人は
「障害者は不幸を作ることしかできません」
「障害者を殺すことは不幸を最大まで抑える事ができます」
という手紙を書いていました。

この犯人のメッセージに自分なりの答えを見つけるべく「1ヶ月間の介助を通じて、自分自身の中で何が変わるのか?」という実験に挑んでいきます。

亜由未ちゃんの障害と日々の暮らし

亜由未ちゃんは兄と双子の妹の3兄弟。
お母さんのお腹にいる頃、双子それぞれに送られる血液のバランスが崩れる「双胎間輸血症候群」で命の危機にさられます。
出産後手術を経て一命は取り留めたものの、重たい障害が残りました。

日々行われるケアは、胸より下を自分の力で動かす事がほとんどできないため約15分に1回の体移交換(姿勢を変える事)や鼻から胃に通じたチューブを通じて栄養をとる「経管栄養」など。

体移交換を終えたらすぐ注入を。注入が始まったと思ったらもう体移交換の時間に。ようやく作業が終わったと思ったら次の介助をしなければならない。

作業を覚えるまでに10日間。滞りなく体が動くようになるのにさらに10日間、夜中も1時間ごとに続く様々なケアを、周りの助言を得ながら少しづつ体得していく兄の奮闘ぶりが描かれています。

この本では亜由未ちゃんのケアを担う、ヘルパーさんやリハビリの先生などたくさんの方が登場します。
どの人も亜由未ちゃんの気持ちを置き去りにせず「亜由ちゃんはどう思う?」と聞きながら丁寧に関わりチームとして、亜由未ちゃんの生活を支えていました。

「人っぱぐれ」しない人生を

この本の中では、兄の介護に向き合って行く姿勢だけでなく、長年介護をしてきたお母さんの考え方や行動もすごく重要な一面として紹介されています。

お母さんが亜由未ちゃんとの生活で大切にしている事が、大勢の人と出会う人生を送らせる事。そのために様々な試みを行っています。

その一つが「あゆちゃんち」。2014年から自宅をコミュニティースペースとして解放し、週に1.2回フラダンスや英語教室など様々なイベントを開催しながら、赤ちゃんからお年寄りまで様々な人たちが訪れる交流の場を提供しています。

普通自立っていうと、親がいなくても食いっぱぐれないこと。でも亜由美の場合、自立って何だろうって考えたときに、お金よりも介助者、仲間、つまり「人ぱっぐれない」って事だと思ったの。

普通の20代の女の子だったら何を求めているか、どうやったら亜由未ちゃんがこの瞬間笑顔でいられるのか。
そんな事を考えぬき、障がいを持っているからと家にこもるのではなく、とにかく外に出て人の中で育てよう。お母さんの一貫した信念によって、地域で愛される存在になり、今ではたくさんの地域の人がボランティアとして亜由未ちゃんに関わっています。

ほっとけない存在

1ヶ月間の妹の介護を通して兄が感じたもの。それは「ほっとけない人」の価値。

普段からつきっきりでいることはできなくても、困ったときには知恵を出して、介助の日々を手掛かりに、自分なりに支えになりたい。
亜由未は誰かの心に直接「助けてくれ」と訴えかける「ほっとけない」という気持ちを呼び起こす。

このほっとけない存在が人を繋ぎ、奇跡を起こすこともあるのだと兄は語っています。

密着期間中も、お散歩中の亜由未ちゃんに話しかける事を楽しみにしている近所の方や、絶対に自分からは動かなかった老人ホームのおじいちゃんが、自から手を伸ばして、亜由未ちゃんから物を受け取るシーンなどたくさんの人の心と体を動かす場面が描かれています。

重たい障害を持つ人は何も出来ないと思われがちだけど、存在するだけで他人を幸せにする力がある。人の絆を強くする。これは私も日々感じている事です。

最後に

紹介しきれないくらい、心に響く名言が詰まった本書。一つの家族の在り方が等身大で描かれていて、その優しさと暖かさに心の緊張がふと緩むような感覚がありました。
一方で日々の過酷な介護、何度も迎える命の危機、兄弟の葛藤…そんな私答えが出ない課題と向き合い悩み続ける家族の姿もそこにはありました。

目に見える体の障害でなくても、私たちは何かしら「できないこと」「苦手なこと」があります。
そこをほっとけないと手を貸してくれる人に感謝して、また自分も誰かに手を貸してあげる。

そんな事が当たり前の社会を作りたいと感じる1冊でした。

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