思い込みの怖さを知る短編集。湊かなえ 著『ポイズンドーター ホリーマザー』

発酵愛好家のはなこです。

ミステリー物は読みとめることができないので
かなり体力を使ってしまいますが、本の世界に浸りたいと久しぶりに湊かなえさんの本を読みました。

イヤミスという類になるようですが、ミステリー、フィクションでは片づけられないような
考えさせられる小説でした。

created by Rinker
¥1,400 (2021/06/17 22:18:24時点 Amazon調べ-詳細)

姉と妹、男と女、母と娘、女性を軸にした6編の短編集です。
どれも真似できないような生き方ですが、どこかに共感を覚えずにはいられません。

毒を巻いている本人は誰なのか

正幸くんがあのような事件を起こしてしまったのは・・・私のせいなのです (「罪深き女」より)

死傷者15名を出したとして現行犯逮捕された容疑者の、知人として語る主人公の幸奈。
6歳下の彼と幼いころ同じアパートに暮らし、お互い母子家庭ということで、
言葉がなくとも何となくの感覚で状況を察し、幸奈は手を差し伸べてきました。

幸奈目線で物語はほぼ語られていきます。
読者としても、こんな状況なら仕方ないなんて思わずにはいられないストーリーですが、最後にどんでん返し!!

仕事、恋愛、家庭どんな環境下でも
他人の起こした問題に関して、「あの時私がこうしていれば防げたことなのかもしれない」なんて考えてしまうのではないでしょうか。

でもこれって不毛な妄想だな読み終わったあと感じてしまいました。

毒親、毒娘の正体

「あれをしてはダメ、こうしなさい」
親が子を思うように過剰にコントロールしていく、支配下におくそのような親を「毒親」と呼ぶそうです。

タイトルにもなっている「ポイズンドーター」「ホーリーマザー」は女優の藤吉弓香という一人の女性を軸に2編に分かれています。

弓香は幼いころから母親の指示に従って生きてきました。そのたびに頭痛に悩まされ、仕事の幅さえも広げられない。

子供が誰とどうしたいかは無視して、親が統括するの世界。

当初、これはひどい、これが毒親か・・なんて思っていました。でも、ふと我に返って考えてみると、私の周りでも「親がこの学校に行けって行ったから」「親が結婚式はこうしてほしいって言ったから」こんな発言を耳にすることがあります。けれども、その子たちが自分の親を毒親と思っているかといえばそうではありません。

皆、親が子を心配する一つの手段として発言しているそう感じているから、仕方ないと受け止める。

果たして本当に弓香の母親は毒親だったのか。毒親を訴え続ける娘は毒娘なのか。

何が正解は分かりませんが、どの物語も誰からみた話なのかが重要です。
普段でもこんな辛辣な出来事が起きたと思っていても、別の人から見ればまったく違う出来事として完結している。思い込みによる怖さを知ることができる1冊です。

created by Rinker
¥1,400 (2021/06/17 22:18:24時点 Amazon調べ-詳細)

ABOUTこの記事をかいた人

アバター

福岡県在住、発酵愛好家の管理栄養士。 好きな文筆家は江國香織、柚木麻子、平野啓一郎、東野圭吾、松浦弥太郎、服部みれい ジャンル問わずなんでも読みます。 本屋と図書館巡りが好き。 自分の気持ちに合わせてそのときに読みたい本を読む。