【特集/人生に影響を与えた3冊】 “本との出会い”は“人との出会い” 環

初めてのかたははじめまして、そうでない方はこんにちは。です。

日に日に秋めいてまいりましたが、秋といえばわたしはもちろん、「読書の秋」
今回は、“人生に影響を与えた3冊”という特集記事で書かせて頂きます。

わたし自身、小さな頃から本が好きで、絵本に始まり今に至るまで本づくしの生活でした。
20年と少しの我が人生、長くないながら
人生のどの地点を振り返っても、何かの“本”の存在がある、と思っています。

いざ書く、と決めたもののいったいどの3冊の本がわたしの人生に影響を与えているんだろう、と一度考え始めるとなかなか考えがまとまらず、楽しく悩みながらも、人生の節々で何度も読んでいるような本を3つご紹介することにしました。

今回の記事にあたり、特に子どもの頃に出会った本のことを思い返したので、せっかくなので別記事ですがまとめてみました

 

精霊の守り人 / 上橋菜穂子

子どもから大人までを魅了する、日本が誇るファンタジー

児童書好きの方や、ファンタジー好きの方にとってはご紹介するまでもないかもしれませんが、1冊目は上橋菜穂子さんの「精霊の守り人」です。
「精霊の守り人」をはじまりとして、全10冊の守り人シリーズとしても有名な物語です。

このわたしの本棚の【人生に影響を与えた3冊】の特集記事で、のいさんが「闇の守り人」を紹介されているのですが、守り人シリーズの2作目が「闇の守り人」にあたります。
のいさんの、「闇の守り人」の記事がまた素晴らしいのでぜひ読んでください…。

この、「精霊の守り人」は偕成社から出版されている児童書ですが、児童書とて侮ることなかれ。
1996年に「精霊の守り人」が刊行されて以降、シリーズとして全10冊、短編集2冊、ガイドブックやさらには料理本も出版され、コミカライズ、アニメ化、NHKにて3年にわたり実写ドラマ化までされた、まさに子どもから大人まで魅了している物語です。
文庫版は新潮社さんから刊行されています。

→ 偕成社の守り人公式サイトはこちら

作者である上橋菜穂子さんは、『鹿の王』で本屋大賞を受賞され、2014年に児童文学のノーベル賞と称される国際アンデルセン賞の作家賞を受賞されている、日本人児童文学作家の第一人者と言っても過言ではない方です。
文化人類学者でもあるため、そのバックボーンを感じさせる生身の物語を多く綴られています。

わたしがこの本を初めて手にとった時のは、まだ子どもの頃。
当時大変お世話になっていた図書館の司書の方が勧めてくださったことが、きっかけでした。

「この本は児童書でファンタジーの物語だけれど、あなたが子どもだからお勧めするのではなく、
あなたが大人でもわたしはお勧めしたい」

まだまだ子どもであったわたしに対して、目線を対等に合わせてくださるようなかたちで、お勧めして頂いたという意味でも大切な物語となっています。

この「精霊の守り人」は精霊の世と人の世が混在する世界が舞台となっており、小説の種類を“カテゴライズ”するならば、“ファンタジー”小説、という位置付けになるのですが、幻想的な夢物語というわけではありません。

作中に存在する文化や宗教、国々がまるでほんとうに存在しているかのような、あたたかな温もりをこの物語を通して、わたしは感じています。
例えば、守り人シリーズの中には、生涯を船の上で過ごす漂流の民が登場するのですが、現実の世界にも海上で暮らす民族は存在しているように。
わたしたちが生きる世界が多彩であるということを、わたしはこの守り人シリーズで子どもながらに実感しました。
「精霊の守り人」の舞台は、新ヨゴ国という架空の国家ですが、どこか日本を思わせる描写がされていて、ただ読むだけでも楽しいです。

人生の傍らに置きたい1冊

精霊の守り人の主人公は、用心棒であるバルサという女性です。はっきり言ってしまいますが、超武闘派でめちゃくちゃ恰好いいです。
年齢は30代、若いとは言いにくい年頃の彼女は、とある出来事をきっかけとして、一国の皇子チャグムを守ることになります。
親子ほど年の離れたふたりの物語は、精霊の守り人でもちろん一度終わりますが、その後もシリーズとして七年の月日が描かれています。

