恋のライバルが、人類とは限らない。三浦しをん 著『愛なき世界』

こんにちは、環(@echo3i_r)です!

わたしは、三浦しをんさんが書く、お仕事小説が大好きです。
三浦しをんさんと言えばこれまで、本屋大賞を受賞した『舟を編む』では辞典の編集者を、『神去なあなあ日常』という小説では林業に挑戦する若者の姿を描き、あまり知られていないお仕事を取り上げた小説を書いていますが、今日ご紹介する『愛なき世界』は、大学で植物学の研究にのめり込む若者が主人公。

「葉っぱはどうして、こんな形をしているんだろう?」

子どもの頃に不思議に思っていた植物の謎を究明するべく、日々植物に向かいあう若者の奮闘が描かれています。
身近だけれどあまり知られていない植物の世界を、覗いてみませんか?

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恋のライバルは、“植物”でした

 

恋のライバルが、人類だとは限らない――!? 洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちと地道な研究に情熱を燃やす日々……人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか!? 道端の草も人間も、必死に生きている。世界の隅っこが輝きだす傑作長篇。

中央公論新社公式サイト『愛なき世界』より)

 

洋食屋の見習いの青年、藤丸くんは、出前の届け先にいた研究者のタマゴ、本村さんに恋をしてしまいます。
だけど、本村さんは三度の飯よりも植物のシロイヌナズナが大好き!

「植物には、脳も神経もありません。つまり、思考も感情もない。
人間が言うところの、『愛』という概念がないのです。
それでも旺盛に繁殖し、多様な形態を持ち、環境に適応して、地球のあちこちで生きている。
不思議だと思いませんか?」

しかし、本村さんは人生の情熱を植物に向け、研究にのめり込む日々を送っていました。

物語には、見た目が殺し屋のような大学教授、サボテンを巨大化させる才能をもつ男子学生など、愛すべき変人も登場します。
人生のすべてを植物に捧げる本村さんを相手に、藤丸くんは恋の光合成を起こせるのでしょうか?

世界のちいさな不思議を、追いかける

料理人の藤丸くんは、植物のことは詳しくはありません。
藤丸くんは植物の世界の道先案内人として、不思議な世界を彼の目を通して私たち読み手に伝えてくれます。

本村さんたちが研究してるのは、つまり生き物がどうして生まれ、どうやって生き、なぜ死ぬのかってことについてなのかもしれない。俺も含めて多くのひとが、一度は抱いたことのある疑問。でも、俺も含めて多くのひとが、「そんなこと考えたってしょうがないや」と投げだしてしまった疑問。本村さんたちは投げだすことなく、しつこくしつこく考えつづけてるんだ。

本村さんが研究をしている、植物学の世界はいわゆる基礎研究の分野。
例えば品種改良といった実益につながりやすい分野の研究ではなく、世界の片すみの小さな世界が舞台です。

多くの人が不思議に思った命そのものについての謎を、本村さんたちはただひたすら追い求めていきます。

「愛のない世界を生きる植物の研究に、すべてを捧げると決めています。
だれともつきあうことはできないし、しないのです」

何かに一生懸命になるだけでなく、人生そのものを捧げるんだ!と言い切る本村の言葉が、わたしはとても印象的です。

素敵な植物の世界にどきどきする、少し不思議な恋愛&お仕事小説。
気になった方はぜひ、読んでみてください。

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ABOUTこの記事をかいた人

福岡県出身、社会人3年目 よく読むジャンル:なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略) 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。