他人の失敗から生まれる快感とは。中野信子 著『シャーデンフロイデ』

こんにちは、です。
今回はテレビ番組のコメンテーターとしても活躍されている、脳科学者の中野信子さんの本、
『シャーデンフロイデ  他人を引きずり下ろす快感』をご紹介します。
他者への過剰なバッシングに違和感を感じたことがある人は目からウロコ、読んでみて面白いと思います。

↑ こちらは中野信子さんのお写真。見たことある!という方も多いのではないでしょうか。

他人の不幸で飯がうまい。

「他人の不幸で飯がうまい」を略した、「メシウマ」というネットスラングの言葉があります。

著名人のSNSが炎上したり、失言がバッシングされることは、近頃では珍しいことでもありません。
その人の言葉や行動と自分自身は無関係であるのに、目ざとく人の失敗を見つけ、叩くという行為。
わたし自身も、無関係な誰かの言動や行動に対して、叩くようなことを無意識でやっているかもしれない。

例えば、某大学のアメリカンフットボール部で起きた危険タックル問題。
アメリカンフットボールに関わりがない一般の人も巻き込み、ある種異様な雰囲気がただよっていたように感じていました。

こういった誰かに対する過剰なまでのバッシングには、“シャーデンフロイデ”が大きく関係しています。

「シャーデンフロイデ」は、誰かが失敗した時に、思わず湧き起ってしまう喜びの感情のことです。

このシャーデンフロイデはドイツ語でSchadenfreudeと綴り、
Freudeは喜び、Schadenは損害、毒、という意味をもつ言葉。

叩く側は自分は正しいことをしていると思っていて、「これは世の中のために必要なことだ」とさえ考えている人が多いそうです。
自分が正義の側に立ち、世間のために行動しているのだ、という快感をバッシングを通して得るだけでなく、自分自身が“正しい”側に立ちたいために、「この人は叩いてもいい」というターゲットを無意識のうちに探している――
このように本書ではバッシングという行為とそのメカニズムを分かりやすく解説しています。

愛情の裏返し

このバッシングに大きく影響しているのが、「オキシトシン」という物質。
愛情ホルモン、幸せホルモンなどと俗に呼ばれているもので、基本的には人間に良い影響を与える物質と考えられています。

誰かとの間に情緒的な特別な絆ができるとき、脳ではオキシトシンがその回路を形作るのに一役買っています。
裏を返せば、人と人とのつながりが切れてしまいそうになるとき、オキシトシンがそれを阻止しようとする行動を促進するのです。

この「オキシトシン」という幸福に関わりを持つ物質が、妬みを強くしたり、不公平を許せない、正しくない者に対して制裁を加えたいという感情を強化したり、さらには排外的な行動を誘発することが、近年明らかになっているそうです。

自分だけは正しく、「ズルをしている」誰かを許せない。
だから、そんな奴に対しては俺/私がどんな暴力を振るっても許される。

 

時には美しい「愛」という情動の裏側にある闇を覗きこむことで、私たちの見ている世界がどれだけ正義や愛によって曇らされているかを、感じてみる必要があるのではないかと思っています。

 

わたし自身、自己肯定感はあまり高いほうではなく、「いいなあ」と誰かを羨ましがったり、それが過剰な方向に走り、妬んでしまうということもある人間なのですが、メカニズムを丁寧に解説されると嫉妬も妬みの感情もあるものだよな、とすんなり納得することができました。そういったネガティブな感情も含めて自分自身で、うまく折り合いをつけながら認めながら生きていかなくてはいけないのだな、と思います。

これからは、何かに対して過剰なバッシングがされていても、あまり気疲れすることなく、過ごせそうです。
「不倫は許さない!」といった絶対的正義の名の下に、繰り広げられるマウンティングのようなバッシングに、違和感を覚えたことがある方には、おすすめしたい1冊です。

ABOUTこの記事をかいた人

福岡県出身、読書が好きな社会人。 なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略)など。 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。