ひとりで暮らす、あなたに読んでほしい! 小野寺史宣 著 『ひと』

こんにちは、環(@echo3i_r)です!

今回は小野寺史宣さんの小説『ひと』をご紹介します。
2019年の本屋大賞第2位の小説です!

きっかけは、ひとつのコロッケ

物語は、主人公の柏木聖輔が二十歳にして両親を立て続けに亡くし、天蓋孤独の身になるところから始まります。

あらすじ

店を開くも失敗、交通事故死した調理師だった父。
女手ひとつ、学食で働きながら東京の私大に進ませてくれた母。
――その母が急死した。柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。
全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、大学は中退。
仕事を探さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。
そんなある日、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の惣菜屋で、買おうとしていた最後のコロッケを見知らぬお婆さんに譲った。
それが運命を変えるとも知らずに……。

残されたのは自分と、百五十万円だけ

主人公の柏木は両親と死に別れ、大学を辞め、そして社会の荒波に放り出されます。
学校を卒業して、働き始めるのが、ごく一般的な社会への船出ですが、柏木にはその準備期間がありませんでした。
家族や頼りになる親類はおらず、天涯孤独となった柏木にあるのは、自分の身体と母が残してくれた百五十万だけ。

子どもの頃に考えていた百万円は、これさえあればなんだってできるように感じていたけれど、
大人になった今、天涯孤独の身にとっては全財産が百五十万円しかないのは、少し心もとない金額ではないかな、と思います。
一生、暮らせる額ではなくて、家を借りて食べて、税金を払い……と考えると全財産としては安心はできない額。
柏木もこれから自分が生きる将来を、もちろん不安に感じています。

そんな、何もかも無くしてしまった柏木は、ふと通りすがりのコロッケ屋さんで自分の運命を変える、きっかけをつかむのです。

人 は ひとりじゃない

この小説は、“人”をめぐる物語です。
自分の居場所だった家族を亡くし、大学も去った柏木でしたが、一人きりの秋に総菜屋さんのコロッケをきっかけに、自分の人生をゆっくりと切り拓いていきます。

彼を変えてくれたのは、家族ではないけれど柏木を温かく見守ってくれる人たちでした。

一人で頑張ることも大事。
でも頼っていいと言ってる人に頼るのも大事。

わたしは昨春から転勤のため、地元である九州を離れ、東京で一人暮らしをしています。
親戚や友人はいるけれど、いわゆる仲が良かったり、助け合ったりするご近所さんはいません。
お隣に住んでいる人が、どんな人なのか、どんな顔なのかもよく分からないくらい。

もしかして、自分って一人?

4月になり、新しい環境で暮らし始めた人は、ふとそう感じるかもしれません。
でも自分が一人かどうか、を決めるのは自分なんだと思います。

例えば、どうしようもなく誰かに頼りたくなった時には、まわりの人に頼ったっていい。
頼っていい理由や、頼る前に気づかいなんていらない。
きっと優しく、その手を握ってくれる人がいると思います。

学校や職場が同じ人だったり、あるいはご近所さんだったり……。

以前と比べて、人と人の物理的な距離が希薄になりつつある今だからこそ、こんな物語が必要とされるのかなと思いました。

新生活を始めた人も、そうでない人も、ひと と ひと が繋がっていく物語。
ぜひ読んでほしいと思います!

ひと【電子書籍】[ 小野寺史宜 ]
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ABOUTこの記事をかいた人

福岡県出身、読書が好きな社会人。 なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略)など。 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。
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