渋沢栄一が説く、学び方とビジネスマインド。  渋沢栄一 著 『論語と算盤』

こんにちは、環(@echo3i_r)です。
今回は、新壱万円札のモデル 渋沢栄一さんの『論語と算盤』という本をご紹介します。
2021年の大河ドラマ「青天を衝け」で、その生涯が描かれることにもなりました。

私は渋沢栄一が、「日本の資本主義の父」と呼ばれる人だった、ということは知っていたのですが、興味を持ったのはさっちーさんの書評記事がきっかけでした。

新一万円札のモデルを読む 渋沢栄一 著『富と幸せを生む知恵』

渋沢栄一が手がけた会社の数は、500を超えると言われています。
ちょっと調べてみたのですが、みずほ銀行、キリンビール、東洋紡、IHI、いすゞ自動車、帝国ホテル、といった多様な業種にまたがり、設立に関与しています。
そんな、今の日本企業の土台を作ったとも言われている、渋沢栄一が経営哲学を語ったのが『論語と算盤(そろばん)』です。

「原文版」と「現代版」

この、『論語と算盤』は複数の出版社から、様々な関連書籍が出版されている。
私は角川ソフィア文庫の、原文版を読んでみることにした。

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原文版を選んだ理由は、「編集されている言葉ではなく本来はどう表現していたんだろう?」と気になったから。
分からない言葉を調べながら読んでいくのは、「学んでいる」感覚がして、面白かったし、発行当時の大正5年にタイムスリップして、渋沢栄一さんに学んでいる!という気持ちに浸れたので、私は原文版をお勧めしたい!
(読みやすいのは現代版だとは思うが、原文版でも読み進めることはそんなには難しくないと感じた。)

「論語」による人格形成

渋沢栄一は、本書のなかで「論語による人格形成と、資本主義の利益追求」の両立が大切である、と説いている。
人としての正しい行いをして、ビジネスをしていく、というのが渋沢栄一の哲学で、金儲けできればそれでいい!というのは間違いだ ということ。

論語に基づく人としての正しさと、利益の追求は、対照的だと思うが、それをいかに両立させるか、そのためにはどうするべきか? といったポイントや、学び方の姿勢について説かれている。

※「論語」とは
「論語」は中国の春秋時代(紀元前770年~403年頃)に活躍した思想家の孔子の言行などを、数百年後に弟子の系譜によってまとめられた言行録のこと。

時代が変わっても、人間の本質は変わらない

私が一番、印象的だった言葉はこちらだ。

これに対して、今の教育は知識を身につけることを重視した結果、すでに小学校の時代から多くの学科を学び、さらに中学や大学に進んでますますたくさんの知識を積むようになった。
ところが精神を磨くことをなおざりにして、心の学問に力を尽くさないから、精神の面で青年たちに問題が出るようになってしまった。

そもそも現代の青年は、学問を修める目的を間違っている。(中略)今の青年たちは、ただ学問のための学問をしている。
初めから「これだ」という目的がなく、何となく学問をした結果、実際に社会に出てから、「自分は何のために学問してきたのだろう」というような疑問に襲われる青年が少なくない。

上記を現代風に言い換えると、

  • 「学問のために学問をしている」→「受験のために勉強をする」
  • 「何となく学問した結果、実際に社会に出てから、自分は何のために学問してきたのだろう」
    「何となく受験して大学に入って就職して」

といった感じだろうか。

読みながら、私も学問のための学問をしていた学生かもしれない、と思いグサグサと胸に良い意味で突き刺さった。
私自身、学生時代は精一杯頑張っていたつもりだったけれど、振り返れば反省も多い。
学問のための学問を、していたこともあるな、という自覚がある。

当たり前のことだがその時、その瞬間だけの学びではなく、これからの自分に繋いでいくことを考えながら、学ばなくては本当の意味での実りはないのだろう。

ビジネスにおける、道徳の在り方

刺さった言葉を列挙すれば、きりがないように感じたので、言葉の紹介はこちらだけに留める。

本書で説かれている「論語による人格形成と、資本主義の利益追求」の両立は、現代にも響く価値観だ。
「24時間働けますか」のビジネス観は当然古く、今を生きる私たちは限られた時間で生産性を上げて、成果を出すことが求められている。
ワークライフバランス、コンプライアンス、CSR(企業の社会的責任)の考えも、根底には論語に基づいた“正しさ”があるかもしれない。

人間や社会の正しさ、という道徳的価値観は利潤にとって、対極的なもので「それで飯が食べれるか?」という理由で後回しにされがちかもしれないが、今や時代がそれを許さない。
例えば、2020年のダボス会議のテーマは
持続可能で団結力ある世界を築くためのステークホルダー間連携(Stakeholders for a Cohesive and Sustainable World)」だった。

※ダボス会議とは
世界経済フォーラムが毎年1月に開催する年次総会のこと。
世界中の、財界、政界、国際機関、学術界のリーダー、市民セクターなど約3,000名が参加して、グローバルレベルの課題について議論・情報共有をしている。
2020年はグレタ・トゥーンベリさんが登壇したことでも、話題になった。

経済とはお金のめぐり、だと漠然と感じていたが、世界中の人の活動というか、もっと大きなスケールのものかもしれない、とこの本を読みながら考えたりもした。
もしそうであれば、ビジネスマインドにおける道徳のあり方はより重要なのかもしれない。

結びに代えて

少し長くなってしまいましたが、学び方やと社会や経済のあり方を見つめなおす、良いきっかけとなった1冊でした。
論語は学生時代の漢文レベルの理解度しかなく、きちんと学んだことがなかったので、これを機会にゆっくり勉強してみたいと思います。

これは余談ですが、「中学高校の授業で、古文・漢文は必要か?」という議論を目にしたことがあるけれど、読み方を学ぶのではなく、考え方を知る、という意味で必要だと思います。
(本論からはずれますが、実学ばかりを学校教育に詰め込むのは少し違う気がする。)

年明け以降、主に仕事が忙しく書評が書けていませんでした。ようやく1冊、書けて嬉しいです。
(というか、本も読めていなかった・・・・・・。)
今年もどうぞ、よろしくお願い致します!

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福岡県出身、読書が好きな社会人。 なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略)など。 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。