ビジネスに大切なことが、ここに詰まっている。 小野不由美 著 『図南の翼』

こんにちは、環(@echo3i_r)です。早いもので、この「わたしの本棚」で定期的に書評を書き始めて、1年以上経ちました。
先日、自分が書いた記事を読み返し、ふと思いました。
「あ~~私って小説ばかり読んでるなあ、ビジネス書なんて1冊も記事書いてないなあ」

そう、私はビジネス書をほとんど読まないので、記事も書いていないのです。

ビジネス書は「ピンとこない」

私がビジネス書を買わない、そして読まなくなったのは、ピンとこなかったから、これに尽きると思います。

もちろん、ビジネス書を否定したいわけではないです。
実用的なことがわかりやすく書いてあり、自分でも実践できそうだと思う一方で、心にガツンと響いてこない、揺さぶられない・・・・・・という感じです。

そういう本を読んでないからだ、という意見もあるだろうけど、私と似たような人も少なからずいるんじゃないかと思ったりする。
ということで、今日はビジネス書ではないけど、仕事に大切なことが詰まっている!とも思う小説を紹介したいと思います。

十二国記より 『図南の翼』

以前、小野不由美さんの十二国記シリーズを紹介したが、この『図南の翼』は、その中の一冊。

生きること、誰かを信じることを考える。 小野不由美 著 『月の影 影の海』

この本だけでも、楽しめる!とは思う。
だけど、そのほかの本を読んだ上で、これを読んだ方が百倍は楽しいと思う。
(だから、まずコレを読もう、ではなく私は『月の影 影の海』から読んでほしい。)

シリーズ中には様々な主人公が登場するが、この『図南の翼』の主人公は12歳の少女 珠晶(しゅしょう)。
国を統治する王が長い間不在で、国土は荒廃の一途をたどる中、「あたしがこの国の王になる!」と彼女は玉座を目指す。

なぜ子どもでも玉座を目指せるか、というと十二国記シリーズの世界では、王がいわゆる世襲制ではなく、王の側近である生き物”麒麟”が王たる器の人物を選び、王となるからだ。

彼女はなぜ子どもながら、王となることを目指すのか?
物語が進むにつれ、その理由が明かされるのだ。私はいつもそのシーンで泣いてしまう。

珠晶の言葉たち

この1冊に限らず、十二国記は心に残る言葉が多いのだが、『図南の翼』の言葉は私にとってはとても大切なものばかりだ。

大人にとっての“助け合い”

「助け合う、ってのはお前、最低限のことができる人間同士が集まって、それで初めて意味のあることじゃねぇのかい。(中略)できる人間ができない人間をただ助ける一方なのは、助け合うとは言わねえ。荷物を抱えるってんだ

朱晶は王に選ばれることを目指し、麒麟に会うための旅をするのだが、その道中は危険ばかり。
旅、と表現したけれどジャングルの危険地帯でサバイバルをしているような状況に近い。
彼女は「何かを持っている者や強い者は、持っていない者や弱者を助けるべき」と考えているが、周囲の大人たちに、それは違う、と言われてしまう。

冷たいひと言だと思うけれど、社会ってそのとおりだとも思うのだ。
一方的に誰かを助けることは、その人の善意無しには成り立たないことで、それは関係が浅い人に対して誰もがしてくれるわけじゃない。

チーム、そして仕事では歩みが遅い人がいると、全体の進捗が遅れてしまう。
遅かったり、仕事ができない人の分、代わりの人がそれをこなすことだって、社会にはよくあることだし、それはお互い様でもある。でもそれは“助け合い”ではない。
誰かの善意のもと、成り立っている優しい行為なのだ。
(もちろん、その人が抜けてしまうともっと。進捗は遅れてしまうわけで、それを防ぐためにも手をさしのべる必要ではあるが。)

自分にできないことを知っている、ということ

もうひとつだけ、心に残っているシーンを紹介したい。
朱晶が、「王の責務を正しく果たせるのか?」と問われた際に返す場面だ。

「そんなこと、あたしにできるはず、ないじゃない!」

自分ができないことを、「できない」と分かっていて、それを相手に答えることって少し勇気が必要だと思う。

「できる」とか「できないかもしれない、でも頑張る!」とかでもなく、朱晶は「できない」と答えた。
彼女の強さがにじみ出る、言葉だなと思います。

答えがほしいんじゃない

私がビジネス書を「これじゃない」と考えてしまう理由は、答えがほしいわけじゃないからなのかもしれない。
答えや方法は自分で見つけたくて、そこに至るまでの道筋や考え方のヒントが、多分ほしいんだろうなと、ふと思いました。

そう考えると、私は大人になる前に、いろいろなヒントを小説から受け取っていたのだろうな、と思います。
私はもう大人になりましたが、今でも朱晶には敵わなくて、「しっかりしなさいよ!」「甘ったれないでよ!」と励まされてばかり。

またいつか、私がビジネス書代わりに大切にしている小説を、ほかにもご紹介したいなと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

福岡県出身、読書が好きな社会人。 なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略)など。 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください