旅情感あふれる素敵なひと時を、あなたに 恩田 陸 著 『MAZE』

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はじめに

初めてのかたははじめまして、そうでない方はこんにちは。です。
本日は、恩田陸さんの『MAZE』という小説をご紹介します。

『MAZE』から始まる『クレオパトラの夢』『ブラック・ベルベッド』という≪神原恵弥シリーズ≫、
恩田陸さんの作品は気になっているけれど何から読めばいいか分からない、といった方にもおすすめしたい1冊です。

新しい時代の主人公? 神原恵弥

『MAZE』は英語で、迷宮や迷路を意味する言葉。
本書の舞台はアジアの西の果て、荒野にいつから建っているかわからない、白い建物――現地の人は“有り得ぬ場所”と呼ぶ場所。
その場所では、人が立ち入ると戻れない人間が数多くいるという、謎があります。

語り部である時枝 満(ときえだ みつる)は友人、神原恵弥(かんばら めぐみ)の誘いを受け、この地に降り立ちます。
恵弥は満を呼んだ理由をこう、説明します。

あんたは、この人里離れた山奥の聖地で、安楽椅子探偵をやるために呼ばれたの。これでよろしいかしら?

神原恵弥という中性的な名前、言葉は“女性言葉”ですがれっきとした、眉目秀麗な男性です。
男性とも女性とも付き合える、バイセクシャルな人間として描かれています。
彼の職業は一年の大半を旅先で過ごす、製薬会社に雇われた“ウイルスハンター”。

頭脳明晰 × 眉目秀麗 × オネエ というインパクト満点な神原恵弥を軸に、安楽椅子探偵よろしく(?)満は人間消失のルールについて思考を巡らせる、というミステリーとホラーがマッチングしたような物語です。
緊迫感のある場面に炸裂する恵弥の女言葉が、どこか不思議な魅力を醸し出しています。(本人はいたって真剣なのですが…)

ウイルスハンター・神原恵弥が異国の地で遭遇する“謎”は幻想と恐怖に満ちていて、読んでいる自分自身もその場にいるかのような臨場感とともに、謎を追いかけていきます。
当のわたしは、連休の間に家に閉じこもり、この本を読んでいたわけですが、彼らとともに異国の地で謎解きをしているような、旅情感満点の小説です。

恩田陸さんが綴る“幻想”

恩田陸さんを語る上で、“幻想”といイメージは欠かせません。
本書『MAZE』だけでなく、幻想を思い浮かべる作品は多く、あります。

現実に存在するかどうか、わからない。
物語で起きたことかどうか、わからない。
その後どうなったのか、わからない。

これは個人の感想ですが、恩田陸さんの小説は謎と幻想をイメージし、その糸口を語り。
ただ、その最後の部分は読み手に任せるような、自由さを持たせてくれているように思っています。

この『MAZE』もそう。
人が消える謎に始まり、“恩田陸”という謎にも私たちは絡め取られていく。
その感覚が、わたしは好きでたまらないのです。

おわりに

『MAZE』『クレオパトラの夢』『ブラック・ベルベッド』はシリーズではありますが、1作1作が独立しています。
わたし自身、勘違いをしてしまったため、『クレオパトラの夢』から手に取ったのですが、何の違和感もなく読み進め、「面白かった~~!」と思いました。
わたしたち読み手は、やはりシリーズ作品となるとより楽しむために読む順番をことさら意識しますが、よい作品というのはそういったものを意識させないもの。
ひとつひとつの作品で独立した面白さがあり、なおかつ続いていくことで得られる楽しさ。これがシリーズ作品の醍醐味なのかもしれません。

『クレオパトラの夢』という同名のジャズの曲もあるので、この旅情感たっぷりの作品とぜひ一緒に併せて楽しんでほしいと思います!
読んでいる場所を忘れ、自分自身も異国の地に降り立っているような感覚がより増します…!

また、補足が過ぎるかもしれませんが…
この神原恵弥シリーズを読まれたあとには、ぜひ『朝日のようにさわやかに』という恩田陸さんの短編集も併せて読んでいただきたい…!
ん??アレ??という既視感もとある短編でお楽しみいただけるのではないかと思います!

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ABOUTこの記事をかいた人

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福岡県出身、読書が好きな社会人。 なんでも読む雑食系ですが、ミステリーやファンタジーをよく読みます。特に上橋菜穂子/恩田陸/辻村深月(敬称略)など。 読書は生活の一部。 ご紹介する本が、皆さまにとって良き出会いとなりますように。