ひとりでいたい、でも誰かと繋がっていたい僕たち。 佐藤多佳子 著 『明るい夜に出かけて』

こんにちは、環(@echo3i_r)です!

先日、佐藤多佳子さんの小説『明るい夜に出かけて』を読みました。
ラジオ好きな方や、過去に夢中になっていた時期がある方、にはぜひ読んでほしい!

寂しさでいっぱいになってしまった夜には、これからこの本を読もうと思います。

深夜ラジオの魅力

アルコ&ピースのオールナイトニッポン

オールナイトニッポン、というラジオ番組、名前は聞いたことがある、という方は多いと思います。

この『明るい夜に出かけて』では、芸人のアルコ&ピース(以下 アルピー)さんが
2015年3月まで担当していた番組、オールナイトニッポンをかなり深く扱っています。
実在するラジオ番組をがっつりテーマにした小説は、他にないと思いますので、なかなかユニークな小説のはず。

この小説の主人公・富山は、大学生活を一時休学中。
とりあえず1年限定の一人暮らしをしていて、深夜のコンビニでアルバイト生活を送っています。
富山が休学したのは、ある出来事から“逃亡”するためでしたが、その彼が毎週楽しみにしているのが
『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』(以下アルピーANN)』!

遠くて近い、深夜ラジオの距離感

主人公の富山は、もともと様々な深夜ラジオ番組のヘビーリスナー。
番組のコーナーにネタを送り多数採用されていた、リスナーの間では有名な“ハガキ職人”でした。
(もちろん、今はメールでのネタ送りがほとんどですが、過去の名残から同じように呼ばれています。)

しかしとある“事件”をきっかけに、富山はSNSで自身のプライベートを晒されてしまったことで、彼は現実から“逃亡”し、大学も休学することを選びました。
実家を離れ、友人関係もほとんど絶った彼でしたが、大好きなラジオ番組だけとは繋がっていました。

深夜ラジオを聞いたことがある人になら、共感頂けるのではないかと思うのですが、わたしはあの何とも形容しがたい“繋がり”が大好きです。
窓の外は真っ暗闇なのに、空間を飛び越えて聞こえてくる、パーソナリティーの声。
同じ話題を共有し、一喜一憂するリスナー達との連帯感。
Twitterが登場してからは番組のハッシュタグとも連動し、その一体感は増したと思いますが、そのずっと前から深夜番組に漂うあの雰囲気はきっと、変わらなかったと思います。

眠れない夜に聞いていたこともあったけれど、「なんだ、こんなに起きてる人、いるんだな」って思ったり。
些細なことで落ち込んだことも、パーソナリティーに笑い飛ばしてもらったり、同じような悩みを抱えた人がいたり。

スタジオからは遠くにいるけれど、パーソナリティーの存在を誰よりも近く感じたり。
不確かで見えないけれど、リスナー同士の絆があったり。
何とも形容しがたい深夜ラジオの魅力を、佐藤多佳子さんが言語化して下さっています。

僕たちの時代の、新しい絆

ニコ生、SNS、ツイキャス、etc

しかし、簡単だよな。ちょっと知り合っただけで、気やすくどんどんつながっていく関係。
リアルからSNSを経由してリアルへ再突入。カンタンにズブズブだ。油断も隙もない。

わたしは1990年代生まれ、十代の頃からインターネットの繋がりながら、生きてきた世代です。
学校や近くに住む友人とは別に、顔は知らないけど繋がっている人がいる。
そんな不確かな繋がりがわたしは好きでした。
本当に存在してるのかな?というドキドキや、顔も名前も知らないけれど、自分の感性と似た人と出会った時の驚きや感動は、少し日常生活での出会いと違うような気がします。

この『明るい夜に出かけて』でも、SNS、ニコ生といった比較的新しい繋がりは、存在感があるものとして描かれています。佐藤多佳子さんのご年齢は、もう60歳を超えているのに、それを若者の目線で等身大に、読み手に突き刺さるものとして描かれていることに、素直に驚きました。

わたしは、富山の友人がネットで知り合った女の子と、はじめて現実で会い、デートする場面が、とても印象的です。
富山の友人は、富山をはじめとした友人に、グループラインでその女の子のことを事細かに報告しますが、富山はそれに嫌気がさします。

ネットで知り合った初対面の相手をお互いに誰かに晒しあっている。

“晒しあい”繋がる関係って、いったい何なのだろう? 自分とSNSの付き合い方を、考えずにはいられない一言でした。

ひとりでいたい、でも誰かと繋がっていたい

この小説を読みながら「私たちはひとりでいたくて、でも誰かと繋がってもいたい」という矛盾した思いを抱えながら生きている、と感じました(もちろん、「そうじゃない!」という異論もあるとは思いますが)。

SNSで自分のプライベートを晒され、人と人の繋がりに嫌気がさしたはずの富山は、ラジオとの関係を切ることはできず、ひとりきりの真夜中で見知らぬ誰かと繋がっている。
実家を離れ、深夜のコンビニバイトを始めた彼は、どんな人と出会い、繋がっていくのか。

生きていると楽しいことばかりではないし、辛くて寂しくて、消えてしまいたい時もあるけれど、そんな時はこれから、この本を思い出そうと思います。

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