用心棒バルサの魅力は、戦闘だけではありません。彼女のふとした言の葉にこめられた、優しさや愛情もまたとても素敵です。
思えば12歳の頃にわたしはこの物語に出会ったので、当時はバルサに対して「強い!」「格好いい!」という印象ばかりが先行していたんです。
しかし、20も半ばになり、今ではバルサのほうが年齢が近いようになると、彼女が抱えていたがんじがらめの感情が痛いほど伝わってきます。彼女が生きてきた人生の悲哀をにじませながらも、それを淡々と、平易で少しぬくもりのある言葉で、バルサは語るのです。

争いのさなかにある人をたすけるには、別の人を傷つけなければならない。
ひとりを助けるあいだに、ふたり、三人の恨みをかってね。
もう、足し算も引き算もできなくなっちまった。
――いまは、ただ、生きてるだけさ。

このセリフは、バルサが自身の人生を振り返りながら、チャグムに告げたものです。
言葉尻だけをとらえると、どこかハードボイルドな匂いもするような気がしますが、彼女の人生の悲哀を滲ませる言葉であり、わたしが大好きなシーンです。

この「精霊の守り人」をはじめとした守り人シリーズでは、バルサだけでなく、彼女の養父であるジグロ、彼女をあたたかく見守る呪術師のタンダやトロガイ、といった魅力的な大人たちが多く登場し、彼らの人生の片鱗を感じさせる、言葉は読者の心を強く揺さぶるのです。

バルサ、という少し大人の女性が主人公であるため、
人生の折々で読み返すたびに感じ方が少しずつ変わっていくような物語だと思っています。
わたしはきっと、おばあちゃんになってもこの物語を大切に読み返すんだろうな、そう思います。

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ストーリー・セラー / 有川浩

「ああ、これが、“愛”なんだな」

「俺が死ぬまでの君の時間、全部俺にちょうだい」

少しむず痒い話かもしれませんが、皆さんの初恋はいつでしたか?
小学生? 中学生? それとも、もっと前でしょうか?
わたしはいつもこの何てことない質問への答えを曖昧に濁してしまいます。
異性を好きになる、ということにわたしは十代の終わりまでまったく共感できなかったからです。

わたし、このまま恋愛に関して分からないままで、誰も好きになれず一生を終えちゃうのかなあ、とぼんやり考えていた高校3年生の頃に出会ったのが、有川浩さんの「ストーリー・セラー」でした。

この本は、作家の伴侶が語る作家への愛、そして作家がその伴侶へ語る愛、という二編から構成されている恋愛小説です。
読み終えた時に湧きおこってくるさまざまな感情を必死で整理し、理解しました。
「こ れ が 愛 か !」

……と、ここまではわたしがこの物語の読後に抱いた、ごちゃまぜの感情を総括したに過ぎません。
この物語は、小説家である妻とそのいちばんの読者である夫に訪れた、過酷な運命を綴った甘く、そして哀しい恋愛小説です。
物語の紡ぎ手である作家の叫びのようなものを感じさせる、という意味でも印象深く残っています。

誰かを思うことの愛おしさ

「ストーリ・セラー」では愛についてのあれこれを解説しているわけではないのですが、
この本を総括しようとするならば、「誰かを思うことの愛おしさ」これに尽きる。そう思います。

本書は「Side :A」「Side:B」という対となる2編の物語が綴られています。

人が人を人生の伴侶と選ぶときに思うことや、その人との別れを感じた際に心に去来する数多もの感情を、
ひとつひとつ噛みしめるよう語られ、友情や家族への愛情とは異なる
“恋い慕う” “愛する”という感情が、存在するということ。
そのことについて、ようやくわたしの心が追いついた、受け入れた、そんなきっかけの本でした。

人が血の繋がっていない誰かを思う、という関係はなんて愛おしいことなのか。
これほどまでに自分自身のことを理解してくれる人がいることは、なんて幸せなことなんだろうか。

