生きること、誰かを信じることを考える。 小野不由美 著 『月の影 影の海』

こんにちは、環(@echo3i_r)です。
さて10月12日に大人気ファンタジー小説、二国記シリーズの最新刊が発売されます。
18年ぶりの新刊ということで私もとても楽しみにしています!
(実家に既刊を置いてきてしまったため、読み直すために新装版を買い直しました。笑)

新潮社のホームページはこちら

NHKでアニメ化されていたこともあるので、「名前は知っているけど、よく知らない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
最新刊は1、2巻が10月12日、3、4巻が11月9日に発売予定のため、今から読み始めればノンストップで読むこともできちゃう絶好のタイミングということで、今日は十二国記シリーズをご紹介したいと思います。

そもそも十二国記って?

まずは、北上次郎さんの解説をご紹介させて下さい。

私たちが忘れていたことが、ここにある。
人が人として生きる上での本分とは何か。
信義とは何か。人を信じるとは何か。
そういう太いテーマがこのシリーズの底に流れている。
(月の影 影の海 解説より)

シリーズの魅力を端的に表現しているコメントで、これ以上のことを私はとても書けないなと思いながらもこの記事を書いています。

  • 十二国記は、中国風の異世界を舞台にしたファンタジー小説です。
    異世界には十二の国が存在し、それぞれの国にいる王が統治しています。
  • 各作品ごとに登場する国や主人公、時代が異なっており、同一の世界設定のストーリーという感じで、刊行順が時系列順ではありません。

「どの順番で読むのがオススメか」といった議論が、ファンのあいだで行われることがよくあります。

現在、多くの書店には新潮文庫 完全版が並んでいるのではないかと思いますが、新装版では帯に「Episode ○(数字)」とあるので、その順番に読むのがよいと思っています。

  • 月の影 影の海  (Episode 1、上下巻)
  • 風の海 迷宮の岸   (Episode 2)
  • 東の海神 西の滄海 (Episode 3)
  • 風の万里 黎明の空  (Episode 4、上下巻)
  • 丕緒の鳥  (Episode 5、短編なのでスキップもあり)
  • 図南の翼  (Episode 6)
  • 華胥の夢  (Episode 7、短編なのでスキップもあり)
  • 黄昏の岸 暁の天  (Episode 8)
  • 白銀の墟 玄の月(10月12日、11月9日発売の最新刊)

『魔性の子』

読む順番で議論の的になることが多いのが、『魔性の子』という作品です。新装版の帯ではEpisode 0 扱いとなっています。

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この作品は少し異質で、日本が舞台のホラー小説。
十二国記と世界観が共有されていて、十二国記のある人物のある時期が描かれた作品です。

真っ先にこの『魔性の子』を読んでいるとほかの作品を読んでいくなかで、「あの時のあれはこういうことか!」と腑に落ちてそういう意味では面白いのですが、単体ではちょっと意味がわからない点も多く、個人的には真っ先に読むのはオススメはしません・・・・・・。
(私はたぶんこれを1冊目に読んでいたら、途中で心が折れていた気がするなと思う一方で、この『魔性の子』から読みたかったなという気持ちもある。)

一通り読んだ後に、『魔性の子』は読んでほしいかなと思います。
(『黄昏の岸 暁の天』のあとだと、分かりやすいのではないだろうか。)

『月の影 影の海』

上巻はとにかく辛い

以上のことから、「とりあえず十二国記読んでみるかー」と考えている方に手にとって頂きたいのは、『月の影 影の海』です。

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【あらすじ】

「お捜し申し上げました」──
女子高生の陽子の許にケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨う陽子は、出会うものに裏切られ異形の獣には襲われる。なぜ異邦へ来たのか、戦わねばならないのか。怒涛のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。

普通の女子高生 陽子がある日突然、異世界に放り込まれる――というのがざっくりとした紹介。
上下巻の構成ですが、上巻はただひたすらに辛いです。
というのも、陽子は自分の意思とは関係なく、初対面の金髪の男に半ば連れ去られるようにして異世界に来たのに、その男とはぐれてしまい、陽子はひとりぼっちになってしまうから。

この十二国記のように、現実から異世界召喚されるファンタジーは、違う世界でこれまでの自分をリセットして、特別な能力を得たり、その世界の人に必要とされたり、と楽しさが溢れるものが多いと思うのですが、この十二国記は違います。

  • 未知の世界に無理やり連れてこられ、その説明はされないのに、異世界から来たというだけで追われたり、妖魔に襲われたり、親切な人かと思えば裏切られたりと苦難の連続。
  • 彼女は異世界に来てから、襲ってくる妖魔を倒すための力は与えられますが、それに対して何の説明もされません。

右も左のわからない未知の世界に陽子がたった一人放り込まれ、過酷な環境のなか文字通り生き残るために戦うのが前半の物語です。

上巻はただひたすらに苦難が訪れる陽子ですが、下巻でのとある出会いが彼女の光をもたらします。
辛いことばかりで読むのを諦めそうになるかもしれませんが、とりあえず大きな鼠が登場するまでは、読んでほしいです。
(楽俊という名前の鼠が登場するのですが、この楽俊が登場すると私はとてもほっこりします。)

陽子

陽子は故国で人の顔色を窺って生きていた。誰からも嫌われずに済むよう、誰にも気に入られるよう。人と対立することが怖かった。叱られることが恐ろしかった。いまから思えば、何をそんなに怯えていたのだろうと、そう思う。

これは下巻で、陽子が自分が抱えていた弱さに気がつくシーンの一文です。
陽子は本当にどこにでもいる、普通の女子高生。
親に対してはよい子で、学校の教師に対しては優等生。
クラスメイトに「宿題を見せて」と言われればノートを貸すし、みんなでいじめている人に対しても積極的にはいじめないけど、自分も加わっていて止めることはしない。
いじめをしなかったことを非難されるのはイヤで、でも「いじめている」とその子にも思われたくない。

「中島さんって、やさしーい」
ふがいない、と暗に責めている声だ。陽子は無意識のうちに身をひそめた。
別の生徒がそれに同意する。
「中島さん、ピシャッと言えばいいのに」
「そうそう、あんたなんかに、声をかけられるの、迷惑だって」
「世の中にはハッキリ言わないとわからないバカっているからさ」
陽子は返答に困る。周囲の期待を裏切る勇気は持てないけれど、同時にまた、
隣の席でうつむいているクラスメイトにあえてひどい言葉を投げつける勇気も持てなかった。

私自身にも陽子のような一面はあるから、彼女の気持ちは痛いほど分かります。
人の目を気にしない、というのは口にするのは簡単だけど、実際に行動してみるのは難しい。

誰に対しても良い顔をして、自分を持てない弱さを持っていた陽子は、異世界に放り込まれ、追われ襲われ、また信じた人に裏切られ、孤独に絶望するなかで、徐々にたくましく成長していきます。
過酷な運命のなかでも生きることを諦めはせず、次第に垣間見える彼女のぎらつくような強さからは目が離せません。

余談 十二国記展

現在、新宿の紀伊國屋書店では十二国記の特別展が行われており、私も先日行ってきました!

私が訪れたのは夜だったのですが、立ち寄る人は多く、ファンの熱気に包まれており、
「こんなにたくさんの人が、十二国記が好きなんだ」と胸が熱くなりました。

 

 

 

 

 

 

 

既刊を読み返しながら、10月12日の発売を待ちたいと思います!

ABOUTこの記事をかいた人

福岡県出身、読書が好きな社会人。 なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略)など。 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。
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