はじめに
「春が二階から落ちてきた。」
という冒頭から始まるストーリー。
この冒頭の文章に対する捉え方が、読み始めた最初と最後では、きっと大きく変わるはずです。
重力ピエロ (新潮文庫)
あらすじ
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。
その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。
連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。
そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。
謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。
溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。(文庫本裏より)
家系図
主人公の春と泉水の兄弟は、ハチミツ栽培をしている父親と3人家族。
母親とはすでに死別している。
大学院で遺伝子研究をしている兄の泉水、哲学的な考え方を好み、ガンジーやピカソを愛している弟。
母の命日に実家に帰った際、街中のグラフティアートを消してまわっている春が放火事件のニュースを見て、
頻発する放火の全てが、グラフティアートがあった場所で起こっていたことに気づく。
そしてそこに残されたメッセージに気がつき、泉水を巻き込んで解読を始めていくことに。
この兄弟で、グラフティアートにメッセージを残す放火犯の謎を解いていくストーリーから始まります。
レイプ犯の子供という事実に悩む春
兄弟で、放火犯を探していくミステリー小説と思われる始まりではあるが、
途中から、春の悩みが浮き彫りになってくる。
泉水と春の母はレイプ被害に遭い、その子供である春はレイプ犯の血を引いている可能性があった。
それでも父と母に愛され、泉水と共に生きてきた春。
泉水は出所したレイプ犯・葛城の居場所を突き止め、春と葛城の遺伝子を調べようとする。
また葛城の他人の不幸を心から望む言葉を聞いた泉水は怒りに駆られ、葛城殺害計画を立てるようになる。
全て知っていた春は泉水のアパートに向かうが、突き放されてしまう。
レイプ犯の子供という事実に悩む春と、大学院の設備を使って春とレイプ犯人の葛城の親子関係を実証してしまった泉水が、葛藤の末に犯人殺害・・・?と想像してしまうが、この後大きな展開がありどんでん返のストーリー。
グラフティアートにメッセージを残す放火犯を見つけることができるのか?
レイプ犯の復讐はできるのか?
最後に
最後の結末は賛否両論があるかと思います。
ミステリー小説ではあれど、なぜか暖かい気持ちにもなってしまいました。
最初から、最後の一言まで綺麗で完結な小説です。