そう読むたびにしみじみと思いを巡らせています。

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朝が来る / 辻村深月

家族とは、親子とは何か

3冊目は辻村深月さんの「朝が来る」という小説。
2016年にはフジテレビでテレビドラマ化、つい先日、文庫化もされています。

自分たちの子どもを産むことを切望しながらも、叶えることができなかった夫婦。
そして他方、中学生で妊娠し、泣く泣く我が子を手離すことになった少女。
ひとりの子どもの特別養子縁組をきっかけに、交錯することになった双方の人生が丹念に書き上げられた小説です。

逃げることも、育てることも、この子の誕生日を祝うこともない代わりに、覚えていよう。
この子と今日、一緒に、すごくきれいな空を見たことを。
一緒に見られた、二人で一人の、誰にも邪魔されずにいられた、この時間のことを。

→ 文藝春秋の公式サイトはこちら

血の繋がりだけが、果たして家族なのか。
親子とは、家族とは、何なのか。
そう、考えたくなる1冊です。

女性であることを、ここまで意識した1冊はない

わたしは20代の女性です。

日頃、小説を読む際に性差について強く意識をしません。
主人公が女性であれ男性であれ、同じように物語に没入しますし、「女性だから」と特別に共感することもありません。
しかしながら、この「朝が来る」は、違いました。
子を自身の体内に授かり、十月十日共に過ごすのは、女性の身体にしかできないことです。
作中の不妊治療や思わぬ妊娠といった情景は、自分自身が女性であることについて自問自答せずにはいられませんでした。

わたしは結婚について、家族について、親子について、確固たる自身の考えを持っていません。
自分が今後、家庭を持つのかどうかのビジョンも明瞭になく、我が子がほしい、と強く望んだこともない人間です。

ですが、この本を読んだ時に、ガツンと頭を殴られるような衝撃を覚えました。
強く願っていないとはいえ、わたしは誰かと家庭を築くかもしれない、母になるかもしれない。
なんとなく当たり前だと考えていたけれど、わたしもこの本のように、子を巡り葛藤を抱えることもあるかもしれない。

この本は、多くの方に読んでいただきたいと強く思っています。
もし、この記事を読んでいるあなたが、
「〇〇歳で結婚して、子どもは〇人くらいほしいなあ」としっかり家庭についてビジョンを持っているのならば、なおさらお勧めをしたい。ぜひ、読んでほしい。

あなたがあなたの親にとってのかけがえのない子どもであるように、あなたはかけがえのない親となる日がくるかもしれない。
その日のために、この物語はきっと、あなたの支えになると思います。

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結びにかえて

私事ですが、5月に人生で初めて、自力での“引っ越し”を経験しました。その際に、わたしが使っていた本棚を空にしながら、引っ越し作業をした時に感じたことがあります。

わたしの人生は、これらの本あっての人生だったんだ。
こんなにたくさんの大切な本たちに出会い、支えられながら、わたしは生きてきたんだな。

大袈裟かもしれませんが、ふと心に浮かんできて、涙が込み上げてきたのを覚えています。
人生の折々で、まるで人と会うのと同じように様々な本に出会い、多くを感じ、これまで生きてきたわたしにとって、“本との出会い”は“人との出会い”でもありました。
まるで友人から励まされたり、新たな世界を教わったりしているかのように、本を通して多くの刺激を受けてきました。

本の力は、時に人と人とを繋ぎ、また新しい力を生み出してくれます。
本を読んでいるときに感じる幸福は何物にも代えることができませんが、例えばわたしが素敵だった、と感じた本について、誰かが興味を持ち、読んでくれて何かをまた受け取り、そして次の人へ――といった時に感じる幸せもまた、なんとも表現しがたないものであるわけで。
本で繋がった知人友人は、少なくありません。とても幸せなことです。

長くなりましたが、これからもひとりの本好きとして、多くの本と出会いたいなと思います。
皆さまも、「読書の秋」、楽しみましょうね!
ここまで読んで頂いた皆さまに、両手いっぱいの感謝をこめて。

 

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

福岡県出身、社会人3年目 よく読むジャンル:なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略) 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。