自分が自分であることに肯定できない時、
周りで起こることに重たく受け止めしんどくなってしまっている時、
落ち込んでしまっている時、
「ホームステイだと思えばいいのです。」
「せいぜい数十年の人生です。」
と思うと、少しは気がラクに思えませんか?
この小説はそのセリフから始まる、魂の抜けて一度死んだ主人公の前に現れた天使によって、期限付きで他人の人生を生きることになった真(マコト)の物語です。
カラフル (文春文庫)目次
一度自殺した少年が他人の人生を生きるようになる
あらすじ:
主人公は自殺した少年。何もついていることがなく、背も低い、友達もいない、成績もぱっとしない少年。
その中で、少年の中で不運なできごとが重なり、やがて彼は死を選ぶ。
しかし、彼は病室で目覚めてしまう。
「抽選に当たりました!」とプラプラという天使が目の前に現れて、期限付きで他人の身体の中で生き返ることになった。前世の記憶の全くない彼にとって、他人の人生を生きることは、「所詮、他人ごと」であると大抵のことは気に留めず無気力に生きるようになる。
しかしその中で彼は気付くようになるー
「素晴らしい人生じゃないか、死ぬことなんてなかったじゃないか」
生きていれば綺麗なものにも汚いものにも出会う
自分の人生に絶望して一度自殺した少年が、
期間限定の身体として真として生きるようになったことで様々なことに気がつくようになっていきます。
つまらない人生を送っているように見えていた父が
“「おまえの目にはただのつまらんサラリーマンに映るかもしれない。毎日毎日、満員電車に揺られてるだけの退屈な中年に見えるかもしれない。しかし父さんの人生は父さんなりに、波瀾万丈だ。いいこともあれば悪いこともあった」”
自殺する前には知らなかった、他人の身体で期間限定で生きるようになって、人の中身や生き方に触れるようになった彼。そして、みんな各々の人生があり、重みがあること。濃いとか浅いとか、そういうことを表面で決めてしまいがちだった少年の意識が変わっていきます。
そして、援助交際に手を染めるクラスメイトの女の子の、「日々色が変わるから、長生きしたいけど、一日おきに死にたくなるの」
という発言に、
「ぜんぜんふつう」
「でも、死ぬのだけはやめたほうがいい」
いずれ少年は、
「みんなそうだよ。いろんな絵の具を持っているんだ。きれいな色も、汚い色も」
生きることに悩んでいるクラスメイトに少年は話すようになります。
“人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。”
自分自身のこと、自分の周りの環境、全てが嫌になって死を選んだ少年が、
他人の身体で生きるようになって、自分のこと、周りのことに繊細に関わるうちに変わっていきます。
まとめ
自分の人生に絶望して死んだ少年が、ひょんなことから他人の人生を生きるようになり、今まで自分の「枠」を生きていたのを脱したことで、髪型を金髪にしてみたり、大胆な行動をとったりと、自由に生きるようになる主人公。その過程で、自分自身の周りに起こることに真っ直ぐ受け止めれるようになっていく-そんな物語です。
誰しもに、色があり考えがあり、一見すると白黒で決めてしまいそうなことにも個性がある。
人の繊細な部分にとても触れている小説です。
ぜひ一度、拝読してみてください!