現代における結婚観、人生観を問う。 辻村深月 著 『傲慢と善良』

こんにちは、環(@echo3i_r)です!
今回は辻村深月さんの『傲慢と善良』をご紹介します。
近い将来、この本が“婚活本”扱いされるようになるかも?

進学、就職、恋愛、結婚……。
大人になった今、人生は選択の連続だなとしみじみ感じます。

選択をせまられ、そして道を決断する時、私たちはいったい何を信じ、そして選んでいるのか。
読後にふと、自分の人生を振り返るような深みのある1冊です。

 

あらすじ

婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な恋愛小説。

Google booksより>

物語は、西澤 架(にしざわ かける)の婚約者で一緒に暮らしている、真実が失踪するところから始まります。

架の脳裏によぎったのは、真実に付きまとう、ストーカーの影。
ある日、真実からかかってきた泣きながら電話を、架は真っ先に思い出しました。

「あいつが家にいるみたい。どうしよう。帰れない」

数か月前の夜、一人暮らしの家にストーカーがいる、と泣きながら訴えてきた真実。

彼女のストーカーが、失踪に関係しているのではないか?
そう考えた架は、真実の過去をたどるために、彼女の出身地である群馬に向かいます……。

傲慢と善良

傲慢

この『傲慢と善良』は読んでいて、突き刺さるような言葉がすごく多かったです。

例えば、

「――婚活につきまとう、『ピンとこない』って、あれ、何なんでしょうね」

(中略)

「ピンとこない、の正体は、その人が自分につけている値段です。

値段、という言い方が悪ければ、点数と言い換えてもいいかもしれません。
その人が無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は“ピンとこない”と言います。
――私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない。

ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、皆さん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いんですよ。
ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです

「ピンとこない」「この人じゃない」

自分の人生だから、自分の価値観に沿うのは当たり前ですが、
それは見方を変えれば自分の価値観に重きを置く、傲慢さの現れでもあります。

このセリフは、真実が以前お世話になっていた結婚相談所でお見合いの仲介をしている人のもの。
リアリティに富んでいて、自分たちが恋愛をはじめとした人間関係に無意識のうちに抱く“傲慢さ”に、気づかされる力があります。

正直、この結婚相談所を架が訪問するシーンだけでも、一読の価値はあるな、と思うほどです。
人は何を思い結婚したいと願うのか、どのような人を望むのか……
現代における結婚の価値観をつづったバイブルにさえ、なりえるなと感じました。

善良

架が真美を好ましく思っていた理由は、彼女からいわゆる“良い子さ”を感じたからでした。

しかし、彼女の行方を探し求めるうちに、彼はその“良い子さ”への痛烈な批判を浴びます。
その一例が、このセリフ。読んでいて、冷や汗がにじみ出てくるような怖さを感じました。

「だって、あんなの、私たちに見透かされちゃうに決まってるのに。
駆け引きとか計算とか、そういうのに全然慣れてない。
これまでよっぽどいい子で生きてきたんだろうなぁ。
申し訳ないけど、私それちょっと、イライラするかも」

生活しているうちに無意識に損得を勘定して、嘘をつきながら自分に都合がよい道を作れる人と、作れない人。
あなたはどちらですか?

真美は後者でした。
打算がまったくできない、正直に誰にでもなんでも話してしまう。
自分よりうまく嘘をつけたりする人のほうが、得をしていて許せない。
わたしのほうが正直者で、良い子のはずなのにどうして?

この真美の“善良さ”が、物語の鍵です。
彼女がなぜ、善良さを持ちあわせた大人となり、それが彼女の人生にどう影響を与えたのか……。
それはぜひ、本書でお確かめください。

現代における、“結婚観”

作中には、イギリスの作家ジェーン・オースティンの代表作「高慢と偏見」が登場します。

1813年に発行された本で、当時の女性の結婚観や、誤解と偏見で生まれる男女の行き違いがテーマ。

結婚しなければ(できなければ)生涯独身として過ごす生き方は、現代よりも19世紀はずっと深刻で、
この200年ほどで結婚そして人生への価値観は大きく変わりました。

結婚しない選択も、当たり前に選べる今。
選択の幅が広がったからこそ、現代ならではの苦悩に今の人は襲われているのかもしれません。

平成、そして令和へと時代が変わりゆくこの“今”の結婚観、そして人生観を綴った、小説『傲慢と善良』

ぜひ、ご一読を!